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慶應義塾大学 看護医療学部 一般 2019年 小論文 過去問解説

問1【解説】

 この問題を解くためには、設問の要求を正確に把握し、本文の中から根拠となる部分を見つけ出し、それらを指定された文字数内で簡潔にまとめる必要があります。

ステップ1:設問の分析

 まず、設問を分解して、何が問われているのかを明確にします。

  • 主題: 「病む者に元気になってと声をかけることが、いかに残酷であるか」
  • 問い: なぜ、そのように指摘しているのか?(理由の説明)
  • 条件1: 本文の内容を参考にすること
  • 条件2: 100字以内で述べること

 ここでのポイントは、自分の意見や想像ではなく、あくまで本文に書かれている筆者の考えを根拠として説明することです。また、100字という厳しい文字数制限があるため、要点を的確に抽出する必要があります。

ステップ2:本文中の根拠箇所の特定

 次に、本文の中から「なぜ残酷なのか」という理由が書かれている部分を探します。下線部1)が引かれている段落とその次の段落に、直接的な答えが記述されています。

根拠A:

「元気になりたいのは病者であり、その困難を知り抜いているのもまた、本人だからである。」

 この一文から、病者自身が誰よりも元気になりたいと願い、その難しさを痛感しているという事実がわかります。その本人に向かって「元気になって」と言うことは、無神経であり、本人の苦しみを無視した発言と捉えられます。

根拠B:

「発言者は、励ましのつもりだろうが、病者にはそう聞こえない。元気になることが、関係を結び直す条件だと聞こえる。その言葉は、現実世界に戻ってくるには、『元気』になるほかないと、ほとんど暴力的に伝えているに過ぎない。」

 この部分から、励ましの意図とは裏腹に、病者は「元気にならなければ、あなたとの関係は続かない」という無言の条件やプレッシャーとして受け取ってしまうことがわかります。これは、病者を現在の状態のまま受け入れるのではなく、健康な状態に戻ることだけを要求する、一方的で暴力的なメッセージに聞こえてしまうのです。

ステップ3:解答要素の整理と構成

 特定した2つの根拠(AとB)を、100字以内で論理的に繋ぎ合わせます。

 まず、大前提として「元気になりたいと最も願い、その困難さを知っているのは病者本人である」という点を述べます。(根拠A)

 次に、その本人にとって「元気になって」という言葉がどのように聞こえてしまうのかを説明します。(根拠B)

  • 励ましではなく、「関係を結び直すための条件」に聞こえる。
  • 現実世界へ戻ることを強要する「暴力的なメッセージ」に聞こえる。  これらの要素を組み合わせ、簡潔な言葉で表現し直します。

ステップ4:文章化と推敲

 最後に、整理した要素を文章にし、文字数を確認しながら表現を整えて、最終的な解答を作成します。

問1【解答】(100字)

元気になりたいと最も願い、その困難さを知り抜いている病者本人にとって、「元気になって」という言葉は励ましとはならず、関係を結び直す条件として、現実世界へ戻ることを暴力的に強要する冷酷な響きを持つから。

問2【解説】

 この設問は、①課題文の要約・説明パートと、②自身の意見論述パートの2つで構成する必要があります。これを600字でまとめるには、テンプレートの各項目を以下のように活用して思考を整理し、構成を組み立てるのが効果的です。

■ 議論の整理

 まず、設問の前半部分「本文の内容を参考に説明し」に応えるため、筆者の主張を正確に整理します。ここでは「一般論 vs 筆者の論」の対比構造を使うと、筆者の独自性が明確になります。

(一般論):

 通常、支援とは「持てる者」(支える者)が「持たざる者」(苦しむ者)に一方的に何かを与える関係だと考えられている。

(筆者の論):

 しかし筆者は、それは表面的なことに過ぎないと主張する。実際には、支える者(筆者)が苦しむ者(妻)から受け取ったものの方が遥かに大きいと述べている。苦しむ者は、支える者の無力さや不安をも受け入れ、共に新しい関係を築こうとする「協同」の主体である。このように、精神的、存在的な次元では、苦しむ者が「与える者」、支える者が「恩恵を受ける者」という関係性の逆転が起きている、と筆者は論じている。

