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上智大学 文学部 新聞学科 外国人入試 2019年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、「権威」が持つ「社会の安定に寄与する」というポジティブな側面と、「思考停止や権力乱用を招く」というネガティブな側面を対比させることが着眼点です。この二面性を提示することで、権威を単純な悪として切り捨てるのではない、バランスの取れた議論の土台を築きます。

(共通の前提)

 「権威」とは、特定の分野における卓越した知識や経験、あるいは社会的な地位や伝統などに基づいて、人々を自発的に服従・信頼させる力を指す。社会秩序の維持や、専門的な知識の効率的な伝達において、一定の役割を果たしている。

(議論の論点)

 権威は、専門家や指導者の意見に信頼性を与え、社会の安定に寄与する肯定的な側面を持つ。しかしその一方で、権威への盲目的な服従は、個人の批判的な思考を停止させ、不正や権力乱用の温床となりうる。特に、ジャーナリズムの世界では、「権威」の発表を無批判に報道するのか、それともその妥当性を検証するのかという緊張関係が常に存在する。権威の持つ二面性が主要な論点となる。

■ 問題発見

 「社会に必要なはずの権威が、なぜ危険な存在に変わりうるのか?」という、権威の本質に迫る問いを立てます。これにより、小論文が、権威との「あるべき向き合い方」を探求するものであるという方向性を明確に示します。

(問題の発見)

 社会の安定に不可欠な「権威」が、なぜ時として個人の思考を停止させ、社会に害をもたらす危険な存在へと変貌してしまうのか。そして、私たちは権威とどのように向き合うべきなのか。

■ 論証1: なぜなぜ分析

 人々が権威に服従する表面的な理由(思考の効率化)から、その背景にある社会構造(情報過多)、そして権威が暴走するメカニズム(情報の非対称性の悪用)へと、原因を段階的に掘り下げることで、問題の根源を構造的に解明するために選択しました。

(論証A) なぜ人は権威に服従してしまうのか?

 複雑な事柄について、自ら判断する手間を省きたいという認知的な効率性を求めるから。また、権威に従うことで、集団からの逸脱を避け、安心感を得たいという社会的な同調圧力が働くから。

(論証B) なぜ人は思考の手間を省きたがるのか?

 現代社会が情報過多であり、すべての事柄について専門的な知識を持って判断を下すことが事実上不可能だから。そのため、専門家や組織といった「権威」の判断を、思考のショートカットとして利用するようになる。

(論証C) なぜ権威への服従が問題化するのか?

 権威が、その地位や専門性を悪用し、自らの利益のために情報を操作したり、不都合な事実を隠蔽したりすることがあるから。人々が権威を無条件に信じ込むと、その欺瞞を見抜けず、社会全体が誤った方向へ導かれる危険性が生まれる。

■ 論証2: 演繹法

 「健全な権威」とは何か、という判断基準(ルール)を自ら定義し、その基準に具体例を当てはめて評価するというプロセスを示すことで、客観的で論理的な思考力をアピールできると考えました。

ルールを定立する

 ここでは、「健全な権威」を「その主張が公開された情報と論理に基づいており、常に他者からの批判や検証を受け入れる透明性を持つもの」と定義する。

具体例を紹介する

 たとえば、ある政府機関が「この食品は科学的根拠に基づき安全である」と発表したとする。一方で、一部の科学者からはその安全性に疑問を呈する声が上がっている。

具体例をルールに当てはめる

 ここで、上記の「健全な権威」の定義に当てはめると、政府機関の発表が健全な権威として信頼できるか否かは、その判断の根拠となった科学的データが公開されているか、そして反対意見を持つ科学者との公開討論など、他者からの検証を受け入れる姿勢があるかによって判断されるべきである、と言える。データの公開を拒んだり、反論を無視したりするならば、その権威は健全とは言えない。

■ 結論

  論証で明らかにした「権威の危うさ」に対し、「批判的検証」と「健全な懐疑主義」を解決の方向性として提示することが着眼点です。そして、その実践者として「ジャーナリスト」と「市民」という二つの主体を挙げ、それぞれの具体的な行動(検証ジャーナリズム、メディアリテラシー)に言及することで、社会全体で取り組むべき課題として結論をまとめています。

(Cから導かれる結論)

 権威がもたらす弊害の根源には、情報過多の社会で思考停止に陥りやすい人間の性質と、権威そのものが持つ腐敗の可能性がある。したがって、私たちは権威を完全に否定するのではなく、その主張を鵜呑みにすることなく、常に批判的な視点からその妥当性を検証する姿勢を持つべきである。

(その根拠)

