問1-1【解説】
設問の理解:
まず、設問が何を求めているかを正確に把握します。問一は「傍線①『時間は創造する』に該当する例を、後の文章の中から抜き出して、八〇字以内で答えなさい」というものです。つまり、時間が何かを新しく生み出す働きを示している具体的な記述を、傍線部より後の本文から探し、80字以内でまとめる必要があります。
本文の探索:
傍線①「時間は創造する」 が含まれる段落以降の文章を読み、時間に「創造」の側面があることを示す具体例を探します。
本文には、「われわれの身体はかぎりない時間的変化の連鎖の帰結としてはじめて生体たりえた」という記述があります。これは、時間が生命という存在を生み出した(創造した)例と言えます。
さらに、「一度の射精の数億の精子のうちのただひとつだけが極徴の時間差で卵子に到達するように、われわれはほとんど奇跡的な確率の幸運の連鎖のためにこの生を享受している」と続きます。これも生命の誕生という「創造」をより具体的に説明した部分です。
また、後の段落には「時間がしばらく「貸し与えて」くれているこの意識のある生命の数十年間のあいだに、そうでなければ決してしなかったような仕方で世界を見、この世の花で友情を織ったりすることができる」という記述もあります。これも、限られた時間の中で経験や関係性を築くという「創造」の一例です。
要点の抽出と統合:
見つけ出した具体例の中から、最も核心的で分かりやすい部分を抽出します。生命が誕生したこと(生成)と、その生の中で友情などを築けること、この2点が「時間は創造する」の主要な具体例です。
字数制限内での要約:
抽出した内容を、80字以内という制限に合わせて簡潔にまとめます。上記の要素を組み合わせ、一つの文として自然に繋がるように構成します。
問1-1【解答】 (75字)
我々の身体が限りない時間的変化の連鎖の帰結として、奇跡的な確率の幸運で生を享受するに至り、その生命の時間の中で世界を見て、友情を織る経験ができること。
問1-2【解説】
設問の理解:
設問は、筆者が本文中で取り上げている「三つの命題」と、それぞれの命題が成立するための「前提」を、本文中から指定された字数(それぞれ20字以内)で抜き出すことを求めています。
本文の探索と特定:
本文の中から「第一に」「第二に」「第三に」という序数詞を手がかりに、筆者が検討対象としている三つの命題を探し出します。そして、それぞれの命題を論じている部分を精読し、その命題がどのような考え方や感覚を「前提」としているかを特定します。
第一の命題:
本文の2ページ目に「第一に、〈時間はすべてを消滅させる〉という命題について。」と明確な記述があります。この命題が虚無感と結びつく前提として、4ページ目に「抽象的に無限化された時間への関心もまた、のちにみるように、一定の文化と社会の形態を前提している」という記述が見つかります。
第二の命題:
5ページ目に「〈人生はみじかく、はかない〉という命題を第二に検討してみよう。」とあります。この命題の前提については、6ページ目に「人間の寿命が(中略)永遠のまえには一瞬にすぎないからだ。だがそれにしても、なぜ永遠を準拠にとるのか?」とあり、「永遠」を基準にしていることが前提であると分かります。
第三の命題:
6ページ目に「第三に、〈有限な存在(人生)はむなしい)という命題をとりあげてみよう。」と記されています。この命題の前提は、直後に「時間をあたかも空間のように、未来と過去に向かって無限にのびている第四の次元として実在するものと考えることを前提としている」と明確に説明されています。
字数内での整形:
特定した「命題」と「前提」を、それぞれ20字以内という字数制限に収まるように、本文の言葉を活かしながら簡潔にまとめます。
問1-2【解答】 (X字)
第一の命題(20字以内)
時間はすべてを消滅させる
前提(20字以内)
抽象的に無限化された時間への関心
第二の命題(20字以内)
人生はみじかく、はかない
前提(20字以内)
永遠を準拠(基準)にとってしまうこと
第三の命題(20字以内)
有限な存在(人生)はむなしい
前提(二〇字以内)
時間を無限にのびる次元と考えること
問1-3【解説】
設問:
「問二を踏まえて、死の恐怖と生の虚無を訴える人に、あなたはどのように向き合いますか。二百字以内で述べなさい。」
条件①「問二を踏まえて」:
