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上智大学 総合人間科学部 心理学科 編入生試験 2022年 過去問解説

問1【解説】

 それぞれの用語について、まず「どのような要素を盛り込むべきか」という思考プロセスを解説し、その上で150字前後の模範解答を提示します。

解答の作成にあたっての全体方針

 この問題は心理学の各分野(社会心理学、心理統計、認知心理学、臨床心理学など)から基礎的かつ重要な専門用語の理解度を問うています。高得点を狙うには、以下の点を意識することが重要です。

  • 単なる辞書的な意味だけでなく、心理学の文脈における定義を記述する。
  • 関連する理論や提唱者、具体的な例などを簡潔に盛り込み、理解の深さを示す。
  • 対立概念や関連概念との比較を少し加えることで、知識の体系的な整理ができていることをアピールする。

(1) 態度 (attitude)

  • まず「態度」の基本的な定義(特定の対象への評価的な反応)を述べる。
  • 心理学で重要視される態度の3成分モデル(感情・認知・行動)に言及する。これが最も重要なポイント。
  • 態度がどのように形成され(例:経験)、どのような性質を持つか(例:持続性)を補足して締めくくる。

(2) 社会的アイデンティティ (social identity)

  • 「社会的アイデンティティ」が何を指すか(集団への所属意識)を明確に定義する。
  • この概念を提唱した中心的な理論家(タジフェル)と理論名(社会的アイデンティティ理論)に触れる。
  • 「個人的アイデンティティ」との対比を簡潔に示すと、理解の深さが伝わる。
  • このアイデンティティが持つ機能(自尊心の維持など)や、関連現象(内集団びいきなど)を加えて説明を補強する。

(3) 信頼区間 (confidence interval)

  • これが何のための指標か(母数を推定するため)を述べる。
  • 「95%信頼区間」などを例に挙げ、その確率的な意味を正確に説明する。「母数が95%の確率でこの区間に入る」という誤った表現を避け、「同じ調査を100回行ったら95回は母数が区間内に含まれる」という手続きの信頼性について述べるのが鍵。
  • どのような場面で使われるか(標本から母集団を推測する際)を明確にする。

(4) 分散分析 (analysis of variance)

  • 分散分析の目的を明確にする(3つ以上の群の平均値の差を比較する)。t検定との違い(2群か3群以上か)を意識する。
  • どのような論理で検定するのかを説明する。キーワードは群間変動(要因による差)と群内変動(誤差によるばらつき)。
  • 両者の比率であるF値(F比)を用いて判断することを記述し、専門性を示す。

(5) 作動記憶 (working memory)

  • 作動記憶の定義を述べる。単なる「短期記憶」との違いを明確にするため、「情報の一時的な保持と操作」という2つの側面を必ず入れる。
  • 代表的なモデルであるバドリーのモデルに言及する。
  • モデルの構成要素(中央実行系、音韻ループ、視空間スケッチパッド)を具体的に挙げることで、詳細な知識があることを示す。

(6) アフォーダンス (affordance)

  • 提唱者である知覚心理学者J.J.ギブソンの名前を挙げる。
  • アフォーダンスの核心的な意味(環境が動物に与える行為の可能性)を説明する。
  • モノの物理的性質そのものではなく、動物と環境の相互作用の中で生まれる関係性であることを強調する。
  • 具体的な例(椅子が「座る」をアフォードする等)を挙げて分かりやすく説明する。

(7) 抗うつ薬 (antidepressant)

  • まず、主な用途(うつ病治療薬)を述べる。
  • その作用機序を説明する。キーワードは脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)。これらの物質の働きを調整する、と記述する。
  • 具体的な薬の種類(SSRI、SNRIなど)を略語で示し、専門知識をアピールする。
  • うつ病以外の適用(不安障害など)にも触れると、より包括的な理解を示すことができる。

(8) 妄想 (delusion)

  • 妄想の定義を述べる。単なる「誤った考え」ではなく、「明白な反証があっても訂正不能な、強く確信された信念」という点が重要。
  • その人の文化的背景から説明できない、という基準も加える。
  • 精神医学的な位置づけ(思考内容の障害、統合失調症の陽性症状)を明確にする。
  • 具体的な妄想の種類(被害妄想、誇大妄想など)を例として挙げる。

(9) 自己愛性パーソナリティ障害 (narcissistic personality disorder)

  • この障害の核となる特徴を3つ挙げる(誇大性、賞賛への欲求、共感の欠如)。これはDSMの診断基準にもとづく重要なポイント。
  • 行動面の特徴(他者を利用する、尊大な態度など)を記述する。
  • 外面的な尊大さとは裏腹に、内面には「傷つきやすい脆弱な自己評価」を抱えているという、この障害の力動的な側面について触れると、深い理解を示すことができる。

