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【慶應SFC 小論文】慶應義塾大学 総合政策学部 2020年 小論文 過去問解説

問1【解説】

1. 問題の要求を正確に把握する

 まず、設問が何を求めているかを分解します。

主題:

なぜ「民主主義の後退」と呼ばれる事態が、いま世界的に起きているのか?

条件:

資料1〜5を関連づけながら論じる。400字以内で記述する。

ヒント:

資料1と2が「民主主義の後退」そのものを論じ、その他の資料がその原因と見られる「歪み」について論じている。

2. 各資料の要点を整理する

 次に、各資料が「民主主義の後退」というテーマに対してどのような論点を提供しているかを整理します。

資料1:

 民主主義は軍事クーデターのような外部からの破壊ではなく、選挙で選ばれた指導者によって内部から崩壊していると指摘。トランプ政権の誕生以降、この流れが現実味を帯びてきたと論じています。これは「民主主義の後退」がどのように起きているかを示しています。

資料2:

 西洋社会における経済的な格差の拡大が、社会の連帯感やシステムへの信頼を蝕んでいると主張。人々が「システムは不公平だ」と感じることが、怒りや政治不信につながっていると論じています。これは社会経済的な原因です。

資料3:

 移民問題など、多様性に関する国民の懸念を政府が無視し続けると、不満が蓄積し過激な思想が生まれると指摘。アイデンティティや文化をめぐる対立が、社会の不安定化を招く文化・思想的な原因を示唆しています。

資料4:

 テクノロジー、特にソーシャルメディアは、その設計思想が熟議を重んじる民主主義とは根本的に異なると主張。人々をグローバルにつなぐはずが、結果的に人々を小さな集団に分断させる「部族主義」を復活させてしまったと論じています。これはテクノロジーがもたらす構造的な問題です。

資料5:

 資料4で述べられた「部族主義」が生まれる具体的なメカニズムを説明。自分と同じ意見ばかりが流通する「エコーチェンバー」や、アルゴリズムが情報を最適化する「フィルターバブル」の中で、「驚き」や「嫌悪」といった感情を煽る偽情報が拡散しやすくなると指摘しています。

3. 資料間の論理的な繋がりを構築する

整理した要点を因果関係でつなぎ合わせ、一つのストーリーを組み立てます。

根本的な原因(歪み):

社会に経済格差の拡大(資料2)や、移民問題に代表される文化的な不安(資料3)が存在する。これらが国民の間に不満や不信感を蓄積させる。

増幅装置(アクセル):

この不満や不安の受け皿として、ソーシャルメディアが登場する(資料4, 5)。

具体的なメカニズム:

人々はソーシャルメディア上で「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」に陥り、自分たちと異なる意見から遮断される。そこでは感情を煽る偽情報が蔓延し、社会の分断や対立がさらに加速する(資料5)。この現象が、マクルーハンの言う「部族主義」の復活である(資料4)。

結果(現象):

深まった社会の分断は、既存の政治(エスタブリッシュメント)への強い不信感を生む。その結果、人々は過激な主張をする指導者を選挙で選び、その指導者が民主主義のルールを内部から破壊していく(資料1)。

文例

【結論】

 民主主義の後退は、経済格差や文化的な不安といった社会の「歪み」が、デジタル技術によって増幅され、社会の分断が深刻化したことによって引き起こされています。

【理由】

 経済格差の拡大は政治システムへの根強い不信感を生み出し(資料2)、移民問題などに起因するアイデンティティの不安は、国民の間に見えない壁を築いています(資料3)。これらの社会に元々存在した不満や対立が、民主主義を揺るがす土壌となっています。

【具体例】

 ソーシャルメディアは、人々を同じ意見が反響する閉鎖的な環境(エコーチェンバー)に閉じ込めます(資料5)。この環境では、「驚き」や「嫌悪」を煽る偽情報が拡散しやすく、人々は異なる意見に不寛容な「部族」のようになります(資料4)。深刻化した社会の分断は、既存の民主主義の規範を壊すような指導者が選挙で選ばれる状況を生み出し、民主主義が内側から蝕まれる事態を招いているのです(資料1)。

問1【答案】(399字)

