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上智大学 総合人間科学部 心理学科 編入生試験 2019年 過去問解説

問1【解説】

 この形式の問題は、心理学の各分野における基本的な知識を問う「用語説明問題」です。

キーワードの抽出:

 各用語を説明する上で、欠かすことのできない最重要キーワードを特定します。(例:「フェヒナーの法則」なら「刺激強度」「感覚の強さ」「対数関係」など)

要素の絞り込み:

 詳細な背景や具体例は、最も的確なもの一つに絞るか、場合によっては省略し、中核的な「定義」と「機能・目的」を中心に記述します。

簡潔な文章構成:

 「〜ということ。」「〜を指す。」といった表現で文末を処理し、一文を短くすることで、文字数を効率的に使い、要点を明確に伝えます。

時間配分:

 試験全体(90分)を考慮し、【問1】全体は35分〜45分、1つの用語あたり4〜5分で記述するペースを意識することが重要です。

問1【解答】

(1)見当識 (orientation) (133字)

 現在の状況を正しく認識する基本的な精神機能であり、時間・場所・人物という3つの要素から構成される。意識レベルが清明であることを前提とし、認知症やせん妄といった脳の器質的障害や意識障害の有無を評価する際の重要な指標となる。この機能が障害された状態を見当識障害という。

(2)国際生活機能分類 (International Classification of Functioning, Disability and Health) (137字)

 WHOが採択した健康状態に関する分類法。障害を個人の問題とする医学モデルではなく、健康状態にある個人と環境因子等の背景因子との相互作用と捉える生物・心理・社会モデルに基づいている。人の生活機能を心身機能・身体構造、活動、参加の要素で包括的に記述するための国際的な共通言語。

(3)ケース・フォーミュレーション (case formulation) (122字)

 クライエントが抱える問題の発生・維持メカニズムを、心理学理論に基づき統合的に理解する仮説構築の作業。生育歴、生物・心理・社会的要因を考慮し、なぜ問題が生じているかを個別に理解する。診断とは異なり、個別性の高い治療計画を立てるための指針となる。

(4)フェヒナーの法則 (Fechner’s law) (136字)

 精神物理学における法則で、物理的な刺激の強度と、人間が知覚する主観的な感覚の強さとの関係を示したもの。感覚の強さは刺激強度の対数に比例する(S = k \log I)と定式化される。刺激が強くなるほど、変化を感じるためにより大きな刺激の変化量が必要になることを意味する。

(5)特殊飢餓 (specific hunger) (123字)

 体内で欠乏している特定の栄養素を摂取しようとする特殊な食欲や動機づけのこと。生命維持のためのホメオスタシス(恒常性)機能の一環であり、一般的な空腹とは区別される。例えば、ナトリウムが不足したラットが自発的に塩水を摂取する行動などが知られている。

(6)自律神経系 (autonomic nervous system) (110字)

 意思とは無関係に内臓や血管などの働きを自動的に調節し、生命維持を担う末梢神経系。身体を活動的にする交感神経系と、休息・回復させる副交感神経系からなり、両者が拮抗的に作用することでホメオスタシス(恒常性)を維持している。

(7)再構成的心理療法 (reconstructive psychotherapy) (123字)

 単なる症状の除去ではなく、パーソナリティ構造そのものの根本的な変容(再構成)を目標とする心理療法。クライエントが無意識に抑圧してきた葛藤や幼少期の体験に焦点を当て、深い自己洞察を促す。精神分析などがその代表例であり、支持的心理療法と対比される。

(8)スキーマ (scheme/schema) (118字)

 過去の経験を通じて形成された、外界の情報を効率的に体制化し解釈するための認知的な枠組み。ピアジェは外界を理解する思考様式、ベックの認知療法では中核的信念を指すなど、心理学の各分野で用いられる。ステレオタイプの形成につながる側面も持つ。

(9)IP (identified patient) (127字)

 家族療法における「患者と見なされた人」を指す用語。ある個人の症状は、その人個人の病理ではなく、家族システム全体の機能不全や葛藤の現れであると捉える。そのため治療の焦点はIP個人ではなく、IPの症状を維持させている家族全体の相互作用パターンに向けられる。

問2【解説】

 【問2】は、心理検査、心理学史、臨床倫理という、それぞれ異なる分野からの専門知識を問う問題で構成されています。

問題の性質を理解する

(1) WISC-IV:

 心理検査に関する具体的な知識問題です。4つの指標がそれぞれ「何を」測定しているのかを正確に記述する必要があります。

(2) モーガンの公準:

 心理学史上の重要概念です。単なる定義だけでなく、「なぜ提唱されたか(経緯)」と「どのような影響を与えたか」という歴史的文脈を説明することが求められています。

(3) タラソフ判決:

 臨床心理学における倫理・法規の問題です。「判決内容」と、その核心である「論点(何と何が対立し、どう判断されたか)」を明確にすることが重要です。

解答の要素を組み立てる(200字以内で)

 指定された文字数に収めるため、各問いで求められている中心的な要素を過不足なく盛り込む必要があります。
 (1)では、4つの指標(VCI, PRI, WMI, PSI)の正式名称(あるいは略称)と、それぞれが反映する認知能力を簡潔に列挙します。
 (2)では、「①公準の定義」「②提唱の経緯」「③後世への影響」の3点を論理的につなげて記述します。
 (3)では、「①判決の概要(結論)」と「②論点(守秘義務 vs 保護義務)」の2点を中心に構成し、分かりやすく説明します。

専門用語を正確に用いる

 流動性知能、節約性の原則、守秘義務、保護する義務など、各問いに関連する専門用語を正確に使い、専門知識があることを示します。

問2【解答】

(1)WISC-IVで算出される4つの指標得点 (186字)

 WISC-IVの4指標のうち、VCI(言語理解)は言語的な知識や語彙、言語による推理能力を反映する。PRI(知覚推理)は、非言語的な情報を用いて推理し、空間的な関係を捉える能力、いわゆる流動性知能を反映する。WMI(ワーキングメモリー)は、注意を維持し情報を短期的に保持・操作する能力を示す。PSI(処理速度)は、視覚的な情報を迅速かつ正確に処理する能力を反映している。

(2)モーガンの公準(Morgan’s canon) (177字)

 動物の行動を解釈する際、より低次の心的能力で説明できるなら、理性のような高次の心的能力に帰属させてはならない、という節約性の原則である。19世紀末、動物の知性を人間中心的に解釈する逸話的な研究を批判し、比較心理学に科学的で客観的な視点を導入するために提唱された。この公準は、その後の行動主義心理学の発展に大きな影響を与え、動物研究の科学的基礎を築いた。

(3)タラソフ判決の論点 (211字)

 精神科医や心理士などの専門家は、患者が特定の第三者に危害を加える明白な危険性を予見した場合、患者に対する守秘義務よりも、その第三者の生命や安全を保護する義務が優先されるとした米国の判決である。論点は、専門家が負う「クライエントのプライバシーを守る責務」と、「社会の安全を守る責務」という2つの義務が衝突する状況で、後者が優先されうることを明確にした点にある。これは臨床家の倫理と法的責任のあり方を示した重要な判例である。

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