問1【解答】

(1) 態度 (attitude)

 特定の対象(人、物、事柄)に対する評価的な反応傾向。一般に、感情的要素(好き・嫌い)、認知的要素(対象に関する知識や信念)、行動的要素(対象を避けたり近づいたりする行動傾向)の3つの要素から構成されると多次元的に捉えられる。態度は個人の経験を通じて学習・形成され、比較的持続性を持つとされる。

(2) 社会的アイデンティティ (social identity)

 個人が特定の社会集団に所属しているという自己の認識。タジフェルらによって提唱された社会的アイデンティティ理論の中核概念。自己を「私」という個人として捉える個人的アイデンティティと対比される。人々は内集団と外集団を区別し、自らが所属する内集団に肯定的な評価を持つことで、自尊心を維持する働きがあるとされる。

(3) 信頼区間 (confidence interval)

 統計的推定において、母数(母平均など)がどの範囲に含まれるかを確率的に示す区間。例えば「95%信頼区間」とは、同じ手順で標本抽出と区間推定を100回繰り返した場合、そのうち95回程度は算出された区間内に真の母数が含まれる、という手続きの信頼度を示す。標本調査の結果から、母集団全体の値を推測する際に用いられる。

(4) 分散分析 (analysis of variance)

 3つ以上の群(水準)の平均値に統計的に有意な差があるかを検定する多変量解析の手法。データ全体の変動を、要因による群間変動と、誤差による群内変動に分解する。両者の比(F値)を算出し、群間変動が群内変動に比べて十分に大きい場合、要因の効果によって群の平均値に差があると判断する。t検定を多群へ拡張したものと位置づけられる。

(5) 作動記憶 (working memory)

 認知的な課題の遂行中に、情報を一時的に保持し、同時に処理・操作するための記憶システム。単なる短期記憶のような受動的な貯蔵庫ではなく、思考や推論といった高次認知機能を支える能動的な役割を担う。バドリーのモデルが有名で、注意を制御する中央実行系と、音韻ループ(言語情報)、視空間スケッチパッド(視覚・空間情報)の下位システムから構成される。

(6) アフォーダンス (affordance)

 環境が動物に対して与える意味や価値のこと。知覚心理学者J.J.ギブソンが提唱した生態学的知覚論の中核概念。モノが持つ客観的な物理的特性ではなく、動物と環境との相互作用の中で生まれる「行為の可能性」を指す。例えば、椅子は人間に「座る」ことをアフォードし、ドアノブは「回す」ことをアフォードするといった関係性で捉える。

(7) 抗うつ薬 (antidepressant)

 主にうつ病の治療に用いられる向精神薬の総称。脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のシナプス間での濃度を調整することで、神経伝達を円滑にし、抑うつ気分や意欲の低下、不安などの症状を改善する。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI、三環系抗うつ薬など様々な種類があり、不安障害などの治療にも用いられる。

(8) 妄想 (delusion)

 明らかな反証があるにもかかわらず、訂正不能なまでに強く確信されている誤った信念。その人の文化的・教育的背景からは説明できない内容を持つ。思考内容の障害の一つで、統合失調症の代表的な陽性症状として知られる。他者から危害を加えられていると信じる被害妄想や、自分を特別な存在だと考える誇大妄想など様々な種類がある。

(9) 自己愛性パーソナリティ障害 (narcissistic personality disorder)

 自分は重要で特別な存在であるという誇大な感覚、他者からの過剰な賞賛への欲求、そして共感性の欠如を特徴とするパーソナリティ障害。自分の才能や業績を誇張し、しばしば尊大で傲慢な態度をとる。目標達成のためには他者を不当に利用することもある。その一方で、内面には傷つきやすく脆弱な自己評価を抱えており、批判に対して非常に過敏に反応する。

問2【解説】

 それぞれの用語について、まず「どのような要素を盛り込むべきか」という思考プロセスを解説し、その上で200字前後の模範解答を提示します。

(1) 人を対象にした心理学的研究での倫理的配慮

 この問いは心理学研究の根幹をなす研究倫理についての理解を問うています。まず、大原則として「対象者の人権と福祉の保護」が最優先であることを念頭に置きます。

ポイント1

 設問では「研究対象者の権利の保護」「研究対象者の情報の保護」という2つの視点から具体例を求めているため、最も代表的で重要な概念を2つ選びます。

  • 権利の保護 → インフォームド・コンセント(説明と同意)
  • 情報の保護 → プライバシーの保護と守秘義務

ポイント2

 それぞれの概念について、「何をするものか」という定義と、「具体的にどうするのか」という行動例をセットで記述します。

インフォームド・コンセント:

