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上智大学 法学部 国際関係法学科 帰国生入試 2020年 過去問解説

【解説】

■ 議論の整理

課題文の要約:

 筆者は、パーマストンの現実主義的な国益論に始まり、トランプ政権下のアメリカ第一主義、中国の台頭、そして安倍政権下で明確化された日本の国益追求の動きを概観する。これにより、かつてアメリカが主導したリベラルな国際秩序が後退し、各国が自国の国益を優先するナショナリズムが復権している現代世界の潮流を浮き彫りにしている。

共通の前提:

 現代の国際社会は、各国が「国益」を声高に主張する時代に突入している。

議論の論点:

 国益の定義をめぐる対立。具体的には、他国との協調や普遍的価値の擁護を含む「開かれた国益」(リベラルな国際秩序)と、自国の利益のみを追求する「閉じた国益」(アメリカ第一主義に代表されるナショナリズム)が対立している。

■ 問題発見

問題の設定:

 「国益」が声高に叫ばれる現代において、私たちは「国益」をどのように再定義し、追求していくべきか。それは、自国第一主義に陥ることなく、国際社会の平和と繁栄に貢献できるような国益論となりうるか。

■ 論証→言い分方式

 「国益とは何か」という複雑で多面的な問いに答えるため、異なる立場からの主張を対立的に示す「言い分方式」を採用した。具体的には、「閉じた国益論(自国第一主義)」と「開かれた国益論(国際協調主義)」の双方の言い分と根拠を提示し、それぞれの主張に一定の理解を示した。その上で、両者を弁証法的に統合する「仲裁者C(統合的国益論)」の立場を提示することで、より高次でバランスの取れた結論を導き出すことを目指した。
 設問が特定の立場を押し付けるのではなく、「あなたはどう答えるか」と開かれた問いかけをしているため、一方的な主張を展開するよりも、複数の視点を比較検討する方が説得力を持つと判断した。言い分方式は、論点の多角的な検討を可能にし、独善的でない、思慮深い印象を与えるのに効果的である。

利害関係者Aの主張(閉じた国益論):

 たしかに、グローバル化の進展は国内の格差を拡大させ、一部の国民に不利益をもたらした側面もある。なぜなら、他国との競争や国際的なルールによって、自国の産業や雇用が脅かされることがあるからだ。よって、まずは自国の経済や安全を最優先し、国境の管理を強化するなど、内向きな政策を重視すべきだという主張には一理ある。

利害関係者Bの主張(開かれた国益論):

 しかし、感染症のパンデミックや地球温暖化、国際テロなど、一国では解決できない地球規模課題が山積する現代において、自国だけの繁栄を追求することは不可能である。なぜなら、国際的な協力なくしては、自国民の安全や健康、経済活動すら守れないからだ。したがって、自由貿易の推進や普遍的価値の擁護といった、リベラルな国際秩序の維持に貢献することこそが、長期的に見て自国の利益にもつながる。

仲裁者Cの主張(統合的国益論):

 よって、我々が目指すべき「国益」とは、これら二つの側面を統合したものであるべきだ。すなわち、自国民の生活と安全を守るという国家の基本的な責務を果たしつつ、その実現の基盤となる国際社会の安定と繁栄にも積極的に貢献していく「統合的国益論」を構築する必要がある。なぜなら、国内の安定なくして国際貢献はありえず、また国際社会の安定なくして国家の長期的な繁栄はありえないからだ。

■ 結論

 論証で提示した「統合的国益論」を、ODAや環境問題を具体例として示すことで、その主張が単なる抽象論ではないことを補強した。また、想定される反論(「まずは国内問題」「偽善だ」)に言及し、それに対して再反論を行うことで、議論の強度を高めている。最終的に、小論文全体のメッセージを「内向きナショナリズムの克服」という形で力強く締めくくることで、読者に強い印象を残すことを意図した。

導かれる結論:

 現代における「国益」とは、自国の利益と国際社会全体の利益を対立するものと捉えるのではなく、両者を統合的に追求するべきものである。

その根拠:

 課題文で示されたように、リベラルな国際秩序が揺らぎ、各国が内向きになる傾向は、地球規模課題の解決を困難にし、長期的には全ての国の不利益につながる。自国の繁栄が安定した国際環境の上に成り立つ以上、国際貢献は単なる慈善活動ではなく、国益を確保するための必須条件である。

その具体例:

 例えば、発展途上国への政府開発援助(ODA)は、人道支援であると同時に、日本の経済活動に不可欠なシーレーンの安定や、新たな市場の開拓にもつながる。また、気候変動対策に関する国際的な枠組みに積極的に参加し、技術や資金を提供することは、地球環境を守るだけでなく、日本の環境技術を世界に示す好機ともなり、新たな経済的利益を生む可能性がある。

■ 結論の吟味

他の結論との比較:

 「国益追求を止め、世界市民として行動すべき」という理想論と比較して、本結論は国民国家が存続する現実を前提としており、より実現可能性が高い。また、「自国第一主義を徹底すべき」という孤立主義的な結論と比較して、地球規模課題への対応力が高く、持続可能な繁栄につながる。

最終的な結論の確認:

 したがって、「国益とは何か」という問いに対しては、「自国民の幸福を追求すると同時に、その基盤である国際社会の安定と繁栄に貢献すること」と答えるべきである。

【解答】(787字)

 現代の国際社会は、課題文が示すようにリベラルな国際秩序が揺らぎ、各国が自国の利益を前面に掲げる「国益の時代」に入っている。この状況下で筆者が問いかける「国益とは何かを改めて論じるべきだ」という指摘は極めて重要である。私はこの問いに対し、「国益とは、自国の利益と国際社会全体の利益を統合的に追求するものである」と考える。
 まず、課題文はパーマストンの現実主義からトランプ政権のアメリカ第一主義まで、国益がしばしば自国優先と同一視されてきた歴史を示している。確かに、グローバル化が国内格差を生み、自国産業や雇用を守るべきだという主張に一定の説得力があることは否定できない。しかし、自国だけを優先する「閉じた国益」では、パンデミックや気候変動といった地球規模課題には対応できない。国際協力なしには、自国民の安全すら守れないからである。
 したがって、私は自国と国際社会の利益を結びつける「開かれた国益」、すなわち統合的視点が必要だと考える。自国民の生活と安全を守ることは国家の基本的責務であるが、その基盤となる国際秩序の安定にも貢献することが、結果的に自国の長期的繁栄を支える。国内の安定と国際社会の安定は相互補完的であり、どちらが欠けても成り立たない。
 この考え方を体現する例として、日本の政府開発援助や気候変動対策が挙げられる。途上国へのインフラ支援は人道的貢献であると同時に、日本企業の市場開拓や海上交通路の安定を通じて国益に資する。また、環境技術の提供や国際枠組みの構築は、地球全体に寄与しつつ、日本の技術力を世界に示す戦略的投資である。
 もちろん、「まず自国を優先すべきだ」という批判は存在する。しかし、世界との分断は地球規模課題を悪化させ、長期的には自国の利益を損なう。ゆえに、短期的なナショナリズムを超え、持続可能な国益のあり方を構想することが今こそ求められている。

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