問1-1【解説】
1. 設問の要求を正確に把握する
設問は「傍線部①『このような矛盾した二つの能力』とあるが、それぞれについて、100字以内で説明しなさい」です。この設問に答えるためには、以下の2つのステップが必要です。
- 本文から「矛盾した二つの能力」が具体的に何を指すのかを特定する。
- 特定した二つの能力の内容を、それぞれ簡潔に要約し、合計100字以内の文章にまとめる。
2. 本文から根拠となる箇所を探す
傍線部①「このような矛盾した二つの能力」 の直前の部分を読むと、二つの能力が具体的に説明されています。これらの記述から、企業が学生に求めている「矛盾した二つの能力」とは、①異文化を理解し自己主張する能力と、②空気を読み同調する能力であることがわかります。
一つ目の能力:
現在、表向き、企業が新入社員に要求するコミュニケーション能力は、「グローバル・コミュニケーション・スキル」=「異文化理解能力」である。
「異文化理解能力」とは、おおよそ以下のようなイメージだろう。
異なる文化、異なる価値観を持った人に対しても、きちんと自分の主張を伝えることができる。文化的な背景の違う人の意見も、その背景(コンテクスト)を理解し、時間をかけて説得・納得し、妥協点を見いだすことができる。
二つ目の能力:
日本企業の中で求められているもう一つの能力とは、「上司の意図を察して機敏に行動する」「会議の空気を読んで反対意見は言わない」「輪を乱さない」といった日本社会における従来型のコミュニケーション能力だ。
3. 解答の骨子を作成し、字数内でまとめる
上記で特定した二つの能力を、100字以内で簡潔にまとめます。この二つの要素を組み合わせ、自然な一文になるように調整します。
能力1(異文化理解能力):
価値観の違う相手にも自己主張し、説得や妥協を通じて相互理解を図る能力。
能力2(従来型の能力):
上司の意図や場の空気を読み、組織の和を乱さないように同調して行動する能力。
問1-1【解答】 (100字)
異なる文化や価値観を持つ相手に自己主張し、相互理解を通じて妥協点を見いだすグローバルなコミュニケーション能力と、上司の意図や場の空気を察して同調し、組織の和を乱さないようにする日本型の従来的な能力。
問1-2【解説】
1. 設問の要求を正確に把握する
設問は「傍線部②『コミュニケーションに対する意欲の低下』がなぜ起こるのか、筆者の考えを150字以内で説明しなさい」です。この設問に答えるためには、以下のステップが必要です。
- 本文の中から、筆者が「コミュニケーションに対する意欲の低下」の原因として挙げている箇所をすべて探し出す。
- 見つけ出した複数の原因を整理・要約する。
- それらの内容を、150字以内の論理的な文章にまとめる。
2. 本文から根拠となる箇所を探す
傍線部②以降の文章で、筆者が意欲低下の原因について述べている箇所を抽出します。
前提となる社会の変化:
いまの子どもたちは競争社会に生きていないから、コミュニケーションに対する欲求、あるいは必要性が低下しているのではないか。
原因① 家庭環境:
兄弟が多ければ、「ケーキ!」とだけ言ったところで、無視されるのが関の山だろう。しかしいまは少子化で、優しいお母さんなら、子どもが「ケーキ」と言えば、すぐにケーキを出してしまう。
繰り返すが、単語でしか喋れないのではない。必要がないから喋らないのだ。
原因② 学校・仲間関係:
学校でも、優しい先生が、子どもたちの気持ちを察して指導を行う。
衝突を回避して、気のあった小さな仲間同士でしか喋らない、行動しない。こうして、わかりあう、察しあう、温室のようなコミュニケーションが続いていく。
小学校一年生から中学校三年生まで三〇人一クラス、組替えなしといった地域がたくさんある。
これではスピーチは成立しない。なぜなら、太郎君以外の二九人は、もう太郎君のことをいやというほど知っているから。太郎君も、いまさら話すことなど何もない。
表現とは、他者を必要とする。しかし、教室には他者はいない。
これらの記述から、筆者は意欲低下の原因を「コミュニケーションの必要性が失われていること」にあると考え、その背景として①家庭と②学校における具体的な状況を挙げていることがわかります。
3. 解答の骨子を作成し、字数内でまとめる
上記で特定した原因を組み合わせ、150字以内で論理的に説明します。これらの要素を、因果関係が明確になるように文章として構成します。
根本原因:
競争社会でなくなったことで、コミュニケーションへの欲求や必要性自体が低下している。
具体的要因(家庭):