 研究目的、内容、リスク、いつでも同意を撤回できる自由などを十分に説明し、自由意思に基づいた文書による同意を得る、という流れを記述します。

プライバシーの保護:

 収集した個人データを匿名化し、厳重に管理して外部に漏洩させない義務について記述します。

(2) 心理測定における信頼性と妥当性の問題

  • この問いは、心理検査などが「良い測定」であるための2大条件、信頼性と妥当性の理解度を問うものです。
  • まず「信頼性(Reliability)」を定義します。キーワードは「測定の一貫性・安定性・正確さ」です。「何度測っても同じ結果が得られるか」という視点で説明します。
  • 次に「妥当性(Validity)」を定義します。キーワードは「測定したいものを、きちんと測れているか」です。「知能検査が本当に知能を測っているのか」といった例を出すと分かりやすくなります。
  • 最後に、この2つの関係性について述べます。これが最も重要なポイントです。「信頼性は妥当性の必要条件だが、十分条件ではない」という関係性を明確に記述します。(=信頼性がなければ妥当性は確保できないが、信頼性があるからといって妥当性があるとは限らない)。

(3) 心理療法の種類3つとその特徴

 数ある心理療法の中から、源流が異なり、理論的背景やアプローチが明確に違う代表的なものを3つ選びます。ここでは「精神分析療法」「認知行動療法」「来談者中心療法」を選択するのが最も標準的です。

着眼点

 それぞれの療法について、以下の要素を簡潔にまとめます。

  • 誰が始めたか(創始者)
  • 問題の原因を何と捉えているか(理論的背景)
  • どのようにアプローチするか(技法・治療者の役割)

具体例

 これを各療法について記述します。

精神分析療法:

 フロイト、無意識の葛藤、自由連想法、解釈

認知行動療法:

 ベックやエリスなど、非機能的な認知(考え方の癖)と行動、認知の再構成や行動的技法

来談者中心療法:

 ロジャーズ、自己実現傾向の阻害、受容・共感・一致の3条件、クライエントの成長を促進

問2【解答】

(1) 人を対象にした心理学的研究での倫理的配慮

 人を対象とする心理学的研究では、対象者の人権と福祉を守る倫理的配慮が不可欠である。
 第一に、研究対象者の権利の保護として「インフォームド・コンセント」の原則がある。研究の目的、内容、伴う可能性のあるリスク、いつでも同意を撤回できる権利を対象者に十分説明し、強制されることなく自由意思に基づいて参加の同意を得る必要がある。具体的には、事前に研究説明書を渡し、内容を理解してもらった上で署名を得る。
 第二に、研究対象者の情報の保護として「プライバシーの保護」がある。研究で収集した氏名などの個人情報は、研究者以外の目に触れないよう厳重に管理し、データは匿名化して個人が特定できない形で扱う義務を負う。具体的には、データを分析・公表する際に氏名をID番号に置き換えるなどの措置を講じる。

(2) 心理測定における信頼性と妥当性の問題

 信頼性と妥当性は、心理測定の科学的質を保証する上で不可欠な両輪である。
 信頼性とは、測定結果の一貫性や安定性の度合いを指す。同じ対象を同じ条件で繰り返し測定した際に、同様の結果が得られるかという指標であり、測定の「安定性」や「正確さ」に関わる。一方、妥当性とは、その測定尺度が、測定しようと意図している概念を的確に測定できているかの度合いを指す。例えば、作成した「不安尺度」が、本当に不安という心理状態を捉えられているかという問題である。
 両者の関係として、信頼性は妥当性の前提条件となる。つまり、安定して測定できない(信頼性のない)尺度は、測定したいものを的確に捉えている(妥当性がある)とは言えない。

(3) 心理療法の種類3つとその特徴

精神分析療法

 フロイトが創始。問題の原因は、幼少期の経験に由来し、無意識に抑圧された葛藤にあると考える。自由連想法や夢分析などを用いて、クライエントがその無意識的な葛藤に自ら気づき、洞察を得る(意識化する)ことを通じて、症状の解消を目指すアプローチである。

認知行動療法

 問題は、その人の非機能的な認知(考え方の癖)と、それに基づく不適切な行動が繰り返されることで維持されていると捉える。カウンセラーは、その認知の歪みを修正し、より適応的な行動を学習できるよう具体的に支援する。科学的根拠に基づいた、比較的短期で構造化されたアプローチを特徴とする。

来談者中心療法

 ロジャーズが提唱した人間性心理学に基づくアプローチ。人間が持つ成長への力を信頼し、治療者が「無条件の肯定的関心」「共感的理解」「自己一致」という3つの態度を保つことで、クライエントが自らの力で問題解決に向かうのを援助する。治療者の技法よりも、そのあり方が重視される。

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