 民主主義の後退は、経済格差や文化的な不安などの社会の「歪み」が、デジタル技術で増幅され、社会の分断が深刻化したことによって引き起こされている。
 具体的に、資料2は経済格差の拡大は政治システムへの根強い不信感を生み出したと述べ、資料3は移民問題などに起因するアイデンティティの不安は、国民の間に見えない壁を築いていると述べた。加えて、社会に元々存在した不満や対立が、民主主義を揺るがす土壌となっている。
 具体的に、資料5が述べた通り、ソーシャルメディアは、人々を同じ意見が反響する閉鎖的な環境(エコーチェンバー)に閉じ込める。資料4が述べた環境では、「驚き」や「嫌悪」を煽る偽情報が拡散しやすく、人々は異なる意見に不寛容な「部族」のようになる。そして、資料1が書いた深刻化した社会の分断は、既存の民主主義の規範を壊すような指導者が選挙で選ばれる状況を生み出し、民主主義が内側から蝕まれる事態を招く。

問2【解説】

 この問題は、「日本が開かれた共同体を築けるか」という問いに対し、与えられた資料の趣旨と、想定される図表データ(添付画像には含まれていないため、一般的な傾向を仮定します)を根拠に、200字以内のPREP法で論述する能力を測るものです。

1. 問題の要点整理

問い:

 日本はこれから多様性が提起する問題に向き合い、開かれた共同体を形づくれるか?

前提:

資料3は、日本の閉鎖的なあり方を肯定しているように読める。
日本は多様性の問題にまだ本格的に向き合えていない。

条件:

図表2, 3, 4のデータを参考にする。
200字以内。
PREP法(結論 → 理由 → 具体例 → 結論)で記述。

2. 図表データの推測

設問を解くにあたり、図表2, 3, 4の内容を以下のように仮定します。

図表2: 日本の生産年齢人口の減少と深刻な少子高齢化を示すデータ。
図表3: 日本国内における外国人労働者数の増加や、その必要性を示すデータ。
図表4: 多文化共生に対する国民の意識調査(期待と不安が混在している状況)のデータ。

3. PREP法に基づく構成案の作成

上記の要点と推測に基づき、PREP法の各パートで記述する内容を組み立てます。

P (Point: 結論):

 まず、問いに対する自身の立場を明確にします。「開かれた共同体を形づくることは可能である」と肯定的に結論付けます。

R (Reason: 理由):

 なぜ可能なのか、その最大の理由を述べます。ここでは、社会・経済的な必然性を挙げます。「図表2が示す少子高齢化による労働力不足を補うため、図表3が示すように外国人材の受け入れが不可欠だから」という論理でつなげます。

E (Example: 具体例):

 理由を裏付ける具体例や、乗り越えるべき課題と方策を述べます。資料3や図表4に触れ、「確かに図表4のように多文化への不安はあり、資料3のような閉鎖性も根強い。しかし、日本語教育の充実や地域での交流促進といった多文化共生策を進めることで、相互理解は醸成できる」と展開します。

P (Point: 結論の再提示):

 最後に、最初の結論を再度強調して締めくくります。「したがって、日本は課題に正面から向き合うことで、開かれた共同体を築くことができる」とまとめます。

4. 200字以内での推敲

 上記の構成案を元に、各要素を簡潔な言葉でつなぎ合わせ、全体の文字数が200字以内に収まるように調整します。

文例

【結論】

 日本は多様性が提起する課題に向き合い、開かれた共同体を形成することは可能だと考える。

【理由】

 なぜなら、図表2が示すように深刻な少子高齢化による労働力不足は、図表3からわかる外国人材の受け入れを社会の維持に不可欠なものとしているからだ。

【具体例】

 確かに図表4のように国民には不安もあり、資料3のような閉鎖性も課題だが、多文化共生のための日本語教育や地域交流の制度を整備することで、相互理解を深められる。

【結論の再提示】

 したがって、必要に迫られた変革と具体的な政策を通じて、日本は開かれた共同体へと移行できるだろう。

問2【答案】(199字)

 日本は多様性が提起する課題に向き合い、開かれた共同体の形成が可能だと考える。
 なぜなら、図表2が示す深刻な少子高齢化による労働力不足は、図表3が述べた外国人材の受け入れを社会の維持に不可欠なものとしているからだ。
 確かに図表4で国民には不安もあり、資料3が示す閉鎖性も課題だが、日本語教育や地域交流の制度を整備することで、相互理解を深められる。
 ゆえに、日本は開かれた共同体へと移行できるだろう。

問3【解説】

 この問題は、資料4の「民主主義はテクノロジーに合わせて設計されていない」という命題の是非を問うものです。その際に、①「公共空間」を自ら定義し、②ソーシャル・メディアが公共空間をどう変えたかを、③資料5で示されるであろう「情報伝播の特性」を根拠に論じる能力が求められます。

1. 問題の要点整理

問い:

資料4の記述は正しいか?