少子化を背景に、親が子の意図を先回りして察するため、子どもが言葉で詳しく伝える必要性が失われている。
具体的要因(学校):
衝突を避ける仲間関係や、長期間固定されたクラス編成によって、互いをよく知り尽くした関係の中では、表現の対象となる「他者」が実質的に不在となっている。
問1-2【解答】 (145字)
競争意識の低い現代ではコミュニケーションの必要性自体が低下しており、家庭では、少子化の中で親が子の意図を先回りして察するため、言葉で伝える必要性が失われ、学校では、衝突を避け互いをよく知る固定的な人間関係の中で、表現の対象となる「他者」が不在となり、話す必要性を感じられなくなっているから。
問1-3【解説】
1. 設問の要求を正確に把握する
設問は「傍線部③『時間を経た『ダブルバインド』』とは何かを、100字以内で説明しなさい」です。 この設問に答えるためには、以下のステップが必要です。
- 本文から「ダブルバインド」の基本的な定義を理解する。
- 傍線部③の文脈から、何と何が「矛盾した要求(ダブルバインド)」になっているのかを特定する。
- なぜそれが「時間を経た」と表現されているのかを明らかにする。
- これらを統合し、100字以内で簡潔に説明する。
2. 本文から根拠となる箇所を探す
まず、「ダブルバインド」の定義を確認します。
ダブルバインドとは、簡単に言えば二つの矛盾したコマンド(特に否定的なコマンド)が強制されている状態を言う。
次に、傍線部③の直前の文脈を読み、何が矛盾しているのかを特定します。
幼少期の状況:
わかりあう、察しあうといった温室の中のコミュニケーションで育てられながら
成長後の状況:
高校、大学、あるいは私の勤務先のように大学院生になってから、さらには企業に入ってから、突然、やれ異文化コミュニケーションだ、グローバルスタンダードの説明責任だと追い立てられる。
筆者の結論:
これもまた、時間を経た「ダブルバインド」とは言えまいか。
これらの記述から、「時間を経たダブルバインド」とは、幼少期に求められるコミュニケーションのあり方と、成長後に社会から要求されるコミュニケーションのあり方が矛盾している状態を指していることがわかります。
3. 解答の骨子を作成し、字数内でまとめる
上記で特定した内容を、100字以内で論理的に構成します。これらの要素を組み合わせ、一つの文章にまとめます。
状況1(子ども時代):
周囲が意図を察してくれる、「わかりあう」ことを前提とした環境で育つこと。
状況2(大人になってから):
突然、自己主張や説明責任が求められる、全く異なるコミュニケーション能力を要求されること。
結論:
このように、成長の各段階で矛盾したメッセージ(コマンド)が与えられている状態を、「時間を経たダブルバインド」と表現している。
問1-3【解答】 (100字)
幼少期には周囲が意図を察しあう環境で育てられる一方、成長後に異文化理解や説明責任といった自己主張を伴う能力を突然要求されるように、成長段階に応じて矛盾したコミュニケーション能力が求められる社会の状態。
問1-4【解説】
1. 設問の要求を分析する
この設問は、単にコミュニケーション能力を高める方法を問うだけでなく、以下の3つの条件を満たすことを求めています。
- 課題文の内容を踏まえる: 筆者(平田オリザ氏)が問題点として指摘する「意欲の低下」や「時間を経たダブルバインド」などの概念に触れる必要がある。
- 自身の考えを述べる: 課題文の要約ではなく、それを踏まえた上での具体的な提案や意見を記述する必要がある。
- 150字以内: 簡潔にまとめる必要がある。
- PREP法: 結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)の構成で記述する。
2. 課題文の論点を再整理する
解答の根拠とするため、筆者の中心的な主張を整理します。
問題の本質:
日本の若者の問題はコミュニケーション「能力」の欠如ではなく、コミュニケーションをしようとする「意欲の低下」である。
意欲低下の原因:
家庭や学校が、言わなくても伝わる「察しあう温室のような環境」であるため、言葉で伝える必要性自体が失われている。表現の対象となる「他者」がいない状況が問題である。
社会の矛盾:
そのような環境で育てておきながら、社会に出ると突然、自己主張や説明責任といったグローバルな能力を要求するという「時間を経たダブルバインド」が存在する。
3. PREP法に基づき、自身の考えを構築する
上記の論点を踏まえ、PREPの各要素を組み立てます。
P (結論 – Point): どうすべきか?
