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上智大学 文学部 新聞学科 編入生試験 2023年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、「審判」というテーマを、スポーツや裁判といった伝統的な「公的な審判」と、SNS上で横行する「私的な審判」という、現代的な問題の二つの側面から捉えることが着眼点です。特に後者に焦点を当てることで、今日的な社会問題への関心の高さを示します。

(共通の前提)

 「審判」とは、スポーツの試合や裁判など、特定のルールに基づき、物事の是非や優劣を判定する役割、及びその役割を担う個人を指す。その判断には、公平性、中立性、そして正確性が絶対的に求められる。

(議論の論点)

 理想として、「審判」は、感情や主観を排し、ルールにのみ基づいて、常に一貫した判断を下すべき存在である。しかし、現実には、人間である審判が誤審を犯したり、近年では、SNSなどを通じて、専門家でもない一般大衆が、他者を一方的に断罪する「私的な審判」が横行したりしている。絶対的な客観性という「理想」と、人間や社会が持つ「主観性や偏見」との間の緊張関係が論点となる。

■ 問題発見

 「なぜ、SNS上で誰もが他者を裁く『私的な審判』が横行するのか?」という、キャンセルカルチャーにも通じる、現代社会の病理を問います。そして、「どうすれば公正な判断が可能な社会を築けるか」という、規範的・未来志向の論題へと展開させています。

(問題の発見)

 AIによる判定技術が進化し、人間の審判の役割が問われる一方、SNS上では誰もが他者を裁く「審判」となり、集団的な断罪(キャンセルカルチャー)が頻発している。このような時代において、私たちは「審判」という行為の持つ権威と責任にどう向き合い、より公正な判断が可能な社会をいかにして構築すべきか。

■ 論証1: 演繹法

 まず「正当な審判とは何か」というルールを自ら定義し、その定義に「SNS上の断罪」という具体例を当てはめて、それが「私刑(リンチ)」に等しいと論理的に結論付けています。これにより、感情論ではない、冷静な分析能力をアピールしています。

ルールを定立する

 ここでは、「正当な審判」を「明確なルールに基づき、透明なプロセスを経て、説明責任を伴う判断を下すこと」と定義する。

具体例を紹介する

 たとえば、ある芸能人が過去の不適切な発言を理由に、SNS上で激しい批判を浴び、CM契約の打ち切りなどに追い込まれたとする。

具体例をルールに当てはめる

 ここで、上記の「正当な審判」の定義に当てはめると、このSNS上の断罪は、正当な審判とは言えない。なぜなら、そこには明確なルール(何年前の発言まで遡るのか等)がなく、反論の機会も与えられない不透明なプロセスで、誰も説明責任を負わないまま、制裁だけが加えられているからだ。これは、近代司法の原則を無視した「私刑(リンチ)」に近い。

■ 論証2: なぜなぜ分析

 「私的な審判」が横行する理由を、「人々の不満」(社会心理)→「分かりやすい悪役への欲求」(認知心理)→「SNSのアルゴリズム」(技術構造)というように、多角的に掘り下げることで、問題の根深さと複雑さを明らかにしています。

(論証A) なぜSNS上で「私的な審判」が横行するのか?

 人々が、社会の不正や不平等に対して強い不満を抱いており、その鬱憤を晴らすための、手軽で分かりやすい「悪役」を求めているから。また、匿名性という仮面に隠れて、他者を安全な場所から攻撃できるから。

(論証B) なぜ人々は「悪役」を求めるのか?

 現実社会が複雑化し、問題の所在や責任のありかが分かりにくくなっているから。その結果、個人に還元できる明確な「悪」を見つけ出し、それを断罪することで、万能感や、自分が「正義」の側にいるという安心感を得ようとする。

(論証C) なぜその行為が過激化するのか?

 SNSのアルゴリズムが、過激で感情的な言説ほど拡散されやすい構造になっているから(エコーチェンバー現象、サイバーカスケード)。「いいね」や同調のコメントによって、自らの「審判」が正当であると錯覚し、集団で攻撃することが正義であるかのように思い込んでしまう。

■ 結論

 論証で明らかにした「私刑の横行」という危機に対し、法規制という外面的な対策だけでなく、「一人ひとりの内なる審判(批判的思考力と倫理観)」という内面的な成熟を、本質的な解決策として提示することが着眼点です。教育やメディアの役割に具体的に言及することで、社会全体で取り組むべき課題として、提言に広がりと具体性を持たせています。

(Cから導かれる結論)

 現代社会における「審判」の危機は、AIに代替されるスポーツの審判の問題以上に、SNS上で誰もが他者を裁く「審判者」と化す、無責任な「私刑」の横行にある。この問題を克服するためには、法的な規制強化と同時に、私たち一人ひとりが、他者を安易に断罪する危険性を自覚し、自らの内に「内なる審判」、すなわち批判的思考力と倫理観を育むことが不可欠である。

