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上智大学 法学部 地球環境法学科 公募制推薦入試 2020年 過去問解説

【解説】

■ 議論の整理

課題文の内容の要約:

 近年、歩きスマホによるトラブルが増加し、自治体には安全な生活環境確保のため、罰則付きでの規制を求める市民の声が寄せられている。この問題に対し、罰則付き規制の課題点、罰則付き規制以外の対応策、そして罰則付き規制導入の是非について、自身の考えを800字以内で論じる課題。

着眼点:

 課題文全体の趣旨を正確に把握し、歩きスマホによるトラブル増加と、それに対する罰則付き規制導入の是非を巡る市民の声という現状を明確に提示できているか。

問題を解く上で前提となる事実のまとめ:

  • 歩きスマホによるトラブルが増加している。
  • 市民から罰則付き規制を求める声がある。
  • 課題は、罰則付き規制の課題点、罰則付き規制以外の対応策、罰則付き規制導入の是非。
着眼点:

 課題文中の具体的な事実(歩きスマホトラブル増加、市民からの規制要求)を正確に抽出し、問題の背景となる客観的事実として整理できているか。

共通の前提:

 公共の場における安全確保は重要であり、個人の自由とのバランスを考慮する必要がある。

着眼点:

 課題文の根底にある、公共の場における安全確保と個人の行動の自由という二つの価値観を捉え、議論の出発点として適切に設定できているか。

議論の論点:

 歩きスマホによる公共の安全確保と、個人の行動の自由との間のバランス。特に、罰則付き規制の有効性、課題、そして代替策の可能性。

着眼点:

 課題文が提起する核心的な対立点や矛盾(公共の安全確保と個人の自由の尊重)を明確に言語化し、小論文で深掘りすべきテーマとして提示できているか。特に、罰則付き規制の有効性、課題、代替策の可能性。

■ 問題発見

問題の発見:

 歩きスマホによるトラブルが増加し、公共の安全が脅かされる中で、自治体は罰則付き規制を導入すべきか否か。罰則付き規制を導入する際の課題点は何か。また、罰則付き規制以外に、個人の自由を尊重しつつ安全を確保するための効果的な対応策は何か。これらの多角的な視点から、歩きスマホ問題の最適な解決策は何か。

着眼点:

 課題文から導かれる具体的な問い(罰則付き規制の課題点、罰則付き規制以外の対応策、罰則付き規制導入の是非)を明確かつ簡潔に設定できているか。小論文全体の方向性を示す問いとなっているか。

■ 論証1: なぜなぜ分析

 課題文が「歩きスマホ問題につき」その課題点や対応策を問うているため、まず問題の根本原因を深掘りし、その構造を明らかにするのに最も適した論証方法であると判断した。多層的な原因を構造的に示すことで、問題の複雑性を浮き彫りにし、説得力を高めることができる。

着眼点:

 歩きスマホによるトラブルが増加する根本原因を多層的に掘り下げ、論理的な因果関係を「なぜなぜ」の形式で明確に示せているか。表面的な原因(スマートフォンの普及)だけでなく、その背景にある利用者の安全意識の低さやスマートフォンへの過度な依存まで分析できているか。

(論証A) 歩きスマホによるトラブルが増加する原因:

 スマートフォンの普及と、利用者の安全意識の低さ、周囲への注意不足のため。

(論証B) 利用者の安全意識の低さ、周囲への注意不足の原因:

 スマートフォンへの過度な依存、情報へのアクセス欲求の高さ、歩きスマホの危険性に対する認識の甘さ、周囲の状況を把握する能力の低下。

(論証C) スマートフォンへの過度な依存、情報へのアクセス欲求の高さの原因:

 SNSやゲームなど、スマートフォンの多様な機能が日常生活に深く浸透し、常に情報に触れていたいという心理的欲求が強いため。

■ 論証2: 言い分方式

 課題文が「罰則付きの規制を導入すべきか否か、あなたの考えを述べなさい」と問うており、公共の安全確保と個人の行動の自由という対立する価値観を扱うため、異なる利害関係者の視点を整理し、その上で調和的な解決策を導き出すのに適していると判断した。これにより、多角的な視点から問題解決のアプローチを提示できる。

着眼点:

 異なる利害関係者(罰則付き規制推進派、罰則付き規制慎重派)の主張と根拠を明確に提示し、それぞれの立場を理解した上で、仲裁者としての解決策を提示できているか。対立構造を客観的に分析できているか。

利害関係者Aの主張(罰則付き規制推進派):

 たしかに、個人の行動の自由は尊重されるべきだが、歩きスマホによるトラブルは公共の安全を著しく脅かしている。なぜなら、事故の増加は社会全体のコストとなり、被害者の生命・身体・財産に直接的な危険を及ぼすため、罰則付きの規制によって強制的に行動を抑制する必要がある。

利害関係者Bの主張(罰則付き規制慎重派):

 しかし、罰則付きの規制は、個人の行動の自由を過度に制限し、実効性の確保が困難である。なぜなら、歩きスマホの定義が曖昧であり、取り締まりが困難であること、また、罰則を課すことによる市民の反発や、監視社会化への懸念が生じるため、安易な導入は避けるべきである。

仲裁者Cの主張(社会全体):

 よって、歩きスマホ問題の解決には、罰則付き規制の導入を最終手段としつつ、まずは啓発活動の強化と環境整備を通じて、利用者の安全意識向上と行動変容を促すべきである。なぜなら、個人の自由を尊重しつつ、自発的な行動変容を促すことが、持続可能で実効性のある解決策に繋がるため。

■ 解決策

(Cから導かれる解決策):

