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上智大学 総合人間科学部 看護学科 帰国生入試 2018年 過去問解説

【解説】

 この小論文の問いは、「本文の内容を踏まえ、『知識』と『経験・生活力』の関係について、あなたの考えを800字以内で述べなさい」というものです。本文では、菊池寛の「生活第一、芸術第二」という言葉を引用し、知識偏重の風潮を批判して、実生活で活かせる経験の重要性を説いています。
この問いに答えるための小論文の構成を、5STEPsに当てはめて考えてみましょう。

■ 議論の整理

まず、課題文が何を問題にしているかを整理します。

(共通の前提)

知識そのものは、人間が長い歴史の中で作り出した大切な遺産であり、価値のあるものである。

(議論の論点)

一般論(課題文が批判するもの):

 学問や知識は、それ自体が価値を持つ。学校で専門的な知識を深く学ぶことが重要である。

筆者の論:

 知識はそれだけでは不十分であり、「生活力」や「経験」を通じて実践されて初めて真の価値を持つ。知識だけを詰め込み、実社会で応用できない状態は「無用」である。

■ 問題発見

次に、この小論文で自分が何を論じるのか、中心的な問いを立てます。

(問題の発見)

 現代社会において、知識を「無用」なものにせず、真に価値あるものにするためには、私たちは「知識」と「経験・生活力」をどのように関連づけていくべきか?

■ 論証→帰納法

 問いを立てたら、その問いに対して自分の主張を論理的に証明します。ここでは複数の論証方法が考えられますが、「帰納法」を用いて具体例から主張を導き出す方法が説得力を持ちやすいでしょう。

例の列挙(たとえば〜):

  • 高い学歴を持ちながら、職場で実践的なスキルが不足し、周囲とうまく連携できない新入社員の例。
  • 大学でマーケティング理論を学んだ学生が、インターンシップで顧客の生の声を聴く「経験」を通じて、理論だけでは見えなかった課題を発見する例。
  • ボランティア活動という「経験」を通じて、社会問題に関する「知識」が自分事として深く理解できるようになる例。

法則性を導く(このことから〜といえる):

 これらの例から、知識は経験というフィルターを通して初めて、個人の血肉となり、実践的な知恵へと昇華される、という法則性を導き出すことができる。

例外を検討する(ただし〜という例外も考慮に入れる必要がある):

 ただし、数学や哲学のような純粋な理論を追求する学問分野も存在する。しかし、それらの知識も長期的には他の学問や技術に応用され、最終的には人類の「生活」に貢献してきた歴史も考慮に入れる必要がある。

■ 結論

論証で導いた法則性をもとに、問いに対する結論を述べます。

(結論):

 「知識」と「経験・生活力」は対立するものではなく、相互に補強し合いながら螺旋状に高め合うべき関係である。

(その根拠):

 知識は進むべき方向を示す地図の役割を果たし、経験はその地図が正しいかを検証し、新たな道を切り開く実践の役割を果たすから。知識なき経験は場当たり的になりやすく、経験なき知識は机上の空論に過ぎない。

(その具体例):

医学教育:

 座学で人体の「知識」を学んだ後、臨床実習という「経験」を積むことで、初めて一人前の医師になれる。

企業のPBL(Project-Based Learning)型研修:

 新しいプロジェクトに関する「知識」を学びながら、同時進行でプロジェクトを実践する「経験」を積むことで、生きたノウハウが身につく。

■ 結論の吟味

最後に、自分の出した結論を客観的に見つめ直し、より説得力のあるものにします。

(他の結論との比較):

 「知識さえあればよい(知識偏重)」という考え方や、「経験さえ積めばよい(学問不要論)」という極端な考え方と比較して、両者を連携させる自分の結論の方が、現代の複雑な問題に対応できる、よりバランスの取れた妥当な考え方であると主張する。

(利害関係者検討):

学生:

 知識と経験を統合することで、学習意欲が高まり、卒業後のキャリア形成にも有利になる(得)。

大学:

 インターンシップ等の連携プログラムを組む手間はかかる(損)が、社会のニーズに応える人材を育成でき、大学の評価が上がる(得)。

企業:

 即戦力となる人材を採用でき、育成コストを削減できる(得)。

(最終的な結論の確認):

 以上の検討から、「知識」と「経験」は、教育課程やキャリアのあらゆる段階で意図的に統合されるべきである。課題文の言う「生活第一」とは、知識を軽んじることではなく、知識を実生活の中で活かしてこそ価値があるという、現代にも通じる普遍的な指摘であると結論づける。

【解答】(788字)

 課題文は、菊池寛の「生活第一、芸術第二」という言葉を引用し、知識偏重の風潮を批判して、実生活で活かされる経験の重要性を説いている。私は、知識と経験・生活力は対立するものではなく、相互に補い合いながら高め合う関係にあると考える。なぜなら、知識は方向を示す地図であり、経験はその地図を実際に歩く行為だからである。
 まず、知識だけを重視する傾向は現代において強まっている。試験での高得点や資格取得が目的化され、知識を活かす力が育ちにくい。しかし、知識だけでは現実の課題を解決できない。たとえば、高学歴でも実践力に欠け、職場で周囲と協働できない新入社員がいるように、知識が生活の中で機能しなければ真の価値はない。
 次に、経験を通して知識が生きたものとなる例を挙げたい。たとえば、大学で理論を学んだ学生が、インターンシップで顧客の声を聞くことで、机上では見えなかった課題を発見することがある。また、ボランティア活動を通して社会問題に関する知識を自分事として理解できるようになる。したがって、知識は経験というフィルターを通してこそ、実践的な知恵へと昇華するのである。
 さらに、両者の統合が成果を生む分野も多い。たとえば、医学教育では座学で人体の知識を学び、臨床実習を重ねて初めて一人前の医師になれる。また、企業のPBL型研修では、理論を学びながら同時に実践を行うことで、生きたノウハウが身につく。
 もっとも、数学や哲学のように理論を追求する学問も存在するが、それらも長期的には社会生活を豊かにしてきた。したがって、「知識さえあればよい」「経験さえ積めばよい」といった極端な立場ではなく、両者を往復させる学びこそが現代に求められている。結局のところ、課題文の言う「生活第一」とは、知識を軽視することではなく、知識を生活の中で活かしてこそ真の価値が生まれるという普遍的な指摘であると言える。

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