筆者が問題視する「温室」から出て、意図的に「他者」と関わる環境を作ることが解決策になると考えられます。
結論案:
多様な価値観を持つ「他者」と対話し、言葉で伝えざるを得ない環境を意図的に創出することが不可欠だ。
R (理由 – Reason): なぜそう言えるのか?
筆者の主張を理由として引用します。
理由案:
筆者が指摘するように、互いを察しあう環境では、コミュニケーションへの必要性が失われ、伝える意欲が育たないからだ。
E (具体例 – Example): 具体的に何をするのか?
結論を実践するための具体的な行動を提案します。
具体例案:
教育課程において、異なる世代や文化背景を持つ人々と協働で課題解決に取り組む学習を導入するなど、実践的な経験を積むことが有効だと考える。
4. 全体を統合し、150字以内に調整する
上記のP・R・Eを組み合わせ、字数制限内に収まるよう表現を洗練させます。
【結論】
多様な「他者」と対話せざるを得ない環境を意図的に創出すべきだ。
【理由】
筆者の言う、互いを察しあう環境で失われる「伝える意欲」を育むためだ。
【具体例】
教育課程で異文化や異世代の人々と協働する場を設けるなど、言葉で伝える実践的な経験を積むことが重要だと考える。
問1-4【解答】 (140字)
多様な価値観を持つ「他者」と対話せざるを得ない環境を意図的に創出すべきである。なぜなら筆者が述べた互いを察しあう環境で失われる「伝える意欲」を育むためである。
具体的には教育課程で異文化や異世代の人々と協働する場を設けるなど、言葉で伝える実践的な経験を積むことが重要だと考える。
問2-1【解説】
1. 設問の要求を正確に把握する
設問は「著者が目にした傍線部①『旧態依然とした病院の姿』とは何か。解答用紙の所定の箇所に100字以内で述べなさい」です。
この設問に答えるためには、以下のステップが必要です。
- 本文中から、傍線部①「旧態依然とした病院の姿」を具体的に説明している箇所を探し出す。
- 著者が指摘する複数の問題点を整理・要約する。
- それらの内容を、100字以内の文章にまとめる。
2. 本文から根拠となる箇所を探す
傍線部①の周辺、特に著者が松沢病院に戻って感じた「違和感」として整理されている部分に注目します。これらの記述から、「旧態依然とした姿」とは、単に建物が古いだけでなく、病院の組織体質や職員の意識が20年前から進歩しておらず、多くの問題を抱えている状態を指していることがわかります。
全体的な印象:
病棟で行われていること、外来の様子はもちろん、事務局に顔を出して庶務課の仕事ぶりを見たときは、二〇年前にタイムスリップしたかと思うほど昔のままの様子に唖然とした。
5つの違和感(問題点):
- 患者の苦しみに対する共感性の欠如
- 病院全体のホスピタリティーの欠如
- 精神科医の社会性の低さ
- 組織凝集性の欠如
- 経営意識の欠如
上記問題点の具体例:
精神科医の数だけ個人営業のクリニックがあるように見える。
患者、家族のみならず、出入りの協力企業に対するホスピタリティーの低さは、ほとほと情けなくなる。
経営意識はあまりに未熟だった。
3. 解答の骨子を作成し、字数内でまとめる
探し出した根拠を基に、解答の要素を抽出して100字以内で構成します。これらの要素を組み合わせ、一つの文章にまとめます。
要素①(全体像):
20年前から時が止まったかのような病院の様子。
