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上智大学 文学部 新聞学科 編入生試験 2022年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、ノーベル賞報道を、受賞者の功績を伝え、科学への関心を高めるという「本来の役割」と、国籍にこだわり、メダル競争のように報じる「日本の報道の現実」との対比で捉えることが着眼点です。この理想と現実のギャップを提示することで、問題の所在を明確にします。

(共通の前提)

 ノーベル賞は、アルフレッド・ノーベルの遺言に基づき、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の各分野で「人類に最大の貢献をもたらした」人物に贈られる、世界で最も権威ある賞である。その発表は、世界中のメディアによって大きく報道される。

(議論の論点)

 ノーベル賞の報道は、受賞者の功績や、その分野の重要性を広く社会に伝え、科学や文化への関心を高めるという重要な役割を担っている。しかしその一方で、特に日本では、受賞者の国籍や、「日本人が受賞できるか」という点に報道が過度に集中し、本来伝えられるべき業績の内容やその社会的意義についての解説が疎かになっている、という批判がある。報道のあり方が、賞の権威と、国民の科学・文化リテラシーにどう影響するかが論点となる。

■ 問題発見

 「なぜ、知の栄誉であるノーベル賞の報道が、日本ではナショナルな『メダル獲得競争』のように矮小化されてしまうのか?」という、具体的な現象に対する根源的な問いを立てます。そして、「報道はどうあるべきか」という、ジャーナリズムの役割を問う本質的な論題へと繋げています。

(問題の発見)

 人類の知の地平を切り拓いた偉大な功績を称えるはずのノーベル賞の報道が、なぜ日本では、しばしばナショナルな「メダル獲得競争」のような矮小化された形で伝えられてしまうのか。そして、報道は、ノーベル賞という絶好の機会を、社会の知的関心を高めるために、どのように活用していくべきなのか。

■ 論証1: なぜなぜ分析

 報道が国籍にこだわる理由を、「視聴者の需要」→「国民の自信喪失」→「メディアの商業主義」というように、需要と供給、そして社会心理とメディアの構造へと、多角的に掘り下げるために選択しました。これにより、問題が単にメディアだけにあるのではない、という複雑な構造を示すことができます。

(論証A) なぜ日本の報道は「日本人受賞なるか」に集中するのか?

 多くの視聴者や読者が、複雑で難解な科学的業績そのものよりも、「日本人が世界で認められた」という分かりやすい物語を求めているから。メディアは、その需要に応える形で報道を構成する。

(論証B) なぜ人々は「日本人の活躍」という物語を求めるのか?

 長期的な経済停滞や国際社会における存在感の低下の中で、人々が国家的な自信を失っており、ノーベル賞のような国際的な栄誉に、国民としての一体感や誇りを回復したいという潜在的な欲求を抱いているから。

(論証C) なぜメディアはその需要に無批判に応えてしまうのか?

 視聴率やPV(ページビュー)といった短期的な指標を追求する商業主義が、メディアの報道姿勢を大きく規定しているから。時間をかけて受賞業績の意義を解説するよりも、「日本すごい」という感情に訴えかける方が、手軽に多くの注目を集めることができる。この構造が、報道の質の低下と、国民の知的好奇心をむしろ削ぐという悪循環を生んでいる。

■ 論証2: 帰納法

 「有力候補」という期待の煽り方、受賞を逃した際の「残念」という論調、会見での人柄中心の質問といった、日本のノーベル賞報道で繰り返し見られる具体的な「あるある」を列挙しました。これにより、主張が単なる憶測ではなく、多くの人が共有するであろう事実に基づいていることを示し、説得力を高めています。

例の列挙

 たとえば、毎年のノーベル賞シーズンになると、メディアは「有力候補」として特定の日本人研究者の名前を挙げ、期待を煽る。そして、受賞を逃すと「残念ながら受賞ならず」と、まるでスポーツの試合に負けたかのように報じる。また、受賞者の記者会見では、業績の内容よりも、その人柄や意外な趣味といった、本質とは関係のない側面に焦点が当てられがちである。

法則性を導く

 このことから、日本のノーベル賞報道は、科学的・文化的な功績を社会に還元するというジャーナリズム本来の役割よりも、ナショナリズムを煽り、人々を一時的に興奮させるエンターテインメントとしての性格を強く帯びている、という法則性が見出せる。

■ 結論

 論証で明らかにした「商業主義とナショナリズムによる報道の矮小化」という課題に対し、「ジャーナリズム本来の役割への回帰」を解決の方向性として提示します。その上で、「受賞業績の意義を粘り強く解説する」というメディアの具体的な行動変容を促し、特集番組の編成や、受賞を逃した研究者にも光を当てるといった提案をすることで、単なる精神論ではない、実践的な提言として結論をまとめています。

(Cから導かれる結論)

 ノーベル賞報道が、ナショナルなメダル競争という矮小なレベルに留まっている現状を乗り越えるためには、メディア自身が、短期的な商業主義から脱却し、受賞業績の持つ真の価値と、それが私たちの社会や未来にどう繋がるのかを、粘り強く解説するジャーナリズムの本来の役割に立ち返る必要がある。

