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上智大学 総合人間科学部 心理学科 編入生試験 2025年 過去問解説

問1【解説】

1. 問題の把握:

 問題1で問われている9つの心理学用語を正確にリストアップする。

  • (1) オペラント条件づけ (operant conditioning)
  • (2) 共同注意 (joint attention; shared attention)
  • (3) 特性不安 (trait anxiety)
  • (4) IP (Identified Patient)
  • (5) 局所論 (精神分析) (topography)
  • (6) 非指示的カウンセリング (non-directive counseling)
  • (7) 統合失調症 (schizophrenia)
  • (8) 不眠症 (insomnia)
  • (9) 反社会性パーソナリティ障害 (antisocial personality disorder)

2. 知識の検索と整理:

 各用語について、心理学の専門知識に基づき、簡潔かつ正確な説明を作成する。特に、鍵となる概念(例:オペラント条件づけにおける「強化」や「罰」)を漏れなく含めるように留意する。

3. 解答の記述:

 専門用語を噛み砕き、平易な言葉で説明する。英語の専門用語も併記されているため、そのニュアンスも考慮に入れる。

問1【解答】

(1) オペラント条件づけ:

 ある行動の直後に報酬(強化子)や罰(嫌悪刺激)を提示することで、その行動の生起頻度を変化させる学習手続き。B.F.スキナーによって提唱された。例えば、子どもが良い行いをした時に褒める(正の強化)と、その行いが増えるような場合を指す。

(2) 共同注意:

 他者が見ている対象に注意を向け、その他者もまた自分と同じ対象を見ていることを理解する能力。生後9ヶ月頃から現れるとされ、言語発達や社会的認知能力の基礎となる重要な機能である。

(3) 特性不安:

 特定の状況によらず、日常的に不安を感じやすい個人の性格的な傾向。これに対し、特定の状況下で一時的に高まる不安を「状態不安」と呼ぶ。

(4) IP (Identified Patient):

 「患者として特定された人」の意。家族療法で用いられる概念で、家族システムの中で問題症状を呈している個人を指す。しかし、その問題は個人のものではなく、家族全体の力動の現れであると捉える。

(5) 局所論 (精神分析):

 S.フロイトが提唱した、人間の精神構造を説明する初期のモデル。心を「意識」「前意識」「無意識」の三つの領域(層)に分けて捉える。夢や失言などは、無意識の内容が意識に現れる例とされる。

(6) 非指示的カウンセリング:

 カウンセラーがクライエントに対して指示や解釈を与えるのではなく、クライエント自身の話に耳を傾け、受容的・共感的に理解しようと努めるカウンセリングのアプローチ。C.ロジャーズによって提唱され、クライエント中心療法の核となる考え方である。

(7) 統合失調症:

 思考、知覚、感情、行動など、精神機能の様々な側面に障害が現れる精神疾患。代表的な症状に、幻覚(特に幻聴)や妄想、思考のまとまりのなさが挙げられる。原因は完全には解明されていないが、生物学的要因と心理社会的要因が複雑に絡み合っていると考えられている。

(8) 不眠症:

 寝つきが悪い(入眠障害)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)などの症状が続き、日中の活動に支障をきたす状態。ストレスや生活習慣の乱れ、精神疾患など、様々な原因によって引き起こされる。

(9) 反社会性パーソナリティ障害:

 他者の権利や感情を軽視し、社会のルールを無視する行動を繰り返し示すパーソナリティ障害。衝動性、攻撃性、無責任さなどが特徴で、自責の念が欠如していることが多い。

問1【解説】

1. 問題の把握: 問題2で問われている3つの設問を正確にリストアップする。

(1)

 ユングの類型論における内向性-外向性と、現代のパーソナリティ検査で用いられる概念との違い。

ユングが提唱した内向性-外向性

 心的エネルギーである「リビドー」が、主として内的な世界(個人の主観や空想)と外的な世界(客体や他者)のどちらに向けられるかという、エネルギーの方向性を示す類型論である。

現代のパーソナリティ検査で用いられる概念

 パーソナリティを複数の独立した特性の集合体として捉える特性論に基づいている概念が多い。

(2)

 心理療法における助言の意義。

助言の意義

 単にカウンセラーが答えを与える行為ではなく、クライエントが自らの力で問題解決に取り組めるよう、その思考や感情の整理を促し、新たな視点や選択肢を提供すること。

(3)

 心理支援における危機介入とは何か。

危機介入の定義

 災害、事故、暴力、突然の離別など、個人の対処能力を著しく超える出来事(危機的状況)に直面し、強い心理的動揺や混乱状態に陥っている人に対して行われる、即時的かつ短期的な心理支援

