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上智大学 文学部 新聞学科 外国人入試 2023年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、食糧問題を、単なる「食料不足」ではなく、「十分な食料があるにもかかわらず、8億人が飢える」という「生産と分配の不均衡」という、より構造的な矛盾として捉えることが着眼点です。このパラドックスを提示することで、問題の根深さと複雑さを示します。

(共通の前提)

 食糧問題とは、世界の食糧需給の不均衡によって生じる、飢餓、栄養失調、食料価格の高騰、食品ロス、食料安全保障など、食料を巡る様々な問題の総称である。地球の人口が増加し続ける一方で、気候変動や紛争などが、食料の安定供給を脅かしている。

(議論の論点)

 現代の食糧問題の最大の矛盾は、世界全体では全人類を養うのに十分な食料が生産されているにもかかわらず、8億人以上が飢餓に苦しんでいるという現実にある。一方で、先進国では大量の食品が廃棄されている(食品ロス)。この「生産と分配の不均衡」という構造的な問題が、食糧問題の核心的な論点である。

■ 問題発見

 「なぜ、食料は足りているのに、飢餓はなくならないのか?」という、食糧問題の核心を突く問いを立てます。これにより、単なる現象の説明ではなく、その背後にあるシステムの問題を解明するという、分析的な視点を明確にしています。

(問題の発見)

 世界では十分な食料が生産されているにもかかわらず、なぜ飢餓はなくならないのか。そして、食料の大量廃棄という不合理がまかり通っているのはなぜか。この巨大な矛盾を乗り越え、すべての人々が安定的に食料アクセスできる、持続可能な食料システムをいかにして構築できるか。

■ 論証2: なぜなぜ分析

 飢餓がなくならない理由を、「食料が商品だから」→「資本主義の論理」→「先進国消費者の無関心」というように、経済システムから、それを支える人々の意識へと掘り下げることで、問題が単なる経済問題ではなく、私たち自身の倫理観の問題でもあることを示すために選択しました。

(論証A) なぜ飢餓はなくならないのか?

 食料が、人々の生存に不可欠な「人権」としてではなく、国際市場で売買される「商品」として扱われているから。その結果、貧しい人々は、たとえ市場に食料が溢れていても、それを買うためのお金がなく、飢餓に陥る。

(論証B) なぜ食料は「商品」として扱われるのか?

 現代のグローバルな食料システムが、効率性と利益の最大化を追求する資本主義の論理によって支配されているから。食料の生産は、多国籍アグリビジネス企業によって寡占され、投機の対象にすらなっている。

(論証C) なぜそのようなシステムが維持されているのか?

 食料を安価に輸入できる先進国の消費者が、そのシステムの恩恵を受けているから。私たちが日常的に享受している安価で豊かな食生活は、途上国の農民の貧困や、食料価格の不安定化といった、システムの歪みの犠牲の上に成り立っているという側面がある。この構造的な問題に対する、先進国市民の無関心が、システムを温存させている。

■ 論証2: 言い分方式

 「安価な食料を求める先進国の消費者」と、「公正な取引を求める途上国の農家」という、グローバルな食料システムにおける典型的な南北の対立構造を提示しました。そこに「国連機関」という国際的な視点からの仲裁案を加えることで、問題解決の方向性を具体的に示しています。

利害関係者A(先進国の消費者)の主張

 「たしかに、食品ロスは問題だ。しかし、安全で、安価で、美味しいものをいつでも手に入れたいと願うのは、消費者の当然の権利だ。世界の飢餓問題も重要だが、まずは自分たちの生活が第一だ」

根拠:

 「個々の消費者が、複雑な国際食料システムの全体像を理解し、常に倫理的な消費を実践するのは、現実的に不可能だからだ。」

利害関係者B(途上国の小規模農家)の主張

 「しかし、あなたたちの『豊かな食生活』のために、我々は生活の糧である農地を奪われ、先進国向けの換金作物を安価で生産することを強いられている。気候変動の直撃を受け、収穫が不安定になっても、我々を守ってくれる仕組みはない」

根拠:

 「自由貿易の名の下に、巨大資本を持つ先進国のアグリビジネスと競争させられることは、あまりに不公正だ。我々には、自らの食料を自らで生産する権利(食料主権)が保障されるべきだからだ。」

仲裁者C(国際連合食糧農業機関・FAO)の主張

 「よって、食糧問題を解決するためには、先進国から途上国への一方的な食料援助だけでは不十分である。途上国自身が、持続可能な農業を発展させ、自国民の食料を確保できるよう、技術支援や公正な貿易ルールの構築といった、構造的な変革を目指すべきだ」

根拠:

 「飢餓の根本的な解決は、食料を『与える』ことではなく、人々が食料を『生み出す』力を取り戻すことにしか見出せないからである。」

■ 結論

 論証で明らかにした「食料の商品化」という根源的な課題に対し、「食料を公共財として捉え直す」という、価値観の転換を伴う本質的な解決策を提示します。その上で、「国際的なルール作り」「途上国の自立支援」「倫理的な消費」という、マクロからミクロに至る三つのレベルでの具体的な行動を挙げることで、提言に多角的な視点と実現可能性を与えています。