(その根拠)

 なぜなら、ノーベル賞は、単なる個人の栄誉ではなく、人類の知の営みが到達した一つの画期を示す、社会全体の知的資産だからだ。その報道は、国民、特に次代を担う若者の科学や文化への関心を喚起し、社会全体の知的レベルを向上させるまたとない機会である。この機会を国威発揚の道具として浪費することは、社会的な損失に他ならない。

(その具体例)

 例えば、受賞者が発表された際、その国籍を速報するだけでなく、同時に、その研究がどのような歴史的文脈を持ち、私たちの生活や世界観をどのように変えうるのかを、CGや専門家の解説を交えて分かりやすく伝える特集番組を編成する。また、受賞を逃した研究者についても、その功績を称え、科学の探求が決して勝ち負けではないことを伝えるなど、報道に多角的な視点を取り入れることが考えられる。

問1【解答】(982字)

 毎年秋、ノーベル賞の受賞者が発表される季節になると、日本のメディアは一斉にお祭り騒ぎとなる。「日本人受賞なるか」。その一点に国民の関心は集約され、受賞が決まれば国中が祝賀ムードに包まれ、逃せば落胆の空気に覆われる。しかし、この熱狂の中で、私たちは最も大切な何かを見失ってはいないだろうか。本稿では、日本のノーベル賞報道が抱える構造的問題を分析し、報道が果たすべき本来の役割を考察する。
 まず、この報道が受賞者の国籍を過度に重視し、ナショナルなメダル競争のように矮小化される背景には、社会に広がる国家的自信の喪失がある。長期的な経済停滞の中で、多くの人々は国際社会における日本の存在感の低下を感じており、ノーベル賞という世界的権威に、かつての誇りを取り戻したいという集合的願望を投影する。メディアはこの欲求を敏感に察知し、「日本人が世界に認められた」という感情に訴える物語を供給することで、視聴率や販売部数を稼ごうとするのである。
 しかし、この姿勢は二つの深刻な弊害をもたらす。第一に、それはノーベル賞の本来の意義を著しく損なう。ノーベル賞とは、国籍を問わず、人類全体の知の発展に貢献した功績を称えるものであり、それを国別対抗の競技のように扱うことは理念への冒涜である。第二に、国民の知的好奇心を育む機会を失わせる。受賞業績の解説は後回しにされ、会見では研究内容よりも受賞者の人柄や私生活がしつこく問われる。これでは、科学や文学の魅力が社会に伝わるはずがない。
 以上の考察から、ノーベル賞という知的資産を真に社会へ還元するためには、メディアが商業主義と安易なナショナリズムから脱却し、ジャーナリズム本来の使命に立ち返ることが不可欠であると結論する。すなわち、受賞の興奮を伝えるだけでなく、その業績がどのような歴史的文脈を持ち、世界観や未来をどう変えうるのかを丁寧かつ分かりやすく解説する責任である。例えば、速報と同時に研究内容をCGで紹介する特集を組むこと。あるいは、受賞を逃した研究者にも光を当て、科学の営みが勝ち負けではないことを示すこと。このような多角的な報道こそ、ノーベル賞への関心を一過性の「祭り」から、未来の科学者を育む持続的な「知的投資」へと変える。報道の使命とは熱狂を煽ることではなく、社会を啓発することである。その原点を、今こそ思い起こすべきだ。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された8つの語句から、説明する4つを選択する。現代社会を理解する上で重要な、科学技術、法制度、社会・経済の新しい概念に関するキーワードを選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2 【解答】

データサイエンス (60字)

統計学や情報工学など、様々な学問分野を融合し、膨大なデータの中から、ビジネスや社会に有益な知見を引き出すための学問分野。

改正少年法 (57字)

選挙権の年齢引き下げに合わせ、18歳と19歳の犯罪者も起訴された場合の実名報道を可能にするなど、厳罰化が図られた。

ESG (53字)

環境、社会、企業統治の三つの要素を重視していく投資の考え方の一種。企業の持続的な成長性を測る指標とされる。

キャンセルカルチャー (60字)

SNSでの過去の不適切な言動などを理由に著名人などを社会的に排斥しようとする動き。行き過ぎた「私的制裁」との批判もある。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3 【解答】

  1. カクセイ→覚醒
  2. ショウネンバ→正念場
  3. イシン→維新
  4. ジュンコウ→巡航
  5. タンキュウシン→探求心
  6. エンメイ→延命
  7. ゴシュウギソウバ→ご祝儀相場
  8. ヒカク→非核
  9. チュウタイ→中台
  10. セイカン→生還
  11. 漆黒→しっこく
  12. 浪速→なにわ
  13. 駄菓子屋→だがしや
  14. 膨らむ→ふくらむ
  15. 真髄→しんずい
  16. 焦燥感→しょうそうかん
  17. 諸事万端→しょじばんたん
  18. 撲滅→ぼくめつ
  19. 現人神→あらひとがみ

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