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上智大学 文学部 新聞学科 帰国生入試 2021年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、コロナ禍の「マスク」を、単なる衛生用品としてではなく、「公衆衛生上の対策」という科学的側面と、「個人の自由を巡る政治的対立のシンボル」という社会・文化的側面の両方から捉えることが着眼点です。この二面性を提示することで、問題の複雑さを冒頭で明確にします。

(共通の前提)

 マスクは、ウイルスなどの飛沫拡散を防ぐための衛生用品である。特にコロナ禍において、その着用は世界中で感染対策の基本的な手段として普及した。

(議論の論点)

 マスクの着用は、自他を守るための科学的根拠に基づいた公衆衛生上の対策であり、社会の一員としての責任ある行動である、という見方がある。しかしその一方で、特に欧米社会などでは、マスク着用が個人の自由を侵害する国家による強制であり、非科学的なものであるとして、激しい政治的対立のシンボルとなった。科学的な「事実」と、個人の「信条」や「自由」という価値観が衝突している点が論点となる。

■ 問題発見

 「なぜただの布であるマスクが、国によって『連帯の象徴』になったり、『政治対立の最前線』になったりするのか?」という、具体的な現象の背後にある、より本質的な問いを立てます。これにより、小論文が、現代社会における価値観の対立構造を解明するものであることを示します。

(問題の発見)

 単なる衛生用品であるはずのマスクが、なぜ国や文化によって、社会の連帯の象徴となったり、あるいは個人の自由を巡る政治的対立の最前線となったりするのか。この一枚の布が、現代社会のどのような価値観の対立を浮き彫りにしたのか。

■ 論証1: 言い分方式

 マスク着用を推進する「公衆衛生の専門家」と、それに反対する「市民」という、コロナ禍で実際に見られた典型的な対立構造を提示しました。さらに、「文化人類学者」という仲裁者の視点を導入することで、対立の根源が科学的な正しさだけではなく、歴史的・文化的な背景にあることを示し、議論に深みを与えています。

利害関係者A(公衆衛生の専門家)の主張

 「たしかに、マスクの有効性について様々な議論はある。しかし、飛沫の拡散を物理的に抑制するという科学的データは明確であり、誰もが安価に実践できる最も効果的な感染対策の一つであることは間違いない。社会全体の利益を考えれば、個人の多少の不快感は許容されるべきだ」

根拠:

 「パンデミックという公衆衛生の危機においては、個人の権利も一定の制約を受けるのはやむを得ず、社会全体の安全を最大化する合理的な行動が求められるからだ。」

利害関係者B(マスク着用反対派の市民)の主張

 「しかし、マスク着用を政府が強制することは、自らの身体について自ら決定するという、個人の基本的な自由を侵害する行為だ。その効果にも疑問があり、非科学的な同調圧力に屈するわけにはいかない。これは、国家による過剰な管理社会への第一歩だ」

根拠:

 「個人の自由は、たとえ公共の利益のためであっても、安易に譲り渡すべきではない、民主主義社会における最も重要な価値だからだ。」

仲裁者C(文化人類学者)の主張

 「よって、この対立の根源は、科学的な正しさだけでは説明できない。それぞれの社会が歴史的に培ってきた『個人』と『共同体』の関係性の違いを理解する必要がある」

根拠:

 「例えば、他者への配慮や和を重んじる日本では、マスクは『共同体を守る』ための連帯の象Cとなった。一方で、個人の自由と自己決定権を至上の価値とするアメリカのような社会では、マスクは『国家による自由への介入』の象徴と見なされた。この文化的背景の違いが、対立の根底にあるからだ。」

■ 論証2: 帰納法

 日本、アメリカ、スウェーデンという、マスクへの対応が異なった国々の具体例を比較することで、「人々の行動は、客観的な事実だけでなく、文化や価値観に大きく左右される」という法則性を導き出し、主張の説得力を高めるために採用しました。

例の列挙

 たとえば、日本では、多くの人々が政府の要請に自発的に従い、マスク着用が社会規範となった。一方、アメリカでは、マスク着用を巡って、客が店員に暴力を振るう事件や、政治家が着用を拒否するパフォーマンスが頻発した。さらに、スウェーデンでは、当初政府がマスク着用を推奨せず、個人の判断に委ねるという異なるアプローチが取られた。

法則性を導く

 このことから、パンデミックに対する人々の行動様式は、ウイルスの性質という客観的な要因だけでなく、それぞれの国が持つ文化的な価値観や、政府と市民の信頼関係によって大きく左右される、という法則性が見出せる。

■ 結論

 論証で明らかにした「価値観の対立」という問題の根源に対し、「一方的な押し付けではなく、対話と相互理解が不可欠」という、より高次の解決の方向性を提示することが着眼点です。その上で、「連帯の証」として訴えるコミュニケーションの工夫という具体例を挙げることで、単なる理想論ではない、実践的な提言として結論をまとめています。

(Cから導かれる結論)

