問1-1【解説】
傍線部①の解釈
まず、傍線部①「病は単なる意識の喪失ではなく、ある機能が眠ったことでもなく、ある能力がぼんやりしたことでもない」の意味を捉えます。これは、病気を単に「何かができなくなる」「機能が失われる」といったネガティブ(陰性)な側面だけで捉えてはいけない、という筆者の主張の導入部分です。
根拠となる箇所の特定
筆者が傍線部①のように考える理由と、その具体例を探すために、傍線部の直後を読み進めます。
直後の文章:
「機能上のこの空虚は、同時に、原始的反応の渦巻でみたされている」とあります。つまり、何かが失われる(空虚)だけでなく、同時に別の何かが現れると述べています。
肯定的(陽性)側面の指摘:
さらに読み進めると、「病は抹消もするが、強調もするのだ。一方でものを廃絶させるとしても、他方ではものを高揚させもするのだ」と、失われる機能(ネガティブな側面)と、逆に強調される機能(ポジティブな側面)の両方が存在することを明確に指摘しています。
具体例の抽出
問題の指示通り「具体例」を本文中から探します。傍線部①の直後の段落に、強調・高揚される「原始的反応」の例として以下が挙げられています。これらのうち、字数制限(50字)の中で簡潔に表現できるものを選びます。「反響の応答」などが使いやすいでしょう。
- 問われた問いに対して反響の応答をする
- 始められた身ぶりがさいげんもなくくりかえされる
- 脈絡のない独語をつづける
- 烈しい情緒的反応があらわれる
解答の構成と要約
上記の要素を組み合わせ、50字以内で解答を作成します。
要素1(否定):
病気は、単に機能が失われるだけではない。
要素2(肯定):
むしろ、失われた機能の代わりに、別の原始的な反応が過剰に現れる側面もある。
要素3(具体例):
例えば、相手の言葉を繰り返す「反響の応答」などである。
問1-1【解答】 (50字)
病は機能喪失という側面に加え、反響応答のような原始的反応が過剰に現れるという肯定的な側面も持つこと。
問1-2【解説】
傍線部②の確認
傍線部②「病のポジティヴな現象は、ちょうど簡単なものが複雑なものに対立するような具合に、ネガティヴなものに対立するのである」を確認します。これは、病気によって新たに現れる現象(ポジティヴな現象)と、失われる機能(ネガティヴな現象)が、「単純 vs 複雑」という対立構造にあることを述べています。問題は、なぜこのような対立が起こるのかという理由を問うています。
理由が述べられている箇所の特定
傍線部②を含む段落から、その理由を探します。筆者は「簡単 vs 複雑」という対立軸に加えて、さらに二つの対立軸を提示しています。
対立軸1(傍線部②の直後):
「安定対不安定というような対立」。病気で廃絶されるのは不安定な構造であり、誇張されるのは心理的に堅固で安定した現象であると説明されています。
対立軸2(次の段落):
「もっとも不随意的なもの」という記述から、「随意 vs 不随意(自動的)」という対立軸があることがわかります。病気では自発性(随意的な機能)が失われ、反復のような自動的な機能が優勢になります。
結論部分の抽出
筆者は、これら3つの対立軸を次の段落の最後でまとめています。この一文が、問いに対する直接的な答え、つまり著者が考える「理由」となります。
「要するに、病は複雑な、不安定な、随意的な機能を除去し、単純な、安定した、自動的な機能を高揚させるのである。」
解答の構成と要約
特定した結論部分を、問いの形式(「〜著者はどのように考えているか」)に合わせて、80字以内でまとめます。これらの要素を、「病は〜な機能を除去する一方で、〜な機能を高揚させるから」という構成で文章化します。文末は「〜から。」や「〜ため。」とすると、理由を説明する形として適切です。
- 除去される機能: 複雑、不安定、随意的
- 高揚される機能: 単純、安定、自動的
問1-2【解答】 (72字)
病には、複雑で不安定、かつ随意的な機能を選択的に除去する一方で、単純で安定した自動的な機能を逆に高揚させるという性質があると考えられているから。