(その根拠)

 なぜなら、SNS上の「私的な審判」は、反論の機会を保障せず、罪と罰のバランスを著しく欠いており、近代法治国家の根幹であるデュー・プロセス(適正な法手続き)の理念と相容れないからだ。このような「正義」の暴走は、社会の寛容性を失わせ、自由な言論を萎縮させる、極めて危険なものである。

(その具体例)

 例えば、教育の現場で、ある一つの情報に接した際に、すぐに結論を下すのではなく、その背景にある異なる立場や文脈を想像する訓練を行うことが考えられる。また、メディアは、SNSで炎上している人物について、その現象を煽るのではなく、なぜそのような事態に至ったのか、その構造的な問題を多角的に報じる責任がある。これにより、人々は、安易な善悪二元論から脱却し、より複雑な現実を理解する視点を養うことができる。

問1【解答】(971字)

 「審判」とは、ルールに基づき物事の是非を判断する、公平無私な存在であるはずだった。しかし現代社会において、その役割は二つの側面から揺らいでいる。一つは、AI技術の進化により、人間審判の意義が問い直されていること。もう一つは、SNSの普及によって、誰もが他者を裁く「審判」となり、集団的な断罪が横行しているという、より深刻な問題である。本稿では、特に後者の「私的な審判」の蔓延に焦点を当て、その危険性と、私たちが目指すべき社会の姿を考察する。
 まず、SNS上で「私的な審判」が頻発する理由を明らかにしたい。根底にあるのは、複雑化する社会で人々が抱える不満や不安である。責任が曖昧な構造的問題を前に、人々は手軽に断罪できる「悪役」を求め、匿名の仮面をかぶって安全な場所から石を投げる。さらに、SNSのアルゴリズムは、過激で感情的な言説ほど拡散しやすい構造を持つため、同調意見ばかりが表示される「エコーチェンバー現象」を生み出す。こうした環境のなかで、人々は自らの攻撃を「正義」と信じ込み、集団的ヒステリーの中で対象者を社会的に抹殺するまで止まらなくなる。
 しかし、この行為は近代法治国家が築いてきた原則を根底から覆す、危険な「私刑」にほかならない。「正当な審判」を、明確なルールに基づき、透明なプロセスを経て、説明責任を伴う判断と定義するならば、SNS上の断罪はそのいずれも満たさない。そこには、罪刑法定主義も、適正手続きも、反論の機会も存在しない。あるのは、感情的な熱狂と、誰も責任を負わない無責任な正義感だけである。こうした「正義」の暴走は、社会全体の寛容性を奪い、自由な言論を萎縮させ、息苦しい監視社会を生み出す。
 以上の考察から、この「誰もが審判者になる時代」の暴走を抑えるには、法規制の強化と同時に、私たち一人ひとりが他者を裁くことの傲慢さと危険性を自問する「内なる審判」を育てる必要がある。それは、一つの情報に触れた際、すぐに断罪するのではなく、背景の文脈や多様な立場を想像する姿勢である。またメディアは、炎上を煽るのではなく、なぜ人々が怒るのか、その社会的背景を掘り下げて報じる責任がある。安易な断罪に快感を覚えるのではなく、複雑な現実を複雑なまま受け止める知的な体力こそ、分断の時代に私たちが取り戻すべき「理性」の姿なのである。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された8つの語句から、説明する4つを選択する。社会問題や人権、新しい消費・文化の形を示すキーワードを選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2 【解答】

ウトロ地区 (56字)

京都府宇治市にある在日コリアン地区。劣悪な住環境やヘイトクライムなど、長年にわたり差別や人権問題に直面してきた。

フェムテック (59字)

女性と技術を組み合わせた造語。月経や妊娠、更年期など、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指す。

エシカル消費 (60字)

倫理的消費とも言う。人や社会、環境に配慮した製品やサービスを選んで消費すること。フェアトレード商品の購入などがその一例。

ポリティカルコレクトネス (57字)

人種、性別、宗教への差別や偏見を含まない中立的な表現を用いるべきだとする考え方。時に「言葉狩り」との批判も受ける。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3 【解答】

  1. トウジシャ→当事者
  2. テンカ→転嫁
  3. カイドク→解読
  4. ユウジ→有事
  5. リュウオウ→竜王
  6. イカン→移管
  7. ハクチュウ→伯仲
  8. チイキョウテイ→地位協定
  9. シンキイッテン→心機一転
  10. ナンチャクリク→軟着陸
  11. 板挟み→いたばさみ
  12. 叡智→えいち
  13. 一子相伝→いっしそうでん
  14. 仏頂面→ぶっちょうづら
  15. 権謀術策→けんぼうじゅっさく
  16. 勧奨→かんしょう
  17. 奪還→だっかん
  18. 河川敷→かせんじき
  19. 千載一遇→せんざいいちぐう
  20. 傍若無人→ぼうじゃくぶじん

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