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上智大学 総合人間科学部 心理学科 帰国生入試 2023年 過去問解説

問1-1【解説】

1. 問題の要求を理解する

 まず、問題文を正確に理解します。この問題は、本文で言及されている「二つのアプローチ」が具体的に何を指すのかを特定し、その名称を本文中からそのまま抜き出して答えることを求めています。
 「傍線部①『主に二つのアプローチがある』とあるが、その二つとは何か、最も適切な語句を本文中から選び、それぞれ書きなさい。」

2. 本文中の該当箇所を探す

 次に、傍線部①が記載されている箇所を本文で探します。
 傍線部①は、文章の最初の段落の最後の文にあります。

認知神経科学とは、…(中略)…記憶をはじめ、言語、学習、注意、情動、問題解決などの高次認知機能の研究には、主に二つのアプローチがある。

3. 「二つのアプローチ」の具体的な内容を特定する

 文章の構成上、この文の直後にその「二つのアプローチ」に関する具体的な説明が続くと予測できます。

一つ目のアプローチ:

 傍線部①の次の段落は、「神経心理学とは、脳損傷や精神神経疾患を対象とした臨床的な視点による学問分野であり…」と始まっています。ここから、一つ目のアプローチが「神経心理学」であることがわかります。

二つ目のアプローチ:

 そのさらに次の段落は、「一方、脳機能画像法とは、いずれかの脳画像技術を用いて、実際に活動している脳の働きを調べる方法であり…」と始まっています。「一方」という接続詞が、一つ目と対比される二つ目のアプローチの始まりを示しています。したがって、二つ目のアプローチは「脳機能画像法」であると特定できます。

4. 解答を確定する

 上記の手順で特定した二つの語句、「神経心理学」と「脳機能画像法」が、問題の要求する「最も適切な語句」であると判断し、解答とします。

問1-1【解答】

  • 神経心理学
  • 脳機能画像法

問1-2【解説】

1. 問題の要求を理解する

この問題は、本文の内容に基づいて、記憶障害に関する関係図の空欄(①〜⑤)を埋めることを求めています。解答は本文中から適切な語句を選ぶ必要があります。

2. 本文から分類情報を探し、図と照合する

 本文で記憶障害の分類について説明している箇所を探し、図の構造と対応させながら空欄を特定していきます。

①の特定(認知症の分類)

  • 図は「認知症」が「アルツハイマー型認知症」と「①」に分かれることを示しています。
  • 本文のP.5には、「認知症にもやはり非常に多くのタイプが存在するが、その中では、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などが、頻繁に観察されるタイプである」との記述があります。
  • したがって、①に当てはまるのは脳血管性認知症です。

②と③の特定(健忘症の分類)

  • 図は「健忘症」が「②」と「③」の大きなカテゴリに分かれることを示しています。
  • 本文のP.3には、「健忘症にもさまざまなタイプがあるが、大きく分けて、心因性健忘と器質性健忘に分けられる」とあります。
  • このため、②と③は「心因性健忘」と「器質性健忘」のいずれかです。どちらがどちらに対応するかは、その下位分類を見て判断します。

⑤の特定(健忘症の下位分類)

  • 図では、「⑤」は「ビタミンB1欠乏と関連」すると示されています。
  • 本文のP.5に、「コルサコフ症候群は、連続飲酒などに伴ってビタミンB1(チアミン)が欠乏し、それが原因で…重い健忘症状が残るような病態を指す」という記述があります。
  • この明確な関連性から、⑤はコルサコフ症候群であると特定できます。

③の確定

  • ⑤「コルサコフ症候群」は、本文P.3で「器質性健忘で比較的多く観察されるのは、… (2) …コルサコフ症候群」として挙げられています。
  • ⑤が③の下位分類であることから、その親カテゴリである③は器質性健忘であることが確定します。

②の確定

  • ③が「器質性健忘」であるため、残りの大きな分類である②は心因性健忘となります。

④の特定(器質性健忘の残りの下位分類)

 本文P.3では、「器質性健忘」のタイプとして以下の3つが挙げられています。

  • 側頭葉性健忘
  • コルサコフ症候群(⑤で特定済み)
  • 前脳基底部健忘(図に記載済み)
  • 図では「前脳基底部健忘」と「④」が並列に置かれています。したがって、空欄の④に当てはまるのは、残りの側頭葉性健忘です。
注:

 本文の記述によれば、「前脳基底部健忘」「④側頭葉性健忘」「⑤コルサコフ症候群」はすべて③「器質性健忘」の下位分類です。問題の図は②の下に一部の器質性健忘を配置するなど構造が正確ではありませんが、本文の内容に基づいて各番号に語句を当てはめることで正答を導き出します。

問1-2【解答】

① 脳血管性認知症
② 心因性健忘
③ 器質性健忘
④ 側頭葉性健忘
⑤ コルサコフ症候群

問1-3【解説】

1. 問題の要求を理解する

 この問題は、筆者らの研究結果について、以下の3つの要点を満たしながら300字以内で記述することを求めています。

対象:

 「健忘症」と「初期段階のアルツハイマー型認知症」の2つのグループを比較する。

必須語句:

 「存在想起」「内容想起」「意図再認」の3つの語句をすべて用いる。

内容:

 上記のグループと語句を関連付けながら、研究で得られた結果を説明する。

2. 本文中の該当箇所を探す

 問題文にある「筆者らの研究」は、本文のP.7で紹介される「ブザー課題」を指します。その結果と考察はP.8からP.9にかけて詳述されています。この範囲から解答に必要な情報を抽出します。

3. 各グループの結果を必須語句と関連付けて抽出する

健忘症群について:

  • 本文P.8-9には、「ブザーが鳴って何らかの行為を実行できたということは、少なくとも、ブザーが鳴ったら何かの行為を実行しなくてはならないということは想起できていたと考えるのが妥当」とあります。これは「存在想起」ができたことを意味します。
  • 一方で、「その行為の内容は正しく想起できなかったケースが多かった」とあり、これは「内容想起」が困難であったことを示します。
  • また、「意図再認」に関する質問には8名中7名が「覚えている」と答えており、「意図再認」は比較的保たれていることがわかります。

初期段階のアルツハイマー型認知症群について:

  • 本文P.9には、「認知症群の参加者のほとんどは、プロンプトBまでの手がかりを与えても手を叩くことができなかった」とあり、ブザーをきっかけに行為を思い出す「存在想起」も、その内容を思い出す「内容想起」もできなかったことがわかります。
  • その原因として、同ページで「依頼されたこと自体を覚えているか尋ねたところ、半数を超える参加者から『覚えていない』という答えが返ってきた」と述べられています。これは、課題の前提となる「意図再認」自体に障害があったことを示しています。

4. 抽出した内容を300字以内で構成する

 上記で抽出した情報を、指定された語句を用いて論理的にまとめます。このプロセスを経て、解答を作成することができます。

健忘症群の結果を記述:

 「存在想起」はできたが、「内容想起」は困難だった、という対比構造で説明します。

認知症群の結果を記述:

 「意図再認」の障害が原因で、「存在想起」も「内容想起」もできなかった、という因果関係で説明します。

結論を簡潔に加える:

 これらの結果が、両者の記憶障害の「質的な違い」を示すものであることを述べ、文章を締めくくります。

文字数を確認:

 全体が300字以内になるように調整します。

問1-3【解答】 (297字)

筆者らの研究は、健忘症群と初期段階のアルツハイマー型認知症群の記憶障害を、「存在想起」「内容想起」「意図再認」の3側面から比較する。まず健忘症群は、ブザーを聞いて行為を開始できたことから「存在想起」は保たれていたが、行為の中身を正しく思い出せない例が多く「内容想起」が障害されていた。一方で、依頼された事実を覚えているかを問う「意図再認」は多くの参加者で保持されていた。これに対し認知症群では、ブザーを聞いても行為自体を思い出せず「存在想起」「内容想起」の双方が困難であった。その背景には、依頼されたこと自体を覚えていないという「意図再認」の障害が存在し、両群の記憶障害の質的な違いが示された。

問2-1【解説】

1. 問題の要求を理解する

 この問題は、傍線部A「『持続可能性(sustainability)』が時代の標語となるゆえん(理由)」について、与えられた文章の空欄[ ]を埋める形で、35字以内で説明を完成させることを求めています。
完成させるべき文章:
 「現代社会は科学や技術の成果なしには成り立たず、またそれに伴うリスクと無関係に存立することはできないので、[ ]ということ。」

2. 本文中の該当箇所を探す

 傍線部Aが記載されている箇所を本文(P.12)で探します。傍線部Aの直前の文章が、理由を説明する上で重要な根拠となります。

正負いずれの側面を強調するにせよ、現代社会は科学や技術の成果なしには成り立たず、またそれに伴うリスクと無関係に存立することはできない。「持続可能性(sustainability)」が時代の標語となるゆえんである。