■ 問題発見

 次に、設問の後半「それに対するあなたの考えを加えて」に応えるため、自分の論を展開する導入として、問いを立てます。これにより、単なる感想に終わらない、論理的な考察へと進むことができます。

(問題の発見):

 筆者が提示するこの関係性の逆転は、特殊な経験に基づいた美談なのだろうか。それとも、看護や介護、さらには人間関係全般に当てはまる本質的な構造なのだろうか。本稿では、この構造の普遍性について考察する。

■ 論証→帰納法

 立てた問いに答えるため、自分の意見の根拠を示します。ここでは、具体的な事例を挙げて一般法則を導き出す「帰納法」が有効です。

(例の列挙):

(例1:災害支援)

 筆者も本文で示唆しているように、災害ボランティアに参加した人が、被災者の気丈な振る舞いや共同体意識に触れ、「助けに行ったつもりが、逆に勇気や大切なことを教えられた」と語ることがある。

(例2:教育現場)

 教師が、困難な状況にいる生徒のひたむきな努力から、教育の原点や情熱を思い出すことがある。この場合、知識は教師から生徒へ与えられるが、学び続ける姿勢という価値は生徒から教師へ与えられている。

(例3:新人研修)

 OJTで後輩を指導する先輩社員が、後輩の素朴な疑問に答える中で、自らの仕事の意味や知識の曖昧だった部分を再認識し、成長することがある。

(法則性を導く):

 これらの例から、一見すると「支える側」「教える側」が、実は相手の存在や姿そのものから、精神的な成長や自己認識の深化といった本質的な「恩恵」を「受けている」という共通の構造が見えてくる。

■ 結論

 最後に、論証パートで導いた法則性を基に、最初に立てた問い(問題発見)に答える形で、小論文全体の結論をまとめます。

(結論):

 筆者の言う「苦しむ者は与える者、支える者は受ける者」という関係性は、物質的な支援の次元に留まらず、人間の精神的な交流の次元で捉えれば、特定の個人に限らない普遍的な真実である。

(その根拠):

 なぜなら、支えるという行為は、相手の苦しみを通して自らの非力さや存在意義と向き合う機会を得ることであり、その経験こそが支える側にとって最も大きな「恩恵」となるからだ。支援とは、互いの存在を賭けて新しい関係を築く相互的な「協同」の営みなのである。

問2【解答】(599字)

 筆者は、苦しむ者と支える者の関係性について、一般的な見解とは逆の構造を提示した。通常、支援とは持てる者が持たざる者へ一方的に何かを与える行為と見なされがちだが、筆者はそれを表面的なことに過ぎないと断じる。むしろ、精神的な次元においては、支える者が苦しむ者の存在そのものから受け取る恩恵の方が遥かに大きく、苦しむ者こそが「多く与える者」であり、支える者は「恩恵を受ける者」なのだと論じている。
 それでは、このような関係性の逆転は、筆者の特殊な経験にのみ基づくものなのだろうか。私は、これは看護や介護の現場に限らず、人間関係全般に当てはまる普遍的な構造であると考える。
 例えば、災害ボランティアに参加した人が、被災者の気丈な姿に触れて「逆に勇気づけられた」と語る例は少なくない。また、教育現場においても、教師が生徒のひたむきな努力から情熱を取り戻すことがある。これらの例では、一見すると支える側、教える側である者が、相手の存在を通して自らの在り方を省み、精神的な成長という本質的な恩恵を受けている。
 従って、筆者の主張は普遍的な真実を捉えていると言える。なぜなら、誰かを支える行為は、相手の苦しみを通して自らの非力さや存在意義と向き合う機会を得ることであり、その経験こそが支える側にとって最も大きな恩恵となるからである。真の支援とは、互いの存在を賭けて新しい関係を築く、相互的な協同の営みなのである。

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