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上智大学 文学部 新聞学科 帰国生入試 2020年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、デモを「市民の正当な権利」という建前と、「社会の混乱を招く迷惑行為」という本音の対立として捉えることが着眼点です。この理想と現実のギャップを提示することで、なぜ日本ではデモが機能しにくいのか、という問題意識を明確にします。

(共通の前提)

 デモ(デモンストレーション)とは、特定の意思や主張を公に示すために、人々が集まって行進や集会などを行う集団的行動である。民主主義社会において、言論の自由や集会の自由を体現する、市民の基本的な権利の一つとして認識されている。

(議論の論点)

 デモは、選挙で選ばれた代表者を通じての意思表示だけでは届かない、民衆の切実な声を為政者に直接届けるための重要な政治参加の手段である。しかしその一方で、一部のデモが暴徒化したり、交通を麻痺させたりすることで、社会の混乱を招く「迷惑行為」と見なされることもある。市民の正当な権利としてのデモと、社会秩序を乱す集団行動としてのデモ、その境界線はどこにあるのかが論点となる。

■ 問題発見

 ここでは、デモを「市民の正当な権利」という建前と、「社会の混乱を招く迷惑行為」という本音の対立として捉えることが着眼点です。この理想と現実のギャップを提示することで、なぜ日本ではデモが機能しにくいのか、という問題意識を明確にします。

(問題の発見)

 民主主義社会における市民の正当な権利であるはずのデモが、なぜ日本では一部の人々から「過激」「迷惑」といったネガティブなイメージで見られがちで、政治的な影響力を持ちにくいのか。その社会的・心理的背景は何か。

■ 論証1: なぜなぜ分析

 デモへのネガティブなイメージ(表層)→メディアの報道姿勢(中間)→日本社会の同調圧力や歴史的背景(根源)というように、問題を段階的に掘り下げることで、単なる印象論ではない、構造的な原因分析ができると考えました。

(論証A) なぜ日本のデモはネガティブなイメージを持たれやすいのか?

 過去の学生運動などにおける過激なイメージが強く残っていることに加え、メディアがデモの主張内容よりも、交通渋滞や一部の過激な参加者の姿を強調して報道する傾向があるから。

(論証B) なぜメディアはそのような報道傾向を持つのか?

 「和」を重んじ、社会秩序の維持を優先する日本社会の同調圧力が、メディアの側にも無意識に働いているから。また、デモの背景にある複雑な社会問題を深く掘り下げるよりも、混乱や対立といった分かりやすい絵の方が、視聴率や注目を集めやすいという商業的な事情もあるから。

(論証C) なぜ日本社会は「和」や同調圧力を重んじるのか?

 島国という地理的条件や、村落共同体を基盤としてきた歴史的背景から、集団の調和を個人の主張よりも優先する文化が形成されてきたから。異質な意見や対立を「悪」と見なし、波風を立てることを嫌う国民性が、デモのような直接的な異議申し立てに対する心理的な抵抗感の根源となっている。

■ 論証2: 言い分方式

 デモを実践する「参加者」と、それを迷惑だと感じる「無関心な市民」という、現代日本で典型的な対立構造を提示しました。さらに「ジャーナリスト」を仲裁者として登場させ、メディアの果たすべき役割を論じることで、新聞学科の小論文として適切な視点を盛り込んでいます。

利害関係者A(デモ参加者)の主張

 「たしかに、デモは多少の混乱を生むかもしれない。しかし、選挙だけでは私たちの声は政治に届かない。政府が民意を無視し続けるのであれば、私たちに残された数少ない、そして最も重要な意思表示の手段がデモなのだ」

根拠:

 「デモは、憲法で保障された表現の自由、集会の自由の具体的な行使であり、民主主義が健全に機能している証だからだ。」

利害関係者B(デモに無関心な市民)の主張

 「しかし、休日に道路を占拠され、大音量で主張を叫ばれるのは正直迷惑だ。それに、デモで政治が変わるとは思えない。過激な人たちが騒いでいるだけで、自分たちの生活とは関係ない」

根拠:

 「政治への不満は、次の選挙で投票するという形で示すべきであり、社会に混乱をもたらすやり方は支持できないからだ。」

仲裁者C(ジャーナリスト)の主張

 「よって、デモの主催者は、その主張の正当性を社会に広く訴え、共感を得るための創造的な工夫を凝らす必要がある。同時に、メディアは、デモを単なる『騒ぎ』としてではなく、その背景にある社会的な課題や参加者の切実な思いを多角的に報道する責任がある」

根拠:

 「デモが社会的な影響力を持つか否かは、その主張が一部の過激な人々の声ではなく、多くの市民が共有しうる普遍的な問題意識を代弁していると認識されるかどうかにかかっているからだ。」

■ 結論

 論証で明らかにした「共感の欠如」という課題に対し、「主催者の工夫」「メディアの報道姿勢」「市民の成熟」という三つの主体それぞれが取り組むべき変革を、具体的な解決策として提示することが着眼点です。香港のデモという時事的な事例を挙げることで、主張に具体性と説得力を持たせています。 