解答は、問二で明らかにした「虚無感を生む3つの命題とその前提」に基づいている必要があります。つまり、「時間とは何か」という特定の主観的な捉え方が虚無感の原因である、という本文の論旨を踏まえることが必須です。
条件②「どのように向き合いますか」:
相手の考えを否定するだけでなく、どのようにその虚無感を乗り越えるか、という建設的な姿勢を示す必要があります。
条件③「二百字以内」:
指定された文字数内に収まるよう、要点を簡潔にまとめる必要があります。
条件④「PREP法」:
結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)の構成で文章を作成します。
本文の論旨の整理
筆者は、死の恐怖や生の虚無は、客観的な真理ではなく、特定の時間感覚(①時間を抽象的に無限化する、②永遠を基準にする、③時間を空間のように捉える)によって生み出される「文明の病」だと論じています。その解決策として、未来に意味を委ねるのではなく、「その時自体のうちに完結して充足する」ような、現在の価値を肯定する時間感覚の重要性を示唆しています。
PREP法に基づいた構成案の作成
P (結論):
まず、相手が感じている恐怖や虚無は、客観的な事実ではなく、特定の時間感覚が生み出す主観的な感覚であることを伝えます。
R (理由):
なぜなら、自分の有限の生を「永遠」という無限の基準で測ってしまうことで、現在の価値が相対的に失われて感じられるからです。これは問二で確認した前提に基づきます。
E (具体例):
解決策として、無限の未来に意味を探すのではなく、「友情を織る」ように、今この瞬間の経験そのものに価値を見出し、充足することの重要性を伝えます。
PREP法に基づいた文例
以上の構成案を元に、200字以内で自然な文章になるように繋ぎ合わせ、表現を調整して完成させます。
(結論:Point)
その恐怖や虚無感は、客観的な事実ではなく、時間を無限なものとして捉える特定の時間感覚が生み出す主観的なものです。
(理由:Reason)
なぜなら、永遠という非現実的な基準で有限の生を測ることで、未来のために現在の価値が失われ、全てが無意味に感じられてしまうためです。
(具体例:Example)
したがって、無限の未来に意味を求めるのをやめ、「友情を織る」といったような、今この瞬間の経験自体に価値と充足を見出す視点を持つことが重要だと伝えます。
問1-3【解答】 (199字)
その恐怖や虚無感は、客観的な事実ではなく、時間を無限なものとして捉える特定の時間感覚が生み出す主観的なものである。なぜなら、永遠という非現実的な基準で有限の生を測ることで、未来のために現在の価値が失われ、全てが無意味に感じられてしまうためである。
したがって、無限の未来に意味を求めるのをやめ、「友情を織る」といったような、今この瞬間の経験自体に価値と充足を見出す視点を持つことが重要だと伝える。
問2-1【解説】
設問の分析:
設問は「傍線部①『リスクの認知に関しては、できるだけたくさんの母集団のなかから、多くの人が何をリスクと考えるかを取り上げる社会調査がかなり大きな意味を持つ』と著者が考える理由」を、「リスクの認知に関する著者の説明に基づき」100字以内で説明することを求めています。
本文の該当箇所の特定:
まず、本文から「リスクの認知(リスク・パーセプション)」に関する著者の説明を探します。著者は、リスクの認知には「主観的な要素をどうしても排除できない」と述べています。
著者の論旨の整理:
著者はその主観性が生まれる要因として、独自の「逆比例の法則」を提唱し、以下の3つの「距離」を挙げています。
空間的距離:
自宅のそばの廃棄物処理場には敏感だが、遠い場所の同じ施設には鈍感になる。
時間的距離:
今の世代へのリスクは切迫感があるが、数百年後の子孫へのリスクには切迫感が薄れる。
心理的距離:
自身の価値観から遠いもの(例:食品添加物には敏感だが喫煙には鈍感)に対してはリスクを認知しにくい。
結論の導出と要約:
上記のように、個人のリスク認知は、その人が置かれた状況(空間、時間)や価値観(心理)によって大きく左右される、極めて主観的で偏りのあるものだと著者は説明しています。したがって、一個人の意見だけでは社会全体のリスクを正しく捉えることはできません。この「個人の主観性や偏り」を乗り越え、より客観的で全体的なリスク認識を得るために、「たくさんの母集団」を対象とする社会調査が重要になる、というのが著者の論理です。この流れを100字以内にまとめます。
問2-1【解答】 (99字)