この文章は、問題文で与えられている「〜ので、」以前の部分と全く同じ内容です。

3. 空欄に当てはまる内容を考察する

 問題文は、「A(科学技術の恩恵)なしでは成り立たず、B(それに伴うリスク)と無関係でもいられない」という前提を提示しています。このAとBという相反する側面を抱えながら、社会が存続していく必要があります。

  • 「持続可能性(sustainability)」とは、社会を「維持し続ける」ことを意味します。
  • そのために、科学技術の「成果(正の側面)」と「リスク(負の側面)」の両方をうまく成り立たせていく(両立させる)ことが不可欠です。
    したがって、空欄には「社会を維持していくために、この二つの側面を両立させることが求められる」という趣旨の内容が入るべきだと判断できます。

4. 35字以内で解答を作成する

 上記の考察に基づき、簡潔で分かりやすい表現を作成します。

要素:

  1. 持続可能性を持って社会を維持するため
  2. 成果とリスクの両立が求められる

文章化:

 「社会を維持するため、両立が求められる」

文字数チェック:

 「持続可能性を持って社会を維持するため、成果とリスクの両立が求められる」(34字)。これは35字の制限を十分に満たしています。

問2-1【解答】 (34字)

持続可能性を持って社会を維持するため、成果とリスクの両立が求められる

問2-2【解説】

  1. 問題の要求を理解する
    この問題は、「サイエンス」という言葉が持つようになった二つの意味について、空欄①(かつての意味)と空欄②(その後の意味)に当てはまる修飾語を、それぞれ5字以内で本文から抜き出して答えることを求めています。
    完成させるべき文章:
    「ラテン語の『スキエンティア』に由来する『サイエンス』は、かつて、①知識を意味していたが、その後、②知識を意味するようになった。」
  2. 本文中の該当箇所を探す
    本文【二】(P.12〜)の中で、「サイエンス」や「スキエンティア」の語義の変遷について述べられている箇所を探します。P.13にまさしくその説明があります。
  3. 空欄①に当てはまる言葉を特定する
    本文P.13には、「サイエンス」の語源である「スキエンティア」について、次のような記述があります。

…「知識」や「知」を意味するごく一般的な言葉にすぎない。

さらに、英語の「サイエンス」の初期の意味についても、
その当時、サイエンスには今日の「科学」という意味はなく、一般的な「知識」や「学問」の意味で用いられていたのである。

と述べられています。これらの記述から、かつての「サイエンス」が意味していたのは「一般的な」知識であったことがわかります。「一般的な」は3文字であり、5文字以内の条件を満たします。

  1. 空欄②に当てはまる言葉を特定する
    次に、「サイエンス」がその後、どのような知識を指すようになったかを探します。同じくP.13に続けて、
    そのサイエンスが「知識」のうちでも「観察や実験など経験的方法に基づいて実証された法則的知識」という限定された特殊な知識、すなわち「科学」を意味するようになるのは、時代を下って十八世紀初頭のことである。

とあります。ここから、「サイエンス」が後に意味するようになったのは「法則的知識」であることが明確にわかります。したがって、空欄②に当てはまる言葉は「法則的」です。「法則的」は3文字であり、5文字以内の条件を満たします。
以上のプロセスを経て、①と②に当てはまる言葉を特定することができます。

問2-2【解答】

① 一般的な
② 法則的

問2-3【解説】

1. 問題の要求を理解する

 この問題は、傍線部B「それらはほぼ「科学」の名称に統一されて」いった理由を、本文の内容に基づいて150字以内で説明することを求めています。「それら」とは「サイエンスの訳語」を指します。つまり、「理学」や「窮理」など複数の訳語候補があった中で、なぜ「科学」という言葉が最終的に選ばれ、定着したのか、その理由を記述する必要があります。

2. 本文中の該当箇所を探す

 傍線部Bは本文P.15の後半にあります。そして、その理由は直後の段落で「それでは、いくつもの候補の中からなぜ「科学」という訳語が選ばれ、定着して行ったのだろうか。」と問いかける形で詳述されています。解答の根拠はこの段落にあります。

3. 解答の要点を本文から抽出する

 理由を説明している段落(P.16)から、以下の3つの主要なポイントを抽出します。

① 時期の偶然の一致:

 日本が西欧から知識を本格的に輸入し始めた時期(明治期)と、ヨーロッパで「第二次科学革命」が進行していた時期が重なっていたこと。

② 第二次科学革命の内容:

 この革命は「科学の制度化」であり、科学知識が様々な専門分野に分かれ、個別諸科学の体系が成立していく時期であったこと。

③ 「科学」という言葉の意味と適合性:

 「科学」という訳語は、もともと「分科の学」や「百科の学術」という意味を持っていた。この言葉の意味が、まさにヨーロッパで起きていた「サイエンスの専門分化」という状況にぴったりと対応(合致)する言葉だったこと。

4. 抽出した要点を150字以内で構成する

 上記の3つの要点を、論理的なつながりを意識して文章にまとめます。このプロセスによって、解答を作成することができます。

  • まず、「①時期の一致」と「②第二次科学革命の内容」を組み合わせて、歴史的背景を説明します。「日本が西欧から知識を輸入し始めた時期は、欧州で科学が専門分野に分化・制度化されていた時期と重なっていた」とまとめます。
  • 次に、その背景と「③『科学』という言葉の意味」を結びつけ、それが理由であることを明確にします。「『分科の学』を意味する『科学』という言葉が、その状況に合致したため」と続けます。
  • 最後に、全体の表現を整え、150字の制限文字数に収まるように調整します。

問2-3【解答】 (143字)

明治期に日本が西欧の知識を受容し始めた時期は、ちょうど欧州で科学が専門分野に分化し制度化される「第二次科学革命」と重なっていた。その時、もともと「分科の学」を意味していた「科学」という語は、この専門分化したサイエンスの状況に最も適合していたために、訳語として選ばれて、定着したのである。

問2-4【解説】

1. 問題の要求を理解する

 この問題は、本文P.16にある傍線部C「この幸運」が具体的に何を指しているのか、その説明として最も適切なものを選択肢1〜5の中から一つ選ぶことを求めています。

2. 本文中の該当箇所を特定し、文脈を理解する

 まず、傍線部C「この幸運」が使われている文とその直前の文を確認します。

…日本は西欧から科学をその研究や教育のシステムまで含めてまるごとパッケージとして移入することができた。このことは、…日本にとっては、ある意味できわめて幸運なことであった。いわば、科学をその種子から養い育てる苦労を経ずに、その果実だけを取り入れ、存分に味わうことができたからである。

 この記述から、「この幸運」が指しているのは以下の点であることがわかります。この「種子から育てる苦労」とは、本文で述べられている「科学の制度化」—科学者の育成、大学での学部・学科の設置、学会組織の整備など—に他なりません。

  • 日本が科学を輸入した際、研究や教育のシステムごと「パッケージ」として手に入れることができたこと。
  • 言い換えれば、科学というシステムを一から作り上げる(=種子から育てる)苦労をせずに、完成されたもの(=果実)だけを享受できたこと。

3. 各選択肢を吟味する

 本文の記述を基に、各選択肢が適切かどうかを判断します。

選択肢1:

 科学の制度化を自国で担うことなく、日本が西欧から科学を移入できたこと。

解説

 これは、「種子から育てる苦労を経ずに」という本文の表現と完全に一致します。「科学の制度化」という重要なキーワードも含まれており、本文の内容を最も正確に要約していると言えます。これが正解の可能性が非常に高いです。

選択肢2:

 日本の大学制度において、理学部に比べて工学部の規模が圧倒的に大きくなったこと。

解説

 これは本文の最終段落で「幸運」がもたらした「歪み」の結果として述べられていることであり、「幸運」そのものの説明ではありません。したがって不適切です。

選択肢3:

 サイエンスの訳語として選ばれた「科学」という言葉が、日本人の科学理解を象徴するものとなったこと。

解説

 これも本文の最終段落で、日本の科学理解のあり方を「象徴するもの」として述べられていますが、「幸運」そのものではありません。したがって不適切です。

選択肢4:

 殖産興業と富国強兵をスローガンに掲げ、日本が近代国家への道を歩み始めた時期に、西欧から科学を移入できたこと。

解説

 これは科学の移入が行われた時代背景の説明です。「幸運」の中身そのものを説明しているわけではないため、選択肢1に比べて直接的ではありません。

選択肢5:

 日本では、…むしろ個別分野の専門的知識として、その技術的応用の側面に力点を置いて科学が受容されたこと。

解説

 これは本文の最終段落で、「幸運」の反面として生じた「歪み」や日本の科学受容の特徴として述べられている内容です。「幸運」そのものではないため、不適切です。

  1. 結論
    以上の検討から、本文で述べられている「この幸運」の内容を最も的確に説明しているのは選択肢1であると結論付けられます。

問2-4【解答】

  1. 科学の制度化を自国で担うことなく、日本が西欧から科学を移入できたこと。

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