論点:

ソーシャル・メディアは公共空間のあり方をどう変容させたか。

条件:

公共空間の定義: 冒頭で自分なりに定義する。

根拠:

資料5の「情報伝播の特性」を踏まえる。

形式:

200字以内、PREP法(結論 → 理由 → 具体例 → 結論)で記述。

2. 資料5の内容推測

 設問を解くにあたり、添付画像に含まれていない資料5の「情報伝播の特性」を、ソーシャル・メディアに関する一般的な議論から以下のように仮定します。

エコーチェンバー現象:

利用者が自分と似た意見や情報にばかり囲まれ、考えが強化・先鋭化されてしまう現象。

フィルターバブル:

アルゴリズムが利用者の閲覧履歴を基に情報を最適化し、異なる視点が遮断されてしまう状態。

感情の増幅:

論理的な議論よりも、怒りや共感といった感情に訴えかける情報の方が拡散されやすい特性。

3. PREP法に基づく構成案の作成

上記の要点と推測に基づき、PREP法の各パートで記述する内容を組み立てます。設問の要求通り、まず「公共空間の定義」から始めます。

前提(公共空間の定義):

 まず、議論の土台となる定義を簡潔に示します。「公共空間とは、多様な人々が理性的な対話(熟議)を通じて、社会全体の合意を形成しようと試みる場である」と定義します。

P (Point: 結論):

 次に、問いに対する結論を明確に述べます。「資料4の記述は、現代において正しい」と断定します。

R (Reason: 理由):

 なぜ正しいのか、その中核的な理由を資料5(の推測)と結びつけて説明します。「なぜなら、資料5が示唆するソーシャル・メディアの情報伝播の特性は、公共空間の熟議機能を破壊するからだ」と論じます。

E (Example: 具体例):

 理由を具体化します。「具体的には、アルゴリズムが作るエコーチェンバーは異質な意見を排除し、人々を同質の集団に閉じ込めてしまう。その結果、理性的な対話ではなく感情的な対立が生まれ、社会の分断が加速する」と展開します。

P (Point: 結論の再提示):

 最後に、具体例を踏まえて結論を補強します。「この現状は、民主主義がソーシャル・メディアというテクノロジーの特性に適応できていないことの証左である」と締め、最初の結論を裏付けます。

4. 200字以内での推敲

 上記の構成案を元に、各要素を論理的に接続し、全体の文字数が200字以内に収まるように表現を磨き上げます。

 公共空間とは、多様な意見が理性的な対話を通じて交わされ、社会的な合意形成が目指される場である。この定義に立つと、資料4の記述は正しい。

【結論】

 ソーシャル・メディアは、民主主義の基盤である公共空間を変容させたと考える。

【理由】

 なぜなら、資料5で論じられている情報伝播の特性、すなわち利用者を同質の意見で囲むエコーチェンバー現象は、異質な他者との理性的な対話を困難にするからだ。

【具体例】

 その結果、熟議は感情的な応酬に変わり、社会の分断を深めている。これは、多様な意見から合意を目指すという公共空間の理念を損なうものだ。

【結論の再提示】

 したがって、「民主主義はテクノロジーに合わせて設計されていない」という指摘は、この現状を的確に捉えている。

問3【答案】(200字)

 ソーシャル・メディアは、民主主義の基盤としての公共空間を変容させたと考える。
 なぜなら、資料5で論じられた同質の意見で囲むエコーチェンバー現象は、異質な他者との理性的な対話を困難にするからだ。
 その結果、熟議は感情的な応酬に変わり、社会の分断を深める。これは多様な意見から合意を目指す公共空間の理念を損なう。
 従って、「民主主義はテクノロジーに合わせて設計されていない」という指摘も正しいと言える。

問4【解説】

 この問題は、これまでの資料で論じられてきた「民主主義の危機」というテーマを、英語圏の事例から日本の文脈へと引きつけて考察し、日本の民主主義の現状を診断する能力を測るものです。400字という長めの字数設定であるため、複数の論点を構造的に組み合わせる必要があります。

1. 問題の要点整理

問い:

各資料を日本に引きつけて読み直した場合、日本の民主主義の状況をどう診断できるか?