問1-3【解説】
傍線部③の分析
傍線部③「以上にみられる構造上のレベルの差には、発達上のレベルの差が重なっている」を分解して理解します。
構造上のレベルの差:
これは問二までで見てきた、病によって「除去される機能(複雑・不安定・随意的)」と「高揚される機能(単純・安定・自動的)」の差を指します。
発達上のレベルの差:
これは、人間の成長過程における機能のレベル差、つまり「子供の段階の機能」と「大人の段階の機能」の差を指します。
重なっている:
この二つの「差」が、互いに対応関係にあるということです。
対応関係の具体的な内容を本文から探す
傍線部③の直後の文章に、この対応関係の具体的な説明があります。
- 筆者は、病気によって高揚される「自動的反応」「情緒的反応の爆発」などは、「個人の発達史における原始的なレベルの特徴」であり、「子供の諸反応を特徴づける」ものだと述べています。
- つまり、【病気で現れる単純な機能】=【子供(発達の初期段階)の機能】という対応関係が示されています。
筆者の結論を読み取る
この対応関係から筆者が導き出す結論を把握します。
- 筆者は、「もし病が何かを除去すると同時に、何かを高揚させるとするならば、それは病が発達の前段階に戻らせ、さいきんに獲得したものを消失させ、正常には乗り越えられているはずの行為形態を再びあらわにさせる」と述べています。
- さらに、「病という過程に沿って、発達の織りなしたものが解体して行く」「病とは…(中略)…その過程がさかさまになっているのである」と結論づけています。
- これらの記述から、傍線部が意味することは、「病気とは、人間がたどってきた発達の過程を逆方向に遡る(退行する)現象である」ということだとわかります。
解答の構成と要約
上記の要素を、問い(「どういうことか」)に答える形で100字以内にまとめます。
- 病によって失われる複雑な機能は、発達の後期に獲得されるものであること。
- 逆に、病によって現れる単純な機能は、発達の初期段階である子供に見られる原始的なものであること。
- 結論として、この関係は、病気が発達の過程を逆行する「退行」現象であることを意味すること。
問1-3【解答】 (98字)
病によって失われる複雑な機能は発達の後期に獲得される一方で、単純な機能として現れるものは子供が持つ原始的なものである。つまり、病気とは発達の過程を逆行し、過去の段階へ退行する現象であるということ。
問1-4【解説】
傍線部④の比喩の解釈
まず、傍線部④「神経症とは、リビドーの、自然発生的考古学なのである」という比喩表現の意味を理解します。この比喩は、神経症の症状が、患者の過去(リビドーの発達史)を掘り起こし、明らかにする手がかりとなることを意味しています。つまり、神経症の原因は現在ではなく、過去にあるという考え方を示唆しています。
考古学:
過去の遺物を発掘し、歴史を解明する学問です。
リビドー:
フロイトの用語で、性的欲動やエネルギーを指し、その発達は幼児期に遡ります。
本文における根拠の確認
傍線部④に至るまでの文脈で、筆者(フーコー)はフロイトの理論を次のように説明しています。これらの記述から、成人の神経症の原因は、その人の幼児期における発達の歴史にあるということがわかります。
- 神経症は「リビドー発達の一段階への回帰である」。
- 口唇期、肛門期、エディプス期といった幼児期の発達段階への「固着」が、様々な神経症を生み出す。
- 例えば、強迫症状群は「加虐=肛門段階」への固着と関連づけられています。
「治療において大切なこと」の推論
問題は、本文の内容から「治療において大切なこと」を推論するよう求めています。
- 原因が「幼児期の発達史」という過去にあるのであれば、治療においては現在の症状だけを対症療法的に扱うのではなく、その根本原因を探る必要があります。
- 「考古学」が遺跡を丁寧に掘り起こすように、治療においても、患者の過去、特に幼児期の発達過程にまで遡り、どの段階に問題の根源(固着)があるのかを突き止め、解明していくことが重要であると考えられます。
