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慶應義塾大学 看護医療学部 一般 2023年 小論文 過去問解説

問1【解説】

 この問題を解くためには、以下のステップで思考を進めます。

1. 設問の理解

 まず、問題が何を求めているかを正確に把握します。

  • 問い: 「聴く」ということにおいて、なぜ「急いてはいけない。聴こうとしてもいけない」のか。
  • 条件: 著者の主張について、本文の内容を200字以内で要約する。  この設問は、単に下線部の理由を抜き出すだけでなく、その背景にある著者の「聴く」という行為に対する主張をまとめて説明することを要求しています。

2. 本文中の該当箇所の特定

 次に、下線部の理由が書かれている箇所を本文から探し出します。下線部が含まれる以下の段落が最も重要です。この段落に答えの核心があります。

 受け身でいることが大きな意味をもついとなみ、その一つに聴くということがある。わたしの言葉がこぼれ落ちてくるのを待っているひとがいることによって、ひとの鬱いだ心は開かれる。急いてはいけない。聴こうとしてもいけない。ここでは鬱いだひとがその鬱ぎをみずから物語ることがとても大きな意味を持つ。なぜなら、物語るために、ひとはその鬱ぎのなかに溺れたままでいるのではなく、その外へ出て、それを対象化しなければならないから。鬱ぎを語ることで、鬱いでいるそのひとがみずからの鬱ぎとの関係を変えること、それをじっと待つのが聴くといういとなみである。 

3. 要点の整理

 該当箇所から、著者の主張の要点を箇条書きで整理します。

  • 重要なこと: 話し手(鬱いだひと)が、自ら自身の鬱ぎを物語ること。
  • 物語る効果: 物語るためには、鬱ぎの感情に溺れるのではなく、一度その外に出て客観的に対象化する必要がある。
  • 結果: その結果、話し手は自身の鬱ぎとの関係性を変えることができる。
  • 聴き手の役割: このプロセスを「じっと待つ」こと。
  • なぜ急いではいけないか: 聴き手が性急に言葉を促したり解釈したりすると、話し手自身が自分の力で苦しみと向き合い、それを乗り越えるという主体的なプロセスを阻害してしまうから。

4. 文章の構成と文字数調整

 整理した要点を、200字以内の文章にまとめます。以下の要素を論理的につなげます。

  • 結論: なぜ急いではいけないのか → 話し手自身の主体的なプロセスが重要だから。
  • 理由①: 「聴く」ことの本質は、話し手が自らの鬱ぎを「物語る」のを「待つ」ことにある。
  • 理由②: なぜなら「物語る」という行為を通じて、話し手は自身の苦しみを客観視し、それとの関係性を自ら変えることができるから。
  • 結論の補強: したがって、聴き手が積極的に介入することは、話し手からその重要な機会を奪うことになる。  これらの要素を組み合わせて、自然な文章を作成し、最後に文字数を確認します。

問1【解答】(199字)

 現代社会が評価しがちな積極性とは異なり、聴くという行為では、話し手が自らの鬱ぎを物語るのを「待つ」という受け身の姿勢が決定的に重要となる。なぜなら、話し手は物語ることを通じて、苦しみの渦中から出した物語を客観視し、関係性を変えるという主体的な回復のプロセスを歩むからだ。また、聴き手が安易に言葉を促し性急な解釈を加えれば、話し手自身が自分の力で困難と向き合うための極めて重要な機会を奪いかねない。

問2【解説】

 この問題は二つのパートから構成されています。それぞれのパートを段階的に作成し、最後に統合します。

1. 設問の理解

 まず、設問が何を求めているかを正確に把握します。

  • パート1: 著者の「受け身でいるということ」についての考えを簡潔に説明する。
  • パート2: それに対する自分の考えを述べる。
  • 条件:
    • パート2(自分の考え)はPREP法(結論→理由→具体例→結論)で構成する。
    • 全体を500字以内に収める。

2. 著者の考えの要約(パート1の作成)