(Cから導かれる結論)

 食糧問題の根源には、食料を単なる「商品」とみなし、効率性と利益を優先する現代のグローバル資本主義のシステムそのものに内在する構造的矛盾がある。この問題を解決するためには、食料を人々の生存を支える「公共財」として捉え直し、効率性だけでなく、公平性や持続可能性を重視した食料システムへと、世界全体で移行していく必要がある。

(その根拠)

 なぜなら、食料へのアクセスは、すべての人権の基礎となる、最も基本的な権利だからだ。市場原理に委ねるだけでは、この権利をすべての人に保障することはできない。気候変動やパンデミックといった地球規模の危機が頻発する中で、食料の安定供給を市場の論理だけに委ねることの危険性は、もはや明らかである。

(その具体例)

 例えば、先進国では、フードバンク活動の支援や、食品ロスを削減するための法整備を強化する。国際的には、投機目的の穀物取引を規制し、途上国の小規模農家が、公正な価格で取引に参加できるようなフェアトレードの仕組みを普及させる。そして、私たち消費者一人ひとりが、自らの食事が世界の誰と繋がっているのかを想像し、倫理的な消費を心がけることも、巨大なシステムを変えるための一歩となる。

問1【解答】(957字)

 この地球上では、全人類を養うのに十分な食料が生産されている。それにもかかわらず、今も八億人以上の人々が飢餓に苦しみ、先進国では生産された食料の三分の一が廃棄されている。この「飽食の中の飢餓」という不条理な矛盾は、なぜ生まれるのか。本稿では、現代の食糧問題の根源にある構造的要因を分析し、その解決への道筋を探る。
 まず、食糧問題の核心には、食料が人々の生存を支える「人権」ではなく、利益を生む「商品」として扱われている現実がある。現代のグローバル食料システムは、効率性と利益最大化を至上目標とする資本主義の論理に貫かれている。その結果、食料は最も購買力の高い先進国の消費者へ流れ、貧しい人々は目の前に食料が存在しても金がないために飢餓から逃れられない。また、食料は国際市場で投機の対象ともなり、その価格は人々の命とは無関係に乱高下を繰り返す。
 さらに、この歪んだ構造は、先進国の私たちの無自覚な消費行動と無関心によって支えられている。私たちが享受する安価で豊かな食生活の背後では、途上国の農民が自らの耕作地を奪われ、先進国向けの換金作物を低賃金で栽培させられるという犠牲が存在する。また、日本における食品ロスの問題も深刻であり、見た目の規格からわずかに外れたというだけで大量の野菜が廃棄される。これは、生産者と消費者の断絶、そして食への感謝が失われた結果として生じた、現代社会の病理と言えよう。
 以上の考察から、この根深い食糧問題を解決するには、単なる食料援助といった対症療法だけでは不十分であり、食料を「商品」とみなす現在のグローバルシステムそのものを変革する必要があると結論できる。第一に、食料を人類の生存に不可欠な「公共財」と捉え直し、投機的取引を国際的に規制し、食料安全保障を市場変動から守る仕組みが求められる。第二に、途上国が援助に依存せず、自立的に持続可能な農業を発展させて食料主権を確立できるよう、先進国は技術支援や公正な貿易体制の構築に努めるべきである。そして最後に、消費者一人ひとりが、自らの食事が世界の誰とどのようにつながっているかを想像し、食品ロスの削減や生産者への正当な対価の支払いといった「倫理的な消費」を意識的に実践することが、巨大な食料システムを変えるための確かな第一歩となるだろう。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された8つの語句から、説明する4つを選択する。国際情勢、人権問題、社会の新しい概念など、ジャーナリズムで頻出する重要語句を選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2 【解答】

沖縄返還 (57字)

1972年、第二次大戦後アメリカの施政権下に置かれていた沖縄が日本に復帰したこと。ただし、広大な米軍基地は残った。

外国人技能実習生 (56字)

途上国への技術移転を目的とした日本の在留資格の一種だが、安価な労働力として扱われ、低賃金や人権侵害が深刻化する。

サイバーカスケード (60字)

SNSの閉鎖的なコミュニティ内で特定の情報や信念が反論なく繰り返されて、集団全体がより極端な思想へと先鋭化していく現象。

ボディリー・オートノミー (60字)

中絶や性に関する自己決定権のように、個人が自らの身体に関することを、他者からの強制や暴力なしに、自分自身で決定する権利。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3 【解答】

  1. カソカ→過疎化
  2. サクジョ→削除
  3. カクリ→隔離
  4. フガク→富岳
  5. コキャク→顧客
  6. ユウエツ→優越
  7. チケン→治験
  8. モンガイカン→門外漢
  9. リョウシ→量子
  10. センジョウ→洗浄
  11. 愛娘→まなむすめ
  12. 喧騒→けんそう
  13. 搾取→さくしゅ
  14. 抑止→よくし
  15. 隘路→あいろ
  16. 要衝→ようしょう
  17. 黎明→れいめい
  18. 芳醇→ほうじゅん
  19. 僥倖→ぎょうこう
  20. 脆弱→ぜいじゃく

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