 歩きスマホ問題の解決には、罰則付き規制の導入を最終手段としつつ、まずは啓発活動の強化と環境整備を通じて、利用者の安全意識向上と行動変容を促すべきである。

着眼点:

 論証で明らかになった根本原因(利用者の安全意識の低さ、スマートフォンへの過度な依存)に対応する形で、具体的な解決の方向性(啓発活動強化、環境整備)を提示できているか。

(その根拠):

 個人の自由を尊重しつつ、自発的な行動変容を促すことが、持続可能で実効性のある解決策に繋がる。罰則のみに頼るのではなく、利用者が危険性を認識し、自ら注意を払うようになることが重要である。

着眼点:

 提案する解決策が、個人の自由を尊重しつつ、利用者の安全意識向上と行動変容を促すことで、持続可能で実効性のある解決策に繋がることを論理的に説明できているか。

(その具体例):

 提案する解決策を裏付ける具体的な施策(情報発信、体験型教育、注意喚起表示、安全な歩行空間確保、アプリ、公共Wi-Fiなど)を複数挙げ、実現可能性と具体性を示せているか。

啓発活動の強化:
多角的な情報発信:

 テレビCM、SNS、公共交通機関でのアナウンス、学校教育などを通じて、歩きスマホの危険性や事故事例を具体的に周知する。

体験型教育:

 VRなどを活用し、歩きスマホによる事故を疑似体験できる機会を提供し、危険性を実感させる。

環境整備:
注意喚起表示:

 駅構内、交差点、繁華街など、歩きスマホによる事故が起こりやすい場所に、注意喚起の表示や路面標示を設置する。

安全な歩行空間の確保:

 歩道と車道の分離、歩行者専用道路の整備、障害物の撤去など、歩行者が安全に通行できる環境を整備する。

技術的対策:
アプリによる注意喚起:

 歩行中にスマートフォンを操作しようとすると、自動的に警告表示が出るアプリの開発・普及を促す。

公共Wi-Fiの整備:

 立ち止まってスマートフォンを操作できる場所を増やすため、公共Wi-Fiの整備を進める。

■ 解決策の吟味

(他の解決策との比較):

 罰則付き規制は、一時的に歩きスマホを減少させる効果はあるかもしれないが、定義の曖昧さや取り締まりの困難さ、市民の反発、監視社会化への懸念など、多くの課題を抱える。また、個人の自由を過度に制限する可能性もある。本提案は、個人の自由を尊重しつつ、利用者の安全意識向上と行動変容を促すことで、より持続可能かつ実効性のある解決策である。

着眼点:

 提案する解決策の優位性を、他の単純な解決策(罰則付き規制のみ)と比較することで明確に示し、多角的な視点から妥当性を検証できているか。

(利害関係者検討):

得をする者:

 市民全体(安全な生活環境の確保)、自治体(トラブル減少、行政コスト削減)、スマートフォン利用者(事故防止)。

損をする者:

 特になし(ただし、スマートフォン利用者は一時的に利便性が低下する可能性はある)。

仲裁者:

 自治体は、啓発活動の推進、環境整備、技術的対策の支援を通じて、公共の安全確保と個人の自由のバランスを図る役割を担う。

着眼点:

 提案する解決策が、どのような主体にどのような影響を与えるかを分析し、その公平性や実現可能性を検討できているか。自治体の役割にも言及できているか。

(最終的な解決策の確認):

 歩きスマホ問題の解決には、罰則付き規制の導入を安易に考えるのではなく、まずは啓発活動の強化と環境整備を通じて、利用者の安全意識向上と行動変容を促すことが重要である。これにより、個人の自由を尊重しつつ、公共の安全を確保し、持続可能で実効性のある解決策を目指すべきである。

着眼点:

 小論文全体の議論を踏まえ、最終的な解決策の意義と、それが目指す公共の安全確保と個人の自由の調和を力強くまとめられているか。

【解答】(739字)

 近年、歩きスマホによるトラブルが深刻化し、罰則付きでの規制を求める声が高まっている。スマートフォン普及に伴う利用者の安全意識低下と周囲への注意不足が主な原因であり、情報アクセス欲求やSNS依存などがその背景にある。本稿では、罰則付き規制の課題点、代替案としての啓発・環境整備、そして最終的な是非について論じる。
 罰則付き規制は、個人の自由を制限する可能性があり、取り締まりの難易度も高い。市民からの反発や監視社会化への懸念も払拭する必要がある。また、罰則のみでは根本的な行動変容を促すことは困難であり、一時的な効果しか期待できない。
 そこで、罰則付き規制は最終手段とし、まずは啓発活動の強化と環境整備による利用者の安全意識向上と自発的な行動変容を促すべきである。個人の自由を尊重しつつ、危険性を認識させ、自ら注意を払うようになることが重要だ。
 具体的には、テレビCMやSNSを活用した情報発信に加え、公共交通機関でのアナウンスや学校教育における啓発活動を強化する。VRを用いた事故疑似体験など、五感に訴えかける体験型教育も有効である。また、駅構内や交差点など、事故多発地点への注意喚起表示設置や路面標示の設置に加え、歩道と車道の分離といった環境整備も不可欠だ。技術的対策として、歩行中スマートフォンの操作を検知し警告するアプリの開発・普及促進も考えられる。
 このように、罰則付き規制は慎重な検討が必要であり、個人の自由を過度に制限する可能性がある。むしろ、啓発活動と環境整備を通じて、利用者が自律的に安全行動を選択するよう促すことが、持続可能で効果的な解決策となり得る。最終的には、利用者一人ひとりが安全意識を持ち、自ら行動を変えることが、より安全な社会を築くための鍵となる。

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