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上智大学 総合人間科学部 教育学科 公募制推薦入試 2021年 過去問解説

問1【解説】

設問の正確な理解

 問われているのは、下線部①「これまで教育と呼ばれてきた一次元的な事象の捉え方を、生成と発達の多元的な言葉で語り直す必要がある」の意味です。
 条件として「自分の言葉でわかりやすく説明しなさい」とあります。本文の言葉をそのまま抜き出すのではなく、内容を理解した上で、より平易な言葉で再構成する必要があります。

文章の構造分析とキーワードの抽出

対比構造の把握:

 文章全体が「これまでの教育観」と「筆者の主張する新しい教育観」の対比で構成されています。この2つを明確に区別して整理することが重要です。

「これまでの教育(一次元的な捉え方)」のキーワードを探す:

  • 子どもを「未熟で無力な存在」とみなす。
  • 大人が一方的に知識や技能を「教え授ける」。
  • 「自律的な学習者」という閉じた個人を育成目標とする。
  • 「画一的に捉え」た《人間》の理想像がある。
  • 「均質な国民」を育成するシステム。
  • 要するに: 大人(教える側)が設定した単一のゴール(理想像)に向かって、子ども(教えられる側)を一方通行で導こうとする見方。

「生成と発達の多元的な言葉」のキーワードを探す:

  • 教育を「生命現象」として捉え直す。
  • 人間は「他者との関係のなかで、絶えず変化し続ける存在」。
  • 生まれながらに持つ「可塑性(変わりうる可能性)」に着目する。
  • 他者や環境との「相互作用」の中で「常に生成変化する動的な存在」。
  • 要するに: 人間は固定された存在ではなく、他者や環境との多様な関わりの中で絶えず変化・成長(生成)していく可能性を持つ存在であるという見方。

解答の構成

 まず結論を先に示して、下線部が何を意味するのかを端的に述べます。
  「一次元的な捉え方」の説明: これまでの教育がどのようなものであったかを、ステップ2で抽出したキーワードを使いながら自分の言葉で説明します。
 「生成と発達の多元的な言葉で語り直す」の説明: それに対して筆者が提唱する新しい教育観を、同様にキーワードを使いながら説明します。

まとめ:

 なぜ「語り直す必要がある」のか、つまり、この転換が何を意味するのかを改めて示し、解答を締めくくります。

問1【解答】(370字)

 下線部が意味するのは、大人が設定した画一的なゴールへ子どもを一方的に導くという従来の教育観を転換し、子どもが他者との多様な関わりの中で変化・成長する無限の可能性として捉え直す必要性があるということだ。
 筆者が批判する「一次元的な捉え方」とは、子どもを未熟な存在とみなし、大人が定めた単一の理想像へと向かわせる一方通行のプロセスである。
 それに対し「生成と発達の多元的な言葉で語り直す」とは、人間を固定的に見ず、他者との相互作用の中で常に変化し続ける動的な存在として捉える視点だ。このとき教育の役割は、あらかじめ定められた完成品を作ることではない。子ども一人ひとりが持つ多様な可能性が、豊かな関わりの中で開花していくプロセスに寄り添い、支援することに変わる。筆者は、教育の目的そのものをこのように根本から見直すべきだと主張しているのである。

問2【解説】

 この問題を解くためには、文章全体、特に後半部分の筆者の主張を正確に読み解く必要があります。

設問の理解

 問われているのは、下線部②「人類史の基本課題の実現」が何を意味するのかです。
 単に抜き出すだけでなく、筆者の論理展開を踏まえた上で「あなたの考え」として説明することが求められています。これは、本文の内容を自分の言葉で再構成し、解釈を示す必要があることを意味します。

文章の分析:対比構造の把握

 筆者は、旧来の教育がもたらした問題点と、新しい教育が目指すべき理想を対比させて論じています。この構造を理解することが鍵となります。

旧来の教育がもたらした「課題」の特定:

 本文後半で、旧来の教育が「均質な国民」を育成するシステムであったと指摘されています。
 その結果として生じた歴史上の悲劇として「植民地主義」や「民族浄化」、「排外主義」が挙げられています。
 ここから、筆者が言う「人類史の基本課題」とは、「自分たちと異なる他者を排除し、対立・抗争してきた歴史」そのものであると推測できます。

新しい教育が目指す「実現」の特定:

 筆者は、この課題を乗り越えるために新しい教育が必要だと主張します。
 その教育が育むべき知性として「他者への想像力を広げ、共感をもって他者と出会い、異なる文化や価値観をもつ人びとと対話し、共生していく知性」を挙げています。
 つまり、「実現」すべきこととは、このような知性を持った人々によって構成される「共生社会」の構築であると分かります。

解答の構成(PREP法)

