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上智大学 総合人間科学部 心理学科 カトリック推薦入試 2021年 過去問解説

【解説】

課題の分析

 この問題は、大きく分けて3つの要求から成り立っています。文字数は1000字以内、試験時間は60分です。与えられたテーマの対立する側面を整理し、自分なりの結論を導き出す、典型的な小論文の形式です。

  • 喜怒哀楽が「重要である」側面を具体的に説明すること。
  • 喜怒哀楽が「邪魔・制御すべきである」側面を具体的に説明すること。
  • 上記2点を踏まえ、現代社会で「私たちは喜怒哀楽をどう扱うべきか」について自分の考えを述べること。
     

■ 議論の整理

 この問題には長い課題文がないため、要約は不要です。問いの文章自体が議論の前提を示しています。

(共通の前提):

 喜怒哀楽という感情には、人間にとって「不可欠で重要な側面」と「邪魔で制御すべき側面」という二面性が存在する。

(議論の論点):

 この二面性を持つ喜怒哀楽を、現代社会を生きる私たちはどのように扱っていくべきか。
小論文の序盤では、この前提と論点を確認し、「本稿では、喜怒哀楽の二つの側面を考察した上で、現代社会における望ましい付き合い方について論じる」といった形で、これから何を書くのかを明確に宣言すると良いでしょう。

■ 論証

 ここでは、問題の要求である「2つの側面の具体的な説明」を行います。対立する意見を整理しやすい「言い分方式」を使うと、考えをまとめやすくなります。

利害関係者Aの主張(肯定的な側面)

主張(たしかに〜):

  「たしかに、喜怒哀楽は私たちの生存や豊かな人生に不可欠なものである。」

根拠(なぜなら〜):
喜び・楽しみ:

 目標達成へのモチベーションの源泉となり、人生に彩りを与える。

怒り:

 社会の不正義や理不尽な状況に対して、それを是正しようとするエネルギーとなる。

哀しみ:

 大切なものを失った喪失感を乗り越え、精神的な成長を促したり、他者への共感の心を育んだりする。

コミュニケーション:

 喜怒哀楽を他者と共有することで、相互理解が深まり、強固な人間関係が築かれる。

利害関係者Bの主張(否定的な側面)

主張(しかし〜):

  「しかし、喜怒哀楽は時に私たちの理性を曇らせ、衝動的な行動を引き起こす邪魔なものであり、制御が必要な側面も持つ。」

根拠(なぜなら〜):
喜び・楽しみ:

 過度な快楽の追求は、依存症につながったり、やるべきことの放棄につながったりする。

怒り:

 衝動的な怒りは、暴力や暴言を引き起こし、人間関係を破壊する危険性がある。

哀しみ:

 過度な哀しみは、無気力や精神疾患につながり、社会生活を困難にすることがある。

判断の阻害:

 強い感情は客観的で冷静な判断を妨げ、誤った意思決定を導く可能性がある。

■ 結論

 論証で整理した二面性を踏まえ、問いの核心である「どう扱うべきか」について答えます。AとBの主張を仲裁する形で、自分自身の考え(Cの主張)を展開します。

仲裁者Cの主張(よって〜):

 「よって、現代社会を生きる私たちは、喜怒哀楽を善悪二元論で判断し、どちらか一方を否定・肯定するのではなく、その性質を深く理解し、状況に応じて意識的にマネジメントしていくことが望ましい。」

その根拠(なぜなら〜):

 なぜなら、喜怒哀楽は人間が生きる上で切り離せない本質的な要素であり、その両側面から逃れることは不可能だからだ。重要なのは、感情に「支配される」のではなく、感情の持つエネルギーを「使いこなす」という視点である。

その具体例:

アンガーマネジメント:

 怒りの感情そのものを否定せず、その発生メカニズムを理解し、建設的なエネルギーへと転換する技術。

マインドフルネス:

 自分の感情を客観的に観察することで、感情の波に飲み込まれず、冷静な自分を保つ訓練。

SNSとの付き合い方:

 現代社会では、SNSなどを通じて感情が瞬時に増幅・伝播しやすい。だからこそ、自分の感情の源泉がどこにあるのかを冷静に見極め、他者の感情に過度に振り回されないリテラシーが求められる。

■ 結論の吟味

 最後に、自分の出した結論を客観的に見つめ直し、説得力を高めます。

(他の解決策との比較):

 例えば、「感情を完全に排除し、常に理性的に行動すべきだ」という極端な意見も考えられる。しかし、それは人間性を否定する非現実的な解決策であり、かえって精神的な抑圧を生む危険性があると反論することで、自分の「マネジメントする」という結論の妥当性を強調できる。

(最終的な結論の確認):

 以上の考察から、喜怒哀楽の二面性をありのままに受け入れ、それを自己理解や他者理解を深めるための重要なサインとして捉え直すことが重要だ。感情を意識的にマネジメントするスキルを身につけることこそが、複雑な現代社会を豊かに生きていくための鍵となる、と締めくくります。

【解答】 (995字)

 喜怒哀楽は、私たちの生存や豊かな人生に不可欠な要素である一方、時には理性を曇らせる邪魔なものとして制御すべき対象ともなる。本稿では、この喜怒哀楽の二面性を具体的に考察した上で、複雑化する現代社会を生きる私たちが、自らの感情とどう向き合うべきかについて論じる。
 まず、喜怒哀楽が持つ肯定的な側面について述べる。「喜び」や「楽しみ」は目標達成への意欲を高める動機となり、「怒り」は社会的な不正義を是正しようとする強いエネルギーの源泉となり得る。また、「哀しみ」は、喪失の経験を通じて他者の痛みに共感する心を育み、人間的な深みと精神的な成長を促す。このように、多様な感情を他者と分かち合うことは、相互理解を深めて強固な人間関係を築くための基盤となり、私たちの生を豊かにするために不可欠である。
 しかし、その一方で、喜怒哀楽は私たちの判断や行動に悪影響を及ぼす危険性も内包している。過度な快楽の追求は、時に責任の放棄や依存といった問題を引き起こす。また、衝動的な怒りは、暴力や暴言につながり、取り返しのつかない人間関係の破綻を招く。さらに、深い哀しみに囚われ続ければ、無気力状態や精神疾患に陥り、健全な社会生活が困難になる場合もある。このように、激しい感情は客観的かつ冷静な判断を妨げ、誤った意思決定へと導く負の側面を持っているのだ。
 では、この二面性を持つ感情とどう向き合うべきか。結論は、善悪の二元論で捉えるのではなく、その性質を深く理解し意識的に「マネジメント」していくことが望ましい。なぜなら、感情は人間にとって不可分な要素であり、重要なのはそれに「支配される」のではなく、エネルギーとして「使いこなす」という視点だからだ。例えば、怒りを建設的な力へ転換するアンガーマネジメントや、自身の感情を客観視するマインドフルネスは有効な手法である。特に、SNSで感情が増幅・伝播しやすい現代では、他者の感情に過度に振り回されないリテラシーが不可欠である。
 結論として、喜怒哀楽の二面性をありのままに受容し、それを自己や他者を深く理解するための重要なサインとして捉え直すべきである。感情を完全に排除しようとする態度は、人間性を否定する非現実的なものに過ぎない。自らの感情を意識的にマネジメントするスキルを主体的に身につけることこそが、変化の激しい現代社会をより豊かに生きていくための鍵となるだろう。

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