解答の構成と要約
上記の推論を、50字以内の簡潔な文章にまとめます。これらの要素を組み合わせて、指定された字数内に収まるように表現を調整します。
誰の/何を:
患者の過去、特に幼児期の発達史を
どうする:
遡って探り、症状の根本的な原因を明らかにすること
問1-4【解答】 (50字)
患者の過去を遡り、幼児期のリビドー発達のどの段階に問題の原因があるかを探り、それを明らかにすること。
問2-1【解説】
傍線部①とその前後の文脈の確認
まず、傍線部①「別もの」が登場する文とその直前の文を読みます。
直前の文:
「本書は、多様な性について知りたい人と、多様な性についての学問であるクィア・スタディーズについて知りたい人、両方の期待に応えることを目指します。」
傍線部を含む文:
「多くの部分で重なるとは、裏返して言えば厳密には別ものということだからです。」
「別もの」が指す内容の特定
傍線部を含む文は、直前の文で提示された2つの事柄を受けて、「それらは多くが重なるけれども、厳密には違うものだ」と述べています。
したがって、直前の文で並列されている2つの事柄が、ここでいう「別もの」の正体です。直前の文から、その2つの事柄を抜き出すと以下のようになります。
- 多様な性について知ること
- 多様な性についての学問(クィア・スタディーズ)について知ること
解答の作成と字数調整
特定した2つの事柄を、それぞれ25字以内でまとめます。本文の表現を活かして簡潔に記述します。
- 「多様な性について知ること」 は11文字で、そのまま使えます。
- 「多様な性についての学問であるクィア・スタディーズについて知ること」 は長いため、「クィア・スタディーズという学問を知ること」(18文字)のように要約します。
問2-1【解答】
- 多様な性について知ること
- クィア・スタディーズという学問を知ること
問2-2【解説】
問題の要求事項の確認
この問題は、筆者が本文中で「残念な答案」として挙げている例を、以下の条件に従って答えることを求めています。
- 一つ一つ抜き出すこと。
- 「〜答案」という形で終えること。
- 箇条書きで列挙すること。
本文から該当箇所の特定
本文中で、筆者が期末試験の答案に言及し、それを否定的に評価している(「問題です」「残念ながら」といった表現を用いている)箇所を探します。
一つ目の例の抽出
文章の中盤に、期末試験について初めて言及される箇所があります。
一方で、自分の持つ好意に対して「『オネエ』は才能やセンスがあるから好感が持てる」という理由づけをしている学生が多くいました。これはかなりの問題です。
ここから、一つ目の「残念な答案」が「『オネエ』は才能やセンスがあるから好感が持てる」という理由づけをする答案であることがわかります。二つ目の例の抽出
さらに読み進めると、再度、期末試験の答案に関する記述が見つかります。
…「オネエキャラ」ブームの「罪」として「セクシュアルマイノリティの間の違いを暴力的に無視している」と指摘する答案にも多く出会いました。しかし他方では、まさにそのセクシュアルマイノリティの間の違いを全く把握していない答案も、残念ながら若干数存在していました。
ここから、二つ目の例が「セクシュアルマイノリティの間の違いを全く把握していない答案」であることがわかります。解答の形式を整える
抽出した二つの内容を、問題の指示通り「〜答案」で終わる箇条書きの形式にまとめます。
問2-2【解答】
- 「オネエ」は才能やセンスがあるから好感が持てるという理由づけをする答案
- セクシュアルマイノリティの間の違いを全く把握していない答案
問2-3【解説】
問題の意図の把握
この問題は、本文で論じられている「セクシュアルマイノリティに対する差別の構造」を正しく理解し、その構造をセクシュアルマイノリティ以外の対象に応用して具体例を挙げる能力を測るものです。
本文で述べられている「問題の構造」の整理
まず、本文で指摘されている差別の構造(問題点)を整理します。
無知に基づく一方的なイメージの投影:
よく知らないまま、特定のイメージ(たとえ肯定的でも)を押し付けること。