 マスクを巡る対立は、単なる科学的な見解の相違ではなく、その背後にある「個人の自由」と「共同体の安全」という、近代社会が常に抱える価値観の対立が、パンデミックを機に先鋭化したものである。したがって、この問題を解決するためには、一方の価値観を押し付けるのではなく、両者の対話と、文化的な背景への相互理解が不可欠である。

(その根拠)

 なぜなら、マスク着用のような公衆衛生上の施策は、人々の自発的な協力なしには実効性を持ち得ないからだ。強制や同調圧力に頼るだけでは、必ず強い反発を生む。人々の行動変容を促すためには、科学的な根拠を丁寧に説明すると同時に、彼らが大切にする価値観に配慮し、対話を通じて合意形成を図る努力が求められる。

(その具体例)

 例えば、政府がマスク着用を要請する際、単に「専門家が言っているから」と説明するのではなく、マスクが自らのためだけでなく、重症化リスクの高い高齢者や医療従事者といった、社会の脆弱な人々を守るための「連帯の証」であると訴えるコミュニケーションが考えられる。これは、個人の自由を尊重しつつも、共同体への貢献という、より高次の価値に訴えかけるアプローチである。

問1【解答】(979字)

 コロナ禍を経て、私たちの日常に溶け込んだ「マスク」。それは飛沫を防ぐ衛生用品であると同時に、現代社会が抱える価値観の対立を映し出す鏡となった。一枚の布が、ある国では連帯の象徴となり、別の国では自由を巡る政治闘争の最前線と化したのはなぜか。本稿では、マスクが浮き彫りにした社会の分断構造を分析し、この経験から何を学ぶべきかを考える。
 まず、対立の根底には、「共同体の安全」と「個人の自由」という、近代社会が常に抱えてきた価値の衝突がある。公衆衛生の視点からすれば、マスク着用は科学的根拠に基づき、社会全体の利益のために誰もが実践すべき合理的行為である。しかし、個人の自己決定権を最優先する立場から見れば、国家による着用の要請は、たとえ善意に基づくものでも個人の自由を侵害する行為に映る。この対立は、単なる科学的意見の相違ではなく、国家と個人の関係性をどう捉えるかという、深い政治思想上の対立なのである。
 さらに、この対立は文化的背景によって異なる形をとった。「和」を重んじ、他者への配慮を美徳とする日本では、マスクは他人に感染させないための「思いやり」の表現として受け入れられ、比較的スムーズに社会規範となった。一方、個人の独立や自己責任を重視するアメリカでは、マスクは国家による自由への介入とみなされ、着用の有無が政治的立場を示す象徴にさえなった。このように、同じ対象でも文化というフィルターを通すことで、全く異なる意味を帯びるのである。
 以上の考察から明らかなのは、パンデミックのような危機に際し、科学的に正しいという理由だけでは人々を動かすことはできないということである。真の解決には、一方の価値観を他方に押し付けるのではなく、異なる立場の背景にある歴史的・文化的価値観への理解が不可欠だ。政府や専門家は、科学的根拠を丁寧に説明するだけでなく、人々がなぜ反発するのか、その理由を理解し、対話を通じて合意形成を図る努力を続ける必要がある。例えば、マスク着用を画一的な「義務」として課すのではなく、医療従事者や高齢者など脆弱な立場の人々を守るための「連帯の証」として訴えることは有効だろう。分断を越える鍵は、人々の不安や価値観に寄り添いながら共感を軸にしたコミュニケーションを築くことにある。マスクが不要になった世界においても、この教訓を忘れてはならない。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された7つの語句から、説明する4つを選択する。人権問題や労働問題、社会のあり方に関する重要なキーワードを選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2 【解答】

トランスジェンダー (55字)

出生時に割り当てられた性別と、自認する性別が一致しない人々のこと。性別移行を望む人以外にもあり方は多様である。

同一労働同一賃金 (57字)

同じ企業内で、正規雇用や非正規雇用といった雇用形態に関わらず、同じ仕事内容に、同額の賃金を支払うべきだとする原則。

ウイグル問題 (57字)

中国の新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の少数民族ウイグル族が強制収容や強制労働等を余儀なくされているとされる問題。

エッセンシャルワーカー (59字)

医療、介護、物流、小売など、社会の機能を維持するために不可欠な労働に従事する人々。コロナ禍でその重要性が再認識された。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3 【解答】

  1. シュンカン→瞬間
  2. シリメツレツ→支離滅裂
  3. ヒンシテイル→瀕している
  4. アンケン→案件
  5. ソウメイ→聡明
  6. アンテン→暗転
  7. ジュタク→受託
  8. バクロボン→暴露本
  9. カンポウシャゲキ→艦砲射撃
  10. ホショウ→補償
  11. 滑稽→こっけい
  12. 誤嚥→ごえん
  13. 巷間→こうかん
  14. 冤罪→えんざい
  15. 苛立った→いらだった
  16. 司る→つかさどる
  17. 疾病→しっぺい
  18. 嘔吐→おうと
  19. 三味線→しゃみせん
  20. 朴訥→ぼくとつ

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