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上智大学 総合人間科学部 教育学科 公募制推薦入試 2019年 過去問解説

【解説】

■ 議論の整理

 この問いには課題文がないため、問いに含まれるキーワードの定義と、社会的に共有されている事実を「前提」として整理します。

(共通の前提)……問題を解く上で前提となる事実のまとめ

少子高齢化の定義:

 日本は、子どもの数(特に15歳未満の年少人口)が減少し、65歳以上の高齢者人口の割合が増加する「少子高齢化」が急速に進行している社会である。

社会的な状況:

 これにより、労働力不足、社会保障費の増大、地域コミュニティの活力低下といった様々な社会問題が生じている。

教育現場の状況:

 子どもの数が減ることで、学級規模の縮小や学校の統廃合が各地で進んでいる。

(議論の論点)……この問題で論じるべき対立点や側面

 少子高齢化がもたらす影響は、ネガティブな側面(例:社会性の育ちの機会減少、教育の活力低下)と、見方によってはポジティブな側面(例:一人ひとりに目が行き届く教育の可能性)の両方から考察する必要がある。
 影響の範囲を「子どもの成育(家庭や地域社会)」と「学校教育」の二つの側面に分けて論じる必要がある。

■ 問題発見

 与えられた大きなテーマ(影響を論じなさい)を、自分自身で具体的な「問い」として設定し、小論文の方向性を明確にします。

(問題の発見)……この小論文で答えるべき問いの設定

 「少子高齢化は、子どもの社会性や多様な価値観に触れる機会を奪い、学校教育の活気を失わせるという負の側面を持つ。この危機的状況に対し、私たちは社会や教育のあり方をどのように変革し、子どもたちの健やかな成長を保障していくべきか?」
このように「問題(危機)」を具体的に設定することで、後半の「解決策」にスムーズに繋げることができます。

■ 論証テーマ1:子どもの成育への影響

 設定した問題について、その原因や構造を分析します。ここでは「なぜなぜ分析」が効果的です。

(論証A) なぜ成育に影響が?:

 子どもの数が減り、近所や親戚に年の近い子どもがいない。一人っ子も増えた。

具体例:

 公園で遊ぶ子どもの姿が減った。かつてのような異年齢の子どもたちの集団での遊びが失われた。

(論証B) なぜそれが問題?:

 多様な人間関係の中で揉まれる経験が減り、コミュニケーション能力や協調性、対立を乗り越える力といった「社会性」を育む機会が失われるから。

(論証C) なぜ社会性を育む機会が失われるのが根本的な問題?:

 将来、子どもたちが多様な人々と共に社会を築いていく上で不可欠な資質が、成長の初期段階で十分に育まれなくなる危険性があるから。

■ 論証テーマ2:学校教育への影響

 設定した問題について、その原因や構造を分析します。ここでも「なぜなぜ分析」が効果的です。

(論証A) なぜ学校教育に影響が?:

生徒数が減り、クラスの人数が少なくなる。部活動の選択肢が減り、学校の統廃合も進む。

具体例:

 全校生徒が数十人の小学校。野球やサッカーのような団体スポーツのチームが作れない。吹奏楽部が成り立たない。

(論証B) なぜそれが問題?:

 少人数では切磋琢磨する競争が生まれにくく、集団活動のダイナミズムが失われる。教員の数も減り、多様な専門性を持つ教員から学ぶ機会が減る可能性がある。

(論証C) なぜ教育の活力が失われるのが根本的な問題?:

 学校が、多様な他者と協働・競争しながら学ぶ「小さな社会」としての機能を果たしにくくなり、教育の質そのものが低下する恐れがあるから。

■ 解決策

 分析(論証C)で明らかになった根本的な問題に対して、具体的な解決策を提示します。

(Cから導かれる解決策)

地域社会との連携による「世代間交流」の促進:
(その根拠):

 子ども同士の関わりが減るなら、高齢者など他の世代との関わりを増やすことで、新たな形で社会性を育むことができるから。高齢者にとっても、生きがいや健康増進に繋がる。

(その具体例):

 地域の高齢者が学校で昔の遊びを教える、地域の祭りに子どもが積極的に参加する仕組みを作る、地域の農家と協力して農業体験を行う、など。

ICT活用と学校間連携による「教育の多様性」の確保:
(その根拠):