「良心」に基づく差別:
「かわいそう」と同情したり、「悪気はない」と主張したり、マジョリティ側の都合の良い「良心」が、結果的にマイノリティを傷つけ、抑圧すること。
アクセサリー扱い:
相手を対等な人間としてではなく、自分の人生を彩るための道具のように扱うこと。
応用する具体例の考案
上記の構造が当てはまる、セクシュアルマイノリティ以外の人々を考えます。例えば、以下のようなケースが考えられます。
障がいを持つ人:
「心が純粋」「特別な才能がある」というイメージの押し付け。
特定の国籍の人:
「〇〇人は皆、陽気だ」「△△人は皆、時間にルーズだ」といったステレオタイプ。
特定の職業の人:
「看護師は皆、優しい白衣の天使だ」といったイメージ。
女性:
本文でも「トロフィーワイフ」の例が挙げられています。
解答の作成と要約(150字以内)
考案した例の中から一つを選び、問題の構造を明確に示しながら150字以内で記述します。ここでは「障がいを持つ人」を例に取ります。
対象:
障がいを持つ人
問題の構造:
無知からくる一方的なイメージの投影と、「良心」に基づく差別
具体的内容:
「心が純粋」「特別な才能がある」といったイメージを押し付け、同情や感動の対象としてのみ扱う。
結論:
それがなぜ問題なのか(本人の個性や意思を無視し、マジョリティの型にはめる差別だから)を記述します。
問2-3【解答】 (143字)
障がいを持つ人に対して、「心が純粋」や「特別な才能がある」などといった画一的なイメージを投影して、感動や同情の対象として扱うことは、障がいを持つ人本人の個性や意思を無視し、マジョリティの都合の良い型にはめようとする行為であり、無知からくる「良心」によって当事者を傷つける差別となりうる。
問2-4【解説】
問題の意図と条件の確認
この問題は、文章全体の要旨を的確に捉え、それを象徴するようなタイトルを創作する能力を測るものです。条件は「本の一つの章のタイトル」としてふさわしく、かつ「15字以内」であることです。
文章全体の要旨の把握
まず、この章が何を伝えようとしているのか、その中心的なメッセージを要約します。
主題:
セクシュアルマイノリティに対する差別について。
筆者の主張:
差別をなくすためには、「良心」や「道徳」だけでは不十分で、時には逆効果にさえなる。差別の根源には無知があり、それを乗り越えるためには、イメージではなく正確な「知識」を得ること、つまり「学問」が必要不可欠である。
章の役割:
本格的な議論に入る前に、なぜ「知ること(学ぶこと)」が重要なのかを読者に問いかけ、説得するための導入部(筆者の言葉でいう「誘い文句」)。
タイトルに含めるべきキーワードの抽出
要旨から、タイトルにふさわしいキーワードを抜き出します。
- 中心テーマ: 「知ること」「学ぶこと」「知識」「学問」
- 解決すべき課題: 「差別」「無知」「『良心』の暴力」
- 対象: 「多様な性」「セクシュアルマイノリティ」
- 章の役割を示す言葉: 「なぜ」「はじめに」「入門」
タイトル案の作成と選定
抽出したキーワードを組み合わせ、15字以内の条件で複数のタイトル案を作成し、最もふさわしいものを選びます。これらの案の中から、この章が読者への問いかけから始まっている点や、導入としての役割を最もよく反映している案1が、特に優れたタイトルと言えるでしょう。
案1: なぜ多様な性について学ぶのか(13字)
章全体の問いかけと目的を的確に表現しており、導入章として非常にふさわしい。
案2: 差別をなくすための知識と学問(13字)
筆者の主張の核心をストレートに表現している。
案3: 「良心」が差別を生むとき(10字)
本文の重要な論点だが、章全体を代表するには少し狭いかもしれない。
案4: はじめに―なぜ「知る」ことが大切か(15字)
章の役割と内容をバランス良く表現している。
問2-4【解答】 (14字)
なぜ多様な性について学ぶのか



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