 本文全体から「受け身でいること」に関する著者の主張を抜き出し、要約します。

  • 社会は行動実績のような積極的なこと(アクティヴ)ばかりを評価し、待つ、見守るといった受動的なこと(パッシヴ)の力を忘れていると指摘している。
  • 「聴く」という行為においては、相手に主導権(イニシアティヴ)を与え、徹底して受け身でいることが求められる。
  • 「受け身」は単なる無為ではなく、かなりの才覚とエネルギーを要するものである。
  • 人の生死という根源的な出来事も、「死なれる」「生まれる」という受動形の体験が基本であると考察している。  これらの要素を統合し、「著者は、受け身でいることを、社会的に過小評価されているが、相手の主体性を尊重し、寄り添うための高度な技術であり、生や死といった根源的な場面にも通じる重要な営みだと考えている」といった形で簡潔にまとめます。

3. 自分の考えの構築(パート2の作成:PREP法)

 次に、著者の考えに対する自分の意見をPREP法に沿って組み立てます。ここでは「賛成」の立場で構成します。

P (Point): 結論

  • 著者の考えに賛成する。現代社会において「受け身でいること」の価値を再認識することは不可欠だと考える。

R (Reason): 理由

  • なぜなら、効率性や目に見える成果を追求するあまり、人の内面的な成長や自発的な回復といった、時間のかかるプロセスを待つ姿勢が軽視されがちだから。

E (Example): 具体例

  • 教育や子育ての場面を想定する。子どもが問いの答えに窮している時、すぐに正解を教えるのは簡単だが、子どもの中から言葉が生まれるのをじっと待つという「受け身」の姿勢こそが、子どもの思考力や主体性を育む。

P (Point): 結論の再提示

  • したがって、人の真の自立を支え、信頼関係を築く上で、この「受け身」の姿勢を意識的に実践していくことが極めて重要である。

4. 全体の統合と文字数調整

 最後に、パート1とパート2を自然につながるように結合し、全体の文字数が500字以内になるよう調整します。冒頭に著者の考えの要約を置き、それに続けて「この考えに対し、私は賛成である。」のように接続し、PREP法の論述を展開します。

筆者の回答

著者は「受け身でいること」を、社会的に過小評価されているが、相手の主体性を引き出すための高度な営みだと考えている。それは、ただ待つだけでなく多大なエネルギーを要し、人の生や死といった根源的な体験にも通じる重要な姿勢であると述べている。

【結論】

 この著者の考えに、私は全面的に賛成する。効率性が優先される現代社会においてこそ、「受け身でいること」の価値を意図的に再評価し、実践することが不可欠だと考える。

【理由】

 なぜなら、目に見える成果を性急に求める風潮は、相手が自らの力で成長し、問題を乗り越えるために必要な「時間」と「余白」を奪ってしまうからだ。積極的な介入は、時に相手の主体性を阻害する危険性すらある。

【具体例】

 例えば教育の現場において、生徒が答えに詰まった時、すぐにヒントを与えるのではなく、生徒自身の言葉や思考が熟すのを辛抱強く待つという教師の「受け身」の姿勢は、生徒の深い思考力と自律性を育む上で極めて重要である。

【結論の再提示】

 したがって、他者の真の成長を支え、深い信頼関係を築くためには、あえて何もしないで待つという、この積極的な「受け身」の姿勢が、今まさに求められているのである。

問2【解答】(499字)

 著者の考えに私は全面的に賛成する。デジタル化が進み、即時的な成果が求められる効率性優先の現代社会においてこそ、「受け身でいること」の価値を意図的に再評価し、実践することが不可欠である。
 なぜなら、目に見える結果を性急に求める風潮は、相手が自身の内面とじっくり向き合い、考えを自らの言葉として紡ぎ出すために不可欠な「時間」と「余白」を奪ってしまうからだ。良かれと思っての積極的な介入が、時に相手から主体的に物事と向き合う機会を奪い、その成長を妨げる危険性すらある。
 例えば教育の現場で、生徒が答えに窮した時、すぐに正解を示すのではなく、生徒自身の言葉と思考が熟すのを辛抱強く待つ教師の姿勢は、生徒の深い思考力と自律性を育む。これは医療や介護の現場でも同様で、相手のペースを尊重し、訴えにじっと耳を傾け、行動を見守るという姿勢が、その人本来の力を引き出し、尊厳を守ることにつながる。
 従って、真の支援とは何かを与えることだけではない。他者の力を信じ、その成長を静かに待つという、この一見消極的に見える極めて積極的な「受け身」の姿勢こそが、他者との深い信頼関係を築く上で今まさに求められているのである。

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