P (Point): 結論

  「人類史の基本課題の実現」とは何か、一言で定義します。「多様な他者との『共生』を実現すること」が結論の中心になります。

R (Reason): 理由

 なぜそれが「基本課題」なのか、本文の記述を根拠に説明します。人類の歴史が他者の排除と対立の繰り返しであったという筆者の問題意識に触れます。旧来の教育がその一因であったことも指摘します。

E (Example): 具体例・詳細

 では、どうすればその課題を乗り越え、「実現」できるのかを説明します。筆者が提唱する新しい教育観(他者との関係性の中で人間は生成されるという考え)に触れ、それによって「共感」や「対話」、「想像力」といった共生に必要な能力が育まれることを具体的に述べます。

P (Point): 結論の再提示

 最後にもう一度、結論を要約して締めくくります。教育の転換を通じて、人類が対立の歴史を乗り越え、共生社会を築くことこそが「人類史の基本課題の実現」であると強調します。

文例(PREP法)

【結論】

 下線部②の「人類史の基本課題の実現」とは、自己とは異なる文化や価値観を持つ他者を排除・対立するのではなく、対話を通じて相互に理解し、共に生きていく「共生社会」を築き上げることだと考える。

【理由】

 なぜなら筆者は、人類の歴史が、自分たちと異なる他者を敵とみなし、植民地主義や民族浄化といった形で排除し、争ってきた悲劇の繰り返しであったと指摘しているからだ。そしてその根源には、均質な人間を育成し、閉じた共同体への帰属意識を強める旧来の教育観があったと論じている。この、他者を理解せず排除してしまうという、人類が抱え続けてきた根本的な課題を乗り越えることが、ここで言う「基本課題」なのである。

【具体例】

 その実現のために筆者が提示するのが、子どもを「他者との相互作用の中で常に変化し生成する存在」として捉え直す新しい教育である。この教育観に立てば、あらかじめ定められた型に子どもを押し込むのではなく、多様な他者との出会いや対話そのものが学びの中心となる。例えば、異なる背景を持つ人々が協働する学習を通じて、他者の視点に立つ想像力や、共感をもって対話する能力が育まれる。このようにして育まれた知性こそが、人類史の悲劇を乗り越え、共生社会を築くための具体的な力となる。

【結論の再提示】

 したがって、「人類史の基本課題の実現」とは、他者との関係性の中で自己を育む新しい教育を通じて、人類が繰り返してきた排他と対立の歴史を克服し、真の共生社会を実現することを意味するのである。

問2【解答】(441字)

 「人類史の基本課題の実現」とは、自己と異なる文化や価値観を持つ他者を排除・対立してきた人類の負の歴史を乗り越え、対話を通じて相互に理解し、共に生きていく「共生社会」を築き上げることだと考える。
 筆者がそう論じるのは、植民地主義や民族浄化といった歴史的悲劇の根源に、国家が求める均質な人間を育成し、閉じた共同体意識を強める旧来の教育があったと指摘しているからだ。したがって、この人類が抱え続けてきた「他者を理解せず排除してしまう」という根本的な課題を克服することこそが、ここで言う「実現」すべき目標なのである。
 そのために、子どもを固定的な存在ではなく「他者との相互作用の中で常に生成する存在」と捉え直す、新しい教育への転換が不可欠となる。多様な他者との出会いや対話そのものを学びの中心に据える教育を通じて、他者の視点に立つ想像力や、共感をもって対話する能力が育まれる。このようにして育まれた知性こそが、人類の対立の歴史を乗り越え、真の共生を実現するための具体的な礎となるのである。

問3【解説】

 この問いは、筆者の議論を応用して、現代の具体的な教育問題に対する自身の考えを論じる応用問題です。

設問の理解

対象:

 「不登校やひきこもり、学級崩壊やいじめや校内暴力など」の様々な教育問題。これらは個別の問題に見えますが、共通の根源を探ることが求められます。

条件:

 「筆者の議論を踏まえて、あなたの考えを述べなさい」。自分の意見を自由に述べるのではなく、本文で示された筆者の教育観(新しい人間観)を解決策の基盤に据える必要があります。

課題:

 これらの問題に対して「どのように対応すべきか」。具体的な解決の方向性を示すことが求められています。

筆者の議論と教育問題の関連付け

筆者の主張の再確認:

旧来の教育観:

 子どもを未熟な存在とみなし、「自律した個人」という画一的なゴールに押し込もうとする。

新しい教育観:

 人間は「他者との相互作用の中で常に生成・変化する」動的な存在。教育の役割は、そのプロセスを支援し、多様な可能性を開花させること。

問題の根源を筆者の視点で分析:

 不登校やいじめといった問題は、なぜ起こるのか? これらは、筆者が批判する「画一的な教育システム」からこぼれ落ちたり、その中で歪んだ関係性を強いられたりした結果として生じる「症状」だと考えられます。
 「あるべき生徒像」という単一の物差しで測られることへの拒絶が「不登校」に、他者との健全な関係性を築けず、排除の論理が働くことが「いじめ」に繋がると解釈できます。
 つまり、問題の根源は子ども個人にあるのではなく、子どもを取り巻く環境や関係性のあり方にある、と筆者の議論から導き出します。

解答の構成(PREP法)

P (Point): 結論

 まず、問題への基本的な対応方針を明確に提示します。個々の問題への対症療法ではなく、問題を生み出す環境そのものを変えるという根本的なアプローチを打ち出します。筆者の言葉を借りれば、「他者との相互作用の中で人間は生成される」という考えに基づいた「共生的なコミュニティ」を学校に作ることが解決策である、と結論づけます。

R (Reason): 理由

 なぜそのアプローチが必要なのか、筆者の議論を根拠に説明します。不登校やいじめは、子どもを画一的な型にはめ込もうとする旧来の教育観が生み出した「歪み」であると分析します。問題の根本原因が、個人の資質ではなく、関係性の貧困や環境の画一性にあることを明確にします。

E (Example): 具体例

 結論で述べた「共生的なコミュニティ」を具体的にどう実現するのかを示します。これらにより、学校が「失敗しても大丈夫な、多様性が尊重される安全な場所」になることを目指す、と具体化します。

教師の役割の転換:

 知識伝達者から、子ども同士の関係性を育む「ファシリテーター(伴走者)」へ。

授業や学級運営の転換:

 競争原理ではなく、多様な個性が協力し合う「協働学習(プロジェクト学習など)」の導入。

問題発生時の対応の転換:

 加害者/被害者の二元論で裁くのではなく、関係性の修復を目指す「対話の場」の設定(例:修復的対話)。 

P (Point): 結論の再提示

 最後に、結論を再度強調します。教育問題への真の対応とは、個別の生徒を指導・矯正することではなく、筆者の論に基づき、学校全体の文化を「誰もが安心して他者と関わり、自己を生成していける場所」へと変革していくことである、と締めくくります。

文例(PREP法)

【結論】

 不登校やいじめなどの様々な教育問題への対応は、個別の事象への対症療法ではなく、筆者の言う「他者との相互作用の中で人間は生成される」という考えに基づき、学校を画一的な個人を育成する場から、多様な個々人が安心して関係性を築ける「共生のコミュニティ」へと転換することだと考える。

【理由】

 なぜなら、不登校やいじめといった問題は、子どもを未熟で画一的な存在とみなし、「自律した個人」という単一のゴールへと強制する旧来の教育観の歪みが噴出したものと捉えられるからだ。このシステムでは、基準から外れた子どもは「問題児」として孤立し、他者との健全な関係性を築く機会を失ってしまう。つまり、問題の根源は子ども個人ではなく、彼らを取り巻く環境の画一性や関係性の希薄さにある。

【具体例】

 具体的には、まず教育者の役割を、知識を一方的に授ける者から、子ども同士の関係性を育むファシリテーターへと転換する。学級運営では、競争よりも協働を重視し、多様な背景や能力を持つ子どもたちが対等な立場で関わるプロジェクト学習などを導入する。いじめや暴力が発生した際には、加害者・被害者という単純な二項対立で断罪するのではなく、当事者全員が対話を通じて互いの背景を理解し、関係性を再構築する「修復的対話」のようなアプローチを取り入れる。これにより、学校が失敗を恐れずに自己を表現でき、他者との違いを学び合える安全な場所となる。

【結論の再提示】

 したがって、これらの教育問題への根本的な対応とは、個々の生徒を指導・矯正することではなく、筆者の論に基づき、学校全体の文化を「他者との豊かな関係性の中で、誰もが自己を生成していける場所」へと変革していくことに他ならない。

問3【解答】(380字)

 不登校やいじめといった様々な問題に対し、個別の生徒を指導するのではなく、筆者の論に基づき、学校を多様な個々人が安心して関係性を築ける「共生のコミュニティ」へと転換することが根本的な対応となる。
 なぜならこれらの問題は、子どもを画一的な型にはめる旧来の一方的な教育観が生む歪みであり、その根源は個人の資質ではなく、他者との関係性の貧困さにあるからだ。
 具体的には、まず教師が知識伝達者から関係性を育む伴走者へと役割を変える。そして競争より協働を重んじる学習や、罰ではなく関係修復を目指す対話の機会を積極的に取り入れる。学校を、失敗を恐れずに自己を表現でき、他者との違いを学び合える安全な場所にしていくことが重要となる。
 したがって、真の解決策とは、学校全体の文化を「他者との豊かな関わりの中で、誰もが自己を生成していける場所」へと変革していくことに他ならない。

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