2. 知識の検索と整理: 各設問に対し、関連する心理学の理論や概念を整理する。

(1)

 ユングの「リビドーの方向性」という本来の定義と、特性論に基づき多数の因子の一つとして捉える現代のパーソナリティ検査(例:ビッグ・ファイブ)との違いを明確にする。

「リビドーの方向性」という本来の定義

 ユングにとって、個人は内向型か外向型のどちらかに分類され、それはその人の根本的な構えを示すものであった。

現代のパーソナリティ検査との違い

 ユングの質的な「類型」に対し、現代の検査では量的な「特性」として扱われる点に、最も大きな違いがある。

(2)

 単なるアドバイスではなく、クライエントの自己決定を促すための専門的な行為としての「助言」の意義を、特に非指示的なアプローチとの対比で説明する。

非指示的なアプローチとの対比

 助言の意義は、その療法の理論的背景によって異なるが、共通しているのは、それがクライエントの自律性を尊重し、最終的な自己決定を支援するための専門的な関わりの一つであるという点である。

(3)

 「危機」の定義(急性の心理的動揺状態)と、その状態にある人に対して即時的かつ短期的に行われる支援の目的(自殺の防止、心理的安定の回復など)を明確にする。

支援の目的
  1. 自殺や自傷・他害行為を防ぎ、安全を確保すること
  2. 混乱した感情を表現させ、安心感を与えることで、心理的な安定を取り戻す手助けをすること
  3. その人が本来持っている心理的な対処能力(コーピング)を回復させ、現実的な問題解決に取り組めるよう支援することである。

3. 解答の記述:

 専門的な内容を、論理的かつ分かりやすく記述する。

問2【解答】

(1) ユングの類型論と現代パーソナリティ検査における内向性-外向性の違い

 ユングが提唱した内向性-外向性は、心的エネルギーである「リビドー」が、主として内的な世界(個人の主観や空想)と外的な世界(客体や他者)のどちらに向けられるかという、エネルギーの方向性を示す類型論である。ユングにとって、個人は内向型か外向型のどちらかに分類され、それはその人の根本的な構えを示すものであった。一方、現代のパーソナリティ検査で用いられる内向性-外向性は、多くの場合、特性論に基づいている。これは、パーソナリティを複数の独立した特性の集合体として捉える考え方である。例えば、「ビッグ・ファイブ」理論における外向性は、社交性、活動性、積極性といった行動レベルの特性を指す因子であり、内向性はその対極に位置づけられる。ここでは、個人は内向的か外向的かという二分法で分類されるのではなく、外向性という一つの次元(連続体)の上で、どの位置にいるかによって記述される。つまり、ユングの質的な「類型」に対し、現代の検査では量的な「特性」として扱われる点に、最も大きな違いがある。

(2) 心理療法における助言の意義

 心理療法において「助言」は、単にカウンセラーが答えを与える行為ではない。その意義は、クライエントが自らの力で問題解決に取り組めるよう、その思考や感情の整理を促し、新たな視点や選択肢を提供することにある。特に、クライエント中心療法のように、クライエントの自己成長力を信頼する立場では、直接的な助言は最小限に留められる。しかし、認知行動療法のように、より教育的なアプローチを取る療法では、特定のスキル(例:リラクセーション法)を教えたり、非合理的な思考パターンを修正するための具体的な方法を提案したりするなど、積極的な助言が重要な役割を果たす。
 したがって、助言の意義は、その療法の理論的背景によって異なるが、共通しているのは、それがクライエントの自律性を尊重し、最終的な自己決定を支援するための専門的な関わりの一つであるという点である。カウンセラーの一方的な価値観の押し付けであってはならず、常にクライエントとの治療関係の中で、その人にとって最適なタイミングと方法で行われる必要がある。

(3) 心理支援における危機介入とは何か

 危機介入とは、災害、事故、暴力、突然の離別など、個人の対処能力を著しく超える出来事(危機的状況)に直面し、強い心理的動揺や混乱状態に陥っている人に対して行われる、即時的かつ短期的な心理支援のことである。
 その主な目的は、第一に、自殺や自傷・他害行為を防ぎ、安全を確保することである。次に、混乱した感情を表現させ、安心感を与えることで、心理的な安定を取り戻す手助けをすること。そして、その人が本来持っている心理的な対処能力(コーピング)を回復させ、現実的な問題解決に取り組めるよう支援することである。危機介入は、長期的な心理療法とは異なり、あくまで「今、ここ」での危機を乗り越えることに焦点を当てる。具体的には、電話相談(いのちの電話など)や、災害派遣医療チーム(DPAT)による現場での活動などが挙げられる。

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