リスクの認知は空間的・時間的・心理的距離で左右される主観的なもので、個人の判断には偏りが生じるので、社会調査によって多くの人の意見を集め、社会全体として何をリスクと考えるかを把握する必要があるから。
問2-2【解説】
設問の分析:
設問は「傍線部②『科学技術が進歩すればするほどリスクは増大』する」ことの意味を、「著者の考える『リスク』の内容に着目して」100字以内で説明することを求めています。解答の鍵は、筆者が「リスク」をどのように定義しているかを正確に捉えることです。
本文の該当箇所の特定:
本文で、著者が「リスク」と「天災(Act of God)」を区別して論じている部分を探します。
著者の論旨の整理:
- 著者は、「人間にはいかんともし難い、手が出せない、文字どおり不可抗力」な危険を「天災(Act of God)」と呼んでいます。
- これに対し、「人間がなんとかできるものがリスクなのです」と定義しています。つまり、「リスク」とは、人間が科学技術によって制御・対応できるようになった危険を指します。
- 著者は小惑星の衝突を例に挙げています。かつては防ぎようのない「天災」でしたが、ミサイルで軌道を変える技術などが計画されるようになったことで、それは人間が対応すべき「リスク」に変わったと説明しています。
結論の導出と要約:
この定義に基づけば、科学技術が進歩するとは、これまで「天災」として諦めるしかなかった危険が、次々と人間が管理・制御可能な「リスク」へと変わっていくプロセスを意味します。その結果として、人間が対処すべき「リスク」の総量が増大する、というのが傍線部の意味するところです。この論理を200字以内で簡潔にまとめます。
問2-2【解答】 (191字)
著者は「リスク」を、人間が制御・対応可能な危険と定義している。小惑星衝突のように、かつては不可抗力と見なされていた天災は、科学技術の進歩により、ミサイルによる軌道変更など、人間が対処できる「リスク」へと変化していくこととなると考えた。つまり、科学技術が進歩すればするほど、これまで諦めていた危険が、管理・制御可能なものとして浮上し、人間が対応可能な危険の総量が増大すると述べている。
問2-3【解説】
設問の分析:
設問は、科学者がリスクに関する意志決定に参加する際に直面する「問題」が何かを、「科学者に期待されている役割」という観点から説明することを求めています(200字以内)。
本文の該当箇所の特定:
まず、科学的なリスク対応の理想的な形(傍線部③)が、どのような原理に基づいているかを確認します。本文によると、それは「決定論的な因果関係が基本」であり、原因を特定して潰すという手法です。
次に、この理想的な手法が通用しない「問題」として著者が挙げている事例を探します。本文では、以下の2点が挙げられています。
複雑な自然現象:
地球温暖化など、因果関係を明確に設定できない問題。
ヒューマン・ファクター:
人間が時に予測不可能な過ちを犯すという、決定論から外れる問題。
著者の論旨の整理と要約:
設問は「科学者に期待されている役割」という観点からの説明を求めています。本文の最後(17ページ)に、「科学者に期待されているのは、因果関係を科学的にきちんと追及できるということである。しかし、実際はそうではありません」とあります。
これを統合すると、以下の論理が浮かび上がります。この内容を200字以内でまとめます。
期待される役割:
社会は科学者に対し、リスクの原因を特定し、明確な科学的根拠(決定論的な因果関係)を示すことを期待している。
直面する問題:
しかし、現実世界の多くの問題(複雑な自然現象や人的要因)は、そのような明確な因果関係を証明することができない。
結論:
その結果、科学者は社会からの期待に応えられないまま、科学的根拠が不確実な状況で意志決定への参加を求められる、というジレンマに陥る。
問2-3【解答】 (193字)
社会や政治から科学者に期待される役割は、リスクの原因を特定し、決定論的な因果関係に基づく明確な科学的根拠を示すことである。しかし、地球温暖化やヒューマン・ファクターが関わる問題など、現実にはそのような明確な因果性を証明できないことが多い。そのために、科学者は、社会の期待に応える明確な根拠を示せないという不確実性を抱えたまま、意志決定への参加を求められるという問題に直面することとなる。



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