 1つの学校で多様な学びを完結させるのが難しいなら、テクノロジーや学校間の連携によってその限界を乗り越えることができるから。

(その具体例):

 遠隔地の学校とオンラインで合同授業やディスカッションを行う。複数の学校が合同で部活動チームを作る。専門的な知識を持つ地域の社会人を「ゲストティーチャー」としてオンラインで招く、など。

■ 解決策の吟味

 提案した解決策に死角がないか、多角的に検討します。

(他の解決策との比較)

 「単に教育予算を増やす」という解決策と比較する。お金だけでは、失われた「多様な人間関係」を取り戻すことは難しい。上記で提案した「交流」や「連携」という視点の方が、問題の根本にアプローチしている点で優れていると主張できる。

(利害関係者検討)

得をする人:

 子ども(多様な経験)、高齢者(生きがい)、教員(新しい教育への挑戦)。

損をする/負担が増える人:

 地域の調整役となる自治体職員や教員の業務負担は増える可能性がある。オンライン授業に慣れない子どもや教員もいるかもしれない。
 これらの負担に対しては、専門のコーディネーターを配置したり、研修を充実させたりするなどの追加の配慮が必要であると論じることで、議論に深みが増す。

(最終的な結論の確認)

 「少子高齢化は確かに子どもたちの成育環境や教育に深刻な課題をもたらす。しかし、それは同時に、これまで学校の中だけで完結しがちだった教育を、地域社会や多様な世代、さらにはテクノロジーを巻き込んだ、より開かれたものへと変革する好機でもある。課題を乗り越えることで、私たちはより豊かで持続可能な教育の未来を創造できるはずだ。」と、課題を前向きな展望で締めくくる。

【解答】(1081字)

 急速な少子高齢化は、現代日本社会が直面する根源的な課題である。そして、その影響は経済や社会保障に留まらず、次代を担う子どもの成育と学校教育の現場にこそ、深刻な影を落としている。したがって、本稿ではこの問題がもたらす負の側面を分析し、その克服に向けた建設的な方策を論じたい。
 まず、子どもの成育面において最も懸念されるのは、社会性を育む原体験の希薄化である。なぜなら、兄弟や近所の友達といった身近な子ども集団が消滅し、かつては日常的であった異年齢間の遊びが失われたからだ。その結果、子どもたちは他者との衝突を乗り越えたり、協力して何かを成し遂げたりする貴重な機会を奪われてしまう。よって、将来多様な人々と共生していく上で不可欠なコミュニケーション能力や共感性が、十分に育まれずに終わるという深刻な事態が危惧されるのだ。
 次に、学校教育の場においても、教育の質の低下という看過できない問題が浮上する。というのも、生徒数の絶対的な減少は、学校の統廃合やクラス規模の極小化を招き、教育現場から活気を奪うためである。また、野球や吹奏楽といった団体活動の成立が困難になるだけでなく、多様な意見が交わされる活発な討議も生まれにくくなる。このように、学校が本来持つべき、生徒同士が切磋琢磨し合う「小さな社会」としての機能が弱体化し、画一的で深みのない学びに陥る恐れがある。
 では、私たちはこの複合的な危機に対し、いかにして立ち向かうべきだろうか。そこで、第一の解決策として、学校の枠を超え、地域社会全体を学びの場とする「世代間交流」の積極的な推進を提案する。たとえば、地域の高齢者が持つ伝統文化や専門知識を子どもたちが学ぶ機会を設けることは、失われつつある社会性を補完し、高齢者自身の生きがいにも繋がるだろう。さらに、第二の策として、ICTの活用と広域的な学校間連携の強化が不可欠である。そして、遠隔地の専門教員によるオンライン授業や、複数の学校による合同部活動などを通じて、生徒数の減少という物理的制約を超えた豊かで多様な教育機会を確保することが可能になる。
 たしかに、これらの新たな取り組みは、教員や地域住民に一時的な負担を強いる側面も否定できない。しかし、私たちは少子高齢化という不可逆的な社会変動を、従来の教育システムを根底から見直す絶好の機会として前向きに捉えるべきである。よって、教育を学校の内に閉ざすのではなく、社会全体で子どもを育むという新たなパラダイムへと転換し、地域や技術の力を結集することで、私たちはより強靭で持続可能な教育の未来を創造できると確信する。

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