 なぜなら、権威とは固定的なものではなく、その時々の言動によって信頼性が揺らぐ相対的なものだからだ。権威の主張を無条件に受け入れることは、自らの思考を放棄し、権威の奴隷となることに等しい。健全な市民社会は、権威に対する健全な懐疑主義によって支えられる。

(その具体例)

 例えば、著名な学者が新しい学説を発表した際、その学者の「権威」だけで内容を信じるのではなく、論文で示されたデータや論理に矛盾がないか、他の専門家はどのような評価をしているかなどを多角的に調べる態度が求められる。また、ジャーナリストは、政府や大企業の発表をそのまま報道する「発表ジャーナリズム」に陥らず、その情報の裏付けを取り、異なる視点からの意見を併記する「検証ジャーナリズム」を実践することが、権威の監視役としての重要な責務である。

問1【解答】(941字)

 「権威」とは、社会秩序を維持し、専門的知識を伝達するうえで不可欠な力である。私たちは医師や科学者、政府といった権威を信頼することで、複雑な社会を効率的に生きている。しかし同時に、権威への盲目的な服従は、私たちの思考を停止させ、社会全体を深刻な危機へ導く危険も孕む。この両刃の剣のような権威と、私たちはどのように向き合うべきなのだろうか。
 まず、人々が権威に従う背景には、情報過多の現代社会における認知的効率性の追求がある。毎日膨大な情報が押し寄せる中、全てを自分で調べ判断することは不可能であり、多くの人は専門家や組織の判断を「思考の近道」として頼る。これは現代社会に適応するための合理的な戦略と言える。しかし、この効率化が常態化し、権威の発言を無条件に受け入れるようになれば、私たちは容易に思考停止へ陥る。思考を手放した瞬間、権威はその正当性とは無関係に暴走し、社会に深刻な影響を及ぼしうる。
 次に、健全な権威とそうでない権威を見分ける基準について考えたい。本稿では「健全な権威」を、「公開されたデータと論理に基づき、批判や検証を受け入れる透明性を備えたもの」と定義する。例えば、政府が政策の正当性を主張する際、根拠データを公開し、反対意見を持つ専門家との議論に応じるならば、その権威は健全性が高いと判断できる。逆に、データの公開を拒み、「専門家が言うのだから正しい」といった形で異論を封じる場合、その権威は腐敗の兆候を示している。権威の正当性は肩書ではなく、透明性と説明責任、そして批判を受け入れる姿勢によってこそ担保されるのである。
 以上の考察から、私たちは権威を全面的に否定するのではなく、常に健全な疑いの目を向ける姿勢を持つべきだと結論する。権威の主張を思考の出発点とはしても、最終判断を丸ごと委ねてはならない。ジャーナリストであれば、政府や企業の発表を無批判に報じるのではなく、裏付けをとり異なる視点を提示する検証ジャーナリズムを徹底する必要がある。市民もまた、専門家の肩書に惑わされず、主張の論理性や根拠の妥当性を自ら吟味する批判的リテラシーを身につけなければならない。権威を尊重しつつも監視を怠らない主体的姿勢こそ、現代社会を生きる私たちに不可欠な態度なのである。

問2【解説】

ステップ1.

 提示された8つの語句から、説明する4つを選択する。政治、経済、社会、文化など、多様なジャンルから選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2【解答】

沖縄県知事 (58字)

沖縄県の行政の長。米軍基地問題への対応が、日本政府との関係において常に大きな政治的争点となる、特別な役割を持つ知事。

築地市場 (56字)

東京都中央区にあった公設卸売市場。老朽化やアスベスト問題から豊洲への移転が計画されたが、土壌汚染問題で混乱した。

ソフトバンク (60字)

日本の大手通信事業者であり、世界的な投資会社。ビジョン・ファンドを通じ、AI等最先端技術を持つ多くの企業に投資している。

水俣病 (56字)

熊本県水俣湾周辺で、工場排水に含まれたメチル水銀を摂取した住民に発生した公害病。日本の四大公害病の一つとされる。

問3【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3【解答】

  1. ユウシュウ→有終
  2. ジンリョク→尽力
  3. スキマ→隙間
  4. タンセイ→丹精
  5. チョウヨウ→重用
  6. ケンインヤク→牽引役
  7. コンポウ→梱包
  8. シツヨウ→執拗
  9. シイテキウンヨウ→恣意的
  10. ヒヘイ→疲弊
  11. 魅力→みりょく
  12. 臨機応変→りんきおうへん
  13. 欧米→おうべい
  14. 移設先→いせつ
  15. 医療→いりょう
  16. 屈辱的→くつじょくてき
  17. 収穫→しゅうかく
  18. 勇退→ゆうたい
  19. 優生保護法→ゆうせいほごほう
  20. 拝金主義→はいきんしゅぎ

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