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上智大学 文学部 新聞学科 編入生試験 2021年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、「公平」と「公正」という似て非なる二つの概念を、明確に定義し、区別することが着眼点です。「公平=機会の均等」「公正=実質的な平等の実現」という対比を冒頭で示すことで、小論文全体の論理的な骨格を明確にします。

(共通の前提)

 「公平」と「公正」は、いずれも偏りがなく、正しい状態を目指すという点で共通する価値概念である。しかし、両者は似て非なる概念であり、「公平」が主に機会や手続きの均等性を指すのに対し、「公正」は、個人の事情や背景を考慮し、実質的な平等の実現を目指す、より広い概念を含む。

(議論の論点)

 現代社会では、すべての人に同じ機会を与える「公平」なルールを設けるだけでは、かえって格差が拡大・固定化してしまうという問題が指摘されている。例えば、誰もが同じ試験を受けられるのは「公平」だが、裕福な家庭の子どもとそうでない子どもとでは、塾に通えるなど、そもそもスタートラインが異なる。この形式的な「公平」の限界を乗り越え、実質的な平等を達成するための「公正」な社会をいかに実現するか、その具体的な方法論が論点となる。

■ 問題発見

 「『公平』な社会を目指したはずが、なぜ『格差社会』になったのか?」という、現代社会が直面する根本的なパラドックスを問いとして立てます。そして、それを乗り越える「公正な社会の構築」を論題とすることで、現状批判から未来への提言へと議論を導きます。

(問題の発見)

 機会の均等という「公平」な社会を目指してきたはずの現代社会が、なぜ結果として深刻な格差社会をもたらしてしまったのか。そして、この「公平」の罠を乗り越え、誰もがその能力を最大限に発揮できる、真に「公正」な社会を構築するために、私たちはどのような制度設計を行うべきか。

■ 論証1: 演繹法

 まず「公正」とは何か、という抽象的な定義(ルール)を自ら設定し、そのルールに企業の採用活動という具体例を当てはめて、その活動が「公正」か否かを判断する、という論理展開を行いました。これにより、客観的で分析的な思考能力を示すことを狙っています。

ルールを定立する

 ここでは、「公正」を「社会の構成員が、その生まれや環境に関わらず、人間らしい生活を送り、自己実現の機会を得られるよう、社会が積極的に介入し、調整を行うこと」と定義する。

具体例を紹介する

 たとえば、ある企業が、採用試験をすべての応募者に「公平」に実施しているとする。しかし、結果として採用されるのは、有名大学の卒業生や、都市部出身者に偏っている。

具体例をルールに当てはめる

 ここで、上記の「公正」の定義に当てはめると、この企業の採用活動は「公平」ではあっても「公正」ではない、と言える。なぜなら、地方出身者や、経済的な理由で高等教育を受けられなかった人々が、構造的に不利な状況に置かれている可能性を考慮せず、結果として格差の再生産に加担しているからだ。真に「公正」な採用を目指すなら、多様な背景を持つ人材を積極的に採用する「アファーマティブ・アクション」のような、より積極的な介入が必要となる。

■ 論証2: 言い分方式

 「公平な機会」を重視する「自由競争主義者」と、「公正な結果」を求める「リベラリスト」という、現代の政治思想における典型的な対立軸を提示しました。その上で、両者のバランスを取る「仲裁者」の視点を加えることで、多角的で現実的な議論へと深めています。

利害関係者A(機会の平等を重んじる自由競争主義者)の主張

 「たしかに格差は問題だが、結果の平等を求め、特定の層を優遇するような『公正』は、逆差別を生む危険な思想だ。重要なのは、誰もが同じルールで競争できる『公平』な機会を保障することであり、その結果生じる差は、個人の努力や能力の違いによるものとして受け入れるべきだ」

根拠:

 「国家が過度に介入し、結果の平等を追求すれば、人々の努力する意欲を削ぎ、社会全体の活力が失われてしまうからだ。」

利害関係者B(社会正義を重んじるリベラリスト)の主張

 「しかし、そもそもスタートラインが異なる競争は『公平』とは言えない。親の経済力や出身地といった、本人の努力ではどうにもならない要因で人生が左右される社会は、決して『公正』ではない。社会には、その不平等を是正する責任がある」

根拠:

 「個人の能力が最大限に発揮されることは、社会全体の利益にも繋がる。機会の均等を実質的なものにするための、教育や福祉への公的な投資こそが、持続可能な社会の基盤となるからだ。」

仲裁者C(政治哲学者)の主張

 「よって、我々が目指すべきは、機会の『公平』と結果の『公正』を対立するものとしてではなく、両者のバランスを取る社会である。自由な競争を尊重しつつも、敗者が再挑戦できるセーフティネットを張り巡らせ、格差が固定化しないように、常に社会制度を見直していく必要がある」

根拠:

 「完全な機会の平等も、完全な結果の平等も、現実には存在しない。重要なのは、両者の緊張関係の中で、より公正な社会を目指し続ける、不断の民主的なプロセスそのものだからである。」