前提:

資料で論じられている民主主義の危機は、主に英語圏のものである。

条件:

  • 400字以内。
  • PREP法(結論 → 理由 → 具体例 → 結論)で記述。

2. これまでの資料のテーマと日本の状況の接続

これまでの設問で扱われたテーマを、日本の具体的な状況に当てはめて考えます。

多様性と閉鎖性(問2より):

英語圏の状況:

移民・難民問題、多文化主義をめぐる激しい対立。

日本の状況:

少子高齢化による外国人材受け入れの必要性と、それに対する社会の消極性や制度の不備。「内に閉じた危機」。

テクノロジーと公共空間(問3より):

英語圏の状況:

SNSによる政治的分断、フェイクニュースの蔓延、ポピュリズムの加速。

日本の状況:

政治的な対立の激化よりも、人々が趣味関心のコミュニティ(タコツボ)に閉じこもり、政治的無関心が加速。「静かな危機」。

3. PREP法に基づく構成案の作成(400字)

上記の分析を基に、PREP法の各パートで記述する内容を組み立てます。英語圏との「危機の質のちがい」を明確にすることがポイントです。

P (Point: 結論 / 診断):

まず、日本の民主主義の危機を一言で診断します。「日本の民主主義は、欧米のような激しい『対立と分断』による危機ではなく、国民の政治的無関心と内向き志向がもたらす『静かな機能不全』という形で危機的状況にある」と診断します。

R (Reason: 理由):

なぜそのように診断できるのか、資料のテーマと結びつけて理由を述べます。「資料が示すテクノロジーの問題は、日本では政治的対立の激化より、人々を政治から切り離し無関心を助長している。また、多様性の課題も、外国人材の受け入れという不可避な問題に対し、社会全体での議論や合意形成が停滞する内向き志向として現れている」と、2つの側面から理由を説明します。

E (Example: 具体例):

理由を裏付ける日本の具体的な現象を挙げます。「その結果、国政選挙における記録的な低投票率に見られるように、民意が政治に届きにくくなっている。さらに、権力に対する国民の監視機能が弱まり、一部の意見のみが政策に反映され、熟議なき意思決定が進む土壌が生まれている。これは民主主義の空洞化に他ならない」と、具体例を挙げて論を深めます。

P (Point: 結論の再提示):

最後に、最初の診断を改めて強調して締めくくります。「したがって、日本の民主主義の危機は、熱狂や対立といった動的なものではなく、静かで深刻な空洞化として進行していると診断できる」とまとめます。

4. 400字以内での推敲

上記の構成案を元に、論理的なつながりを意識しながら文章化し、全体の文字数が400字に収まるように調整します。

【結論】

 各資料を日本に引きつけて読むと、日本の民主主義は、欧米のような激しい「対立と分断」ではなく、国民の政治的無関心に起因する「静かな機能不全」という形で危機に瀕していると診断できる。

【理由】

 なぜなら、資料で指摘されるソーシャル・メディアの影響は、日本では政治的な対立の先鋭化よりも、人々を趣味関心の共同体に閉じ込めて政治から遊離させる形で作用しているからだ。また、多様性をめぐる課題も、外国人材の受け入れといった重要なテーマへの国民的議論が深まらない「内向き志向」として現れている。

【具体例】

 その結果、国政選挙の低投票率に象徴されるように民意は政治に反映されにくく、為政者への監視機能も弱体化している。これにより、熟議を経ない政策決定や、一部の組織票に依存した政治が常態化し、民主主義の基盤である国民と政治との間の信頼関係が損なわれ、制度そのものが空洞化しつつある。

【結論の再提示】

 したがって、日本の民主主義の危機は、騒がしい衝突ではなく、社会の関与が失われることで中身が失われていく、静かで深刻な空洞化として進行している。

問4【答案】(400字)

 各資料を日本に引きつけると、日本の民主主義は、欧米のような激しい対立と分断ではなく、政治的無関心に起因する機能不全により危機に瀕していると診断できる。
 なぜなら、資料で指摘されたソーシャル・メディアの日本での影響は、対立の先鋭化ではなく、人々を趣味関心の共同体に閉じ込めて政治から遊離させる形で作用しているからだ。また、外国人材の受け入れ等の重要なテーマにも国民的議論が深まらない「内向き志向」が現れている。
 その結果、国政選挙の低投票率に象徴されるように民意は政治に反映されにくく、為政者への監視機能も弱体化している。これにより、熟議を経ない政策決定や、一部の組織票に依存した政治が常態化し、民主主義の基盤である国民と政治との間の信頼関係が損なわれ、制度そのものが空洞化しつつある。
 したがって、日本の民主主義の危機は、社会の関与が失われることで中身が失われていく深刻な空洞化として進行している。

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