要素②(組織の問題):
医師たちがまとまりなく個人営業のように振る舞い、経営意識が欠如している点。
要素③(患者・外部への態度):
患者の苦しみへの共感や、患者・家族、協力企業に対するホスピタリティーが欠如している点。
問2-1【解答】 (99字)
二十年前から時が止まったかのように、病棟や事務局の仕事ぶりが昔のままである姿。具体的には、患者の苦しみへの共感やホスピタリティー、経営意識が欠如し、医師も個人営業のようで組織的なまとまりもない状態。
問2-2【解説】
1. 設問の要求を正確に把握する
設問は「著者はなぜこの病院には傍線部②『患者への共感』が欠如していると感じたのだろうか。著者の松沢病院での経験に基づいて、解答用紙の所定の欄に、その理由を200字以内で述べなさい」です。
この設問に答えるためには、以下のステップが必要です。
- 本文中から、著者が「患者への共感が欠如している」と判断する根拠となった具体的な経験や目撃した光景を複数探し出す。
- それらの具体例が、なぜ「共感の欠如」を示すのかを明確にする。
- 見つけ出した理由を整理・要約し、200字以内の文章にまとめる。
2. 本文から根拠となる箇所を探す
著者が「共感の欠如」を感じた具体的なエピソードは、文章の後半に詳述されています。
経験① 認知症病棟にて:
看護師が人手不足を理由に、夕方になると車椅子に乗った患者たちを一斉に拘束していた光景。
経験② 急性期病棟にて:
多くの患者が過剰な鎮静薬で車椅子状態にされ、個室のベッドに拘束されていたこと。
経験③ 慢性期病棟にて:
30年間入院している元担当患者が、夜間に拘束されることを「自分のせいだ」と職員をかばうように話す姿。著者は、患者の魂まで病院に飼いならされてしまったと感じた。
経験④ 病棟移転にて:
職員たちが談笑しながら、荷物を持った年老いた患者たちを囚人のように遠巻きに監視しながら歩かせていた光景。
経験⑤ 救急病棟にて:
自殺したいと騒いだ13歳の少女が、誰にも寄り添われることなく一人で保護室に放置され、医師も無関心だったこと。
- 解答の骨子を作成し、字数内でまとめる
上記の具体例を、単なる出来事の羅列ではなく、「共感の欠如」を示す理由としてまとめます。これらの要点を組み合わせ、著者がなぜ「共感が欠如している」と結論付けたのかが伝わるように、200字以内で記述します。
要点1(身体的拘束・過鎮静):
治療目的以上に、職員の都合で身体拘束や過鎮静が常態化していること。
要点2(精神的苦痛への無配慮):
患者の尊厳や惨めな気持ちを無視した対応(病棟移転)や、助けを求める子どもを放置する無関心さ。
要点3(魂の支配):
長年の管理の結果、患者が不当な扱いに疑問さえ抱かなくなるほど精神的に支配されている状況。
問2-2【解答】 (198字)
著者は、松沢病院で職員の都合による身体拘束や過鎮静が恒常化し、患者の尊厳や精神的苦痛への配慮が欠けていた点から、強い共感不足を感じた。移転時に高齢患者を囚人のように遠巻きに監視する姿勢や、助けを求める少女を誰も寄り添わず保護室に放置した無関心さも、その欠如を明確に示している。さらに、長期入院の患者が不当な拘束を自責し、疑問さえ抱かなくなるほど精神的に支配されていた状況に、共感の欠落を痛感した。



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