■ 結論

 論証で示した「公平の限界」と「公正の必要性」を受け、「教育」と「社会保障(セーフティネット)」という二つの領域における積極的な公的介入を、具体的な解決策として提示することが着眼点です。これにより、単なる理念の提示に終わらず、具体的な政策提言として、小論文全体の説得力を高めています。

(Cから導かれる結論)

 「公平」な機会均等だけでは、現代社会の格差問題は解決できない。個人の努力では乗り越えられない構造的な不平等を是正し、実質的な機会の平等を保障する「公正」な社会の実現に向け、教育や社会保障制度への積極的な公的介入が不可欠である。

(その根拠)

 なぜなら、人の成功や失敗は、個人の能力や努力だけで決まるのではなく、その人が置かれた社会経済的な環境に大きく左右されるからだ。すべての人が、その生まれ育った環境に関わらず、尊厳を持って生き、挑戦できる社会を構築することこそ、現代における「正義」の核心である。

(その具体例)

 例えば、親の所得に関わらず、すべての子どもが高い水準の教育を受けられるよう、公教育への投資を抜本的に強化し、給付型奨学金を拡充することが考えられる。また、一度失敗しても、職業訓練や生活支援を通じて何度でもやり直せるセーフティネットを社会全体で構築することも、公正な社会の実現に向けた重要な一歩となる。

問1【解答】(991字)

 「公平」と「公正」。この二つの言葉はしばしば同義として語られるが、その内実には大きな隔たりがある。すべての人に同じルールと機会を与える「公平」は、近代社会が掲げてきた理想であった。しかし、その「公平」な競争の果てに、私たちは深刻な格差社会という現実に直面している。本稿では、「公平」の理念が抱える構造的な罠を分析し、それを乗り越える「公正」な社会のあり方を考察する。
 まず、現代社会における「公平」が、いかに格差の再生産に加担しているかを直視する必要がある。たとえば入学試験は、すべての受験生に同じ問題を課す点で、形式的には極めて「公平」な制度に見える。しかし、その競争の背景には、裕福な家庭で育ち、幼い頃から塾や家庭教師といった教育資本を十分に投下される子どもと、そうでない子どもの間の、明白なスタートラインの差が横たわっている。同じルールで競争させれば、準備の整った者が勝つのは当然であり、この「公平」は既存の格差を追認し、固定化する装置として機能してしまう危険性を常に孕んでいるのである。
 それでは、この「公平」の限界を乗り越える「公正」とは何か。それは、単に機会を均等にするだけでなく、人々が置かれた状況や背景の違いにまで踏み込み、実質的な平等を実現しようとする理念である。生まれ育った環境によって教育の機会が奪われないよう、公教育を充実させること。病気や失業によって人生の道を外れても、再び立ち上がれるセーフティネットを整備すること。これらは結果の平等を強制する社会主義とは異なり、努力や才能が適切に報われる「実質的な機会の平等」を生み出すための社会的投資である。
 以上の考察から、私たちが目指すべき社会とは、「公平」な競争を尊重しつつ、その競争が公正な条件のもとで行われるよう、社会が積極的に介入する社会であると結論できる。自由競争は社会の活力を生み出す重要な原動力だが、同時に格差を拡大し、弱者を切り捨てる危険性も併せ持つ。その暴走を防ぐためにも、教育や社会保障といったセーフティネットを社会全体で支え、格差の固定化を防止することが不可欠である。親の経済力や出身地といった、本人の選択し得ない要因で人生の大半が決まってしまう社会は、もはや「公正」とは言えない。すべての子どもが自らの可能性を信じて挑戦できる社会を築くことこそ、私たちの世代に課せられた使命なのである。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された7つの語句から、説明する4つを選択する。近年の国内政治や行政の動きに関する重要なキーワードを選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2 【解答】

文春砲 (54字)

週刊文春が、政治家や芸能人のスキャンダルをスクープし、大きな社会的影響を与えていた状況を、大砲に喩えた俗語。

公文書管理問題 (60字)

森友・加計学園問題や「桜を見る会」問題等で行政機関による公文書の改ざん等が相次いで発覚し、民主主義の根幹が問われた問題。

デジタル庁 (57字)

日本政府の行政のデジタル化を強力に推進するため、2021年に設置された省庁。各省庁への勧告権など、強い権限を持つ。

日本学術会議 (57字)

政府から独立して政策提言などを行う日本の科学者の代表機関。2020年に政府による会員候補の任命拒否が問題となった。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.  

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3 【解答】

  1. ケイキョウカン→景況感
  2. ニチギンタンカン→日銀短観
  3. ジュヨウカンキ→需要喚起
  4. フガク→富岳
  5. ヤタイボネ→屋台骨
  6. コウチョウカイ→公聴会
  7. スイチュウリチャクリク→水中離着陸
  8. シガイチ→市街地
  9. リンショウ→臨床
  10. ダイショウ→代償
  11. 絶滅危惧→ぜつめつきぐ
  12. 臨海部→りんかいぶ
  13. 底打ち→そこうち
  14. 緩めず→ゆるめず
  15. 駆使→くし
  16. 満蒙→まんもう
  17. 戸惑う→とまどう
  18. 後手→ごて
  19. 装い→よそおい
  20. 跡地→あとち

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