(Cから導かれる結論)

 日本においてデモが有効な政治参加の手段として定着するためには、デモに対する社会の認識を変える必要がある。そのためには、主催者側は共感を呼ぶための戦略的な工夫を凝らし、メディアはデモの多面的な意義を報じる努力を重ね、そして市民一人ひとりがデモを民主主義の重要な機能として理解する成熟が求められる。

(その根拠)

 なぜなら、デモの価値は、参加者の数や声の大きさだけで決まるのではなく、その主張がいかに社会の共感を呼び、世論を形成していくかにかかっているからだ。同調圧力が強い日本社会において、デモへの無関心や冷笑を乗り越えるためには、粘り強い対話と創造的なコミュニケーションが不可欠である。

(その具体例)

 例えば、香港の若者たちが見せたような、アートやユーモアを取り入れた創造的なデモは、暴力的なイメージを払拭し、国際社会の幅広い共感を得ることに成功した。また、メディアは、デモの参加者一人ひとりにマイクを向け、なぜ彼らが声を上げるに至ったのか、その個人的な物語を丹念に伝えることで、デモを「自分ごと」として視聴者に感じさせることができるだろう。

問1【解答】(935字)

 デモは、民主主義社会における市民の正当な権利である。しかし日本では、「過激」「迷惑」といった否定的なイメージが根強く、政治的影響力を持ちにくいのが実情だ。選挙以外の方法で民意を政治に反映させるはずのデモが、なぜ広く共感を得られないのか。本稿では、その背景にある社会構造を分析し、デモが健全な政治参加として機能する条件を考察する。
 まず、デモが敬遠される根本には、集団の「和」を個人の主張より重んじる日本特有の文化がある。歴史的に村落共同体を基盤としてきた日本では、異質な意見や対立を「悪」と見なし、波風を立てる行為を避ける同調圧力が強く働く。この文化において、街頭での異議申し立ては秩序を乱す「わがまま」な行動と映りやすい。結果、市民の間には「どうせ政治は変わらない」という冷笑的態度が生まれ、デモとの心理的距離を広げている。こうした無意識の抵抗感は、デモを社会的に孤立させる主要因となっている。
 次に、メディアの報道のあり方も、デモへの否定的イメージを再生産している。多くの報道は、参加者の主張よりも交通渋滞や一部の過激な参加者の行動を強調し、「混乱」をセンセーショナルに切り取る傾向がある。複雑な社会問題を丁寧に説明するより、分かりやすい対立構図の方が視聴者を惹きつけやすいという商業主義的事情が背後にあるためである。その結果、デモ=迷惑行為というステレオタイプが強化され、多くの市民はデモの本来の意義に触れることなく、表面的な印象だけで判断してしまう。
 以上の考察から、日本でデモが本来の力を取り戻すには、主催者・メディア・市民という三者の意識変革が不可欠であると結論できる。第一に、デモの主催者は、不満を訴えるだけでなく、多くの人が共感できる創造的な表現を取り入れる努力が求められる。アートやユーモアを活用し、暴力的な印象を払拭した香港のデモは好例である。第二に、メディアは、デモを単なる「騒ぎ」として消費せず、なぜ市民が声を上げたのか、その背景の社会課題を丹念に伝える責任を負う。そして最後に、市民はデモを民主主義を支える重要な政治参加の一形態として認識し、その主張に耳を傾ける成熟した姿勢を持つべきだ。デモとは、社会の健全性を測るリトマス試験紙なのである。

問2【解説】

ステップ1.

 提示された8つの語句から、説明する4つを選択する。国際情勢や国内の社会・法制度に関する重要語句を選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2【解答】

商業捕鯨 (52字)

国際捕鯨委員会から脱退した日本が、自国の排他的経済水域内で再開した、商業目的の捕鯨。国際的な批判もある。

ジャマル・カショギ (58字)

サウジアラビア政府を批判してきた同国出身のジャーナリスト。トルコのサウジ総領事館内で殺害され、政府の関与が疑われた。

逃亡犯条例 (59字)

香港で被疑者を中国本土に引き渡せるようにする条例改正案。香港の司法の独立が脅かされるとして、大規模な反対デモが起きた。

フードバンク (58字)

品質に問題はないが、市場で流通できなくなった食品を寄贈され、福祉施設や生活困窮者に無償で提供する活動、及びその団体。

問3【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ3.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3【解答】

  1. ホンヤクカ→翻訳家
  2. シタヅツミ→舌鼓
  3. コクジ→酷似
  4. ハキ→覇気
  5. リョウフウ→涼風
  6. キゼン→毅然
  7. コウバイ→購買
  8. キャッコウ→脚光
  9. コウジ→公示
  10. オクソク→憶測
  11. 憚られた→はばかられた
  12. 間隙→かんげき
  13. 慙愧→ざんき
  14. 酷い→ひどいお
  15. 辛辣→しんらつ
  16. 揶揄→やゆ
  17. 覆る→くつがえる
  18. 排泄→はいせつ
  19. 俎上→そじょう
  20. 余韻→よいん

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