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上智大学 法学部 国際関係法学科 外国人入試 2020年 過去問解説

問1【解説】

 要約問題では、文章の表面的な情報をなぞるのではなく、筆者の主張の論理構造を掴み、それを再構成することが重要です。以下の4つのステップで解答を作成します。

ステップ1:文章全体の構造を把握する

 まず、文章全体を「現状認識」「過去の経緯」「未来への展望」という3つの大きなブロックに分け、それぞれの要点を掴みます。

【現状認識】第1・2段落

  • 格差やテロといった脅威は、もはや国境を越える問題である。
  • 地球規模の危機(バタフライ効果)や9.11のテロは、人類が相互に依存し、他者の苦しみを無視できない運命共同体であることを示している。

【過去の経緯】第3・4段落

  • 20世紀は悲惨な戦争の世紀だったが、その反省から国連が創設された。
  • 国連を中心に、人権、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有し、国際協力を行うための基盤ができた。

【未来への展望】第5段落

  • 21世紀の使命は、これまでの基盤の上に立ち、国家の枠を超えた視点で、人種や宗教を問わず全人類の尊厳を守ることである。

ステップ2:要約に不可欠なキーワードを抽出する

 次に、各ブロックから文章の骨子となるキーワードを抜き出します。

  • 国境を越える脅威(格差・テロ)
  • 相互依存
  • 20世紀の戦争と反省
  • 国連
  • 国際協力の基盤
  • 普遍的価値(人権など)
  • 21世紀の使命
  • 国家を超えた視点
  • 全人類の尊厳

ステップ3:論理の流れを再構成する

 抽出したキーワードを使い、「①現状の問題 → ②過去の成果 → ③未来への使命」という論理の流れに沿って、要約の骨格を組み立てます。

1.(現状)

 現代世界は、国境を越える脅威と相互依存関係に直面している。

2.(過去)

 しかし、20世紀の戦争の反省から、国連を中心に普遍的価値に基づく国際協力の基盤が築かれた。

3.(未来)

 したがって、その基盤を活かし、国家を超えた視点で全人類の尊厳を守ることが21世紀の使命である。

ステップ4:指定字数に合わせて文章を洗練させる

 最後に、ステップ3の骨格をもとに、接続詞などを補いながら200字程度の自然な文章に仕上げます。冗長な表現を削り、一文を短くすることで、より明確な要約になります。

問1【解答】(190字)

現代の格差やテロは国境を越える脅威であり、地球規模の危機は人類の相互依存を物語っている。20世紀は悲惨な戦争の世紀であったが、その反省から国連が生まれ、人権や法の支配といった普遍的価値を共有する国際協力の基盤が築かれることとなった。この遺産と科学技術、政治力を活用し、国家の枠を超えた視点から全人類の尊厳を守り、貧困などの課題を克服することこそが、21世紀に課せられた使命である。

問2【解説】

この問題は、2001年のアナン氏のメッセージを起点に、その後の国際社会の変化を、現代における「新たな脅威」「新たな不安」と関連付けながら論じるものです。テンプレートの各項目を使い、思考を整理していくことで、多角的で説得力のある答案を作成できます。

■ 議論の整理

 まず、答案を作成するための前提となる事実と考え方の対立軸を明確にします。

(共通の前提)

  • アナン氏の講演(2001年)は、国境を越える脅威に対して「国際協調」と「全人類の尊厳」を重視すべきだと訴えた。
  • 講演から現在まで約20年が経過し、国際情勢は大きく変化した。
  • 国際社会は、アナン氏の訴えに対して、何らかの形で「反応」を示してきた。

(議論の論点)

 この小論文で論じるべき中心的な対立点は、アナン氏が示した「理想」と、その後の国際社会の「現実」とのギャップです。以下のAとBの相克(そうこく)をどう評価するかが、この問題の核心となります。

アナン氏の理想(A):

 国家の枠を超えて協力し、人類共通の課題を解決すべきだ。

国際社会の現実(B):

 実際には、国家間の対立や自国第一主義が根強く、理想通りには進んでいない。しかし同時に、理想に近づこうとする努力も存在する。

■ 問題発見

 議論の整理を踏まえ、この小論文で自分が何を明らかにするのか、中心的な「問い」を立てます。

(問題の発見)

 この小論文で答えるべき問いは、「2001年にアナン氏が提唱した『国境を越えた協調』という理想に対し、その後の国際社会は、現代における『新たな脅威』と『新たな不安』の出現の中で、理想に応えることができたのか、それとも理想から遠ざかったのか。その複雑な現実を我々はどう評価すべきか?」と設定できます。

■ 論証→帰納法と言い分方式の応用

 設定した問いに答えるため、具体的な論理で分析します。この問題では、まず「帰納法」で現代の脅威を具体化し、次に「言い分方式」で国際社会の反応を多角的に分析するのが非常に有効です。

帰納法(現代における「新たな脅威」「新たな不安」の具体化)

(例の列挙):

 まず、アナン氏の時代以降に深刻化した脅威や不安を具体的に列挙します。

  • ロシアのウクライナ侵攻に代表される国家間紛争の再燃。
  • 新型コロナウイルスのような世界規模のパンデミック。
  • SNSで拡散される偽情報による社会の分断。
  • 深刻化する気候変動とそれに伴う自然災害。

(法則性を導く):

 このことから、現代の脅威はアナン氏の指摘通り、ますます国境を越えて相互に連関し、一国では対処不可能な性質を強めている、と言えます。

言い分方式(国際社会の反応の多角的分析)

 国際社会の反応を、理想から「後退した」と見る立場と、「前進した」と見る立場の両方から論じます。

利害関係者A(理想から後退した、と見る立場)の主張:

 「たしかにアナン氏は国際協調を訴えた。しかし、その後の国際社会はむしろ自国第一主義を強め、協調よりも対立を選ぶ場面が増えた。」
 「なぜなら、ウクライナ侵攻で国連安保理が機能不全に陥ったことや、パンデミック初期に各国が医療物資を囲い込んだことに、その現実が象徴されているからだ。」

利害関係者B(理想に向かい前進した、と見る立場)の主張:

 「しかし、地球規模の課題に対して、国家の枠を超えて協力しようとする重要な進展もあった。」
 「なぜなら、気候変動に対しては『パリ協定』が、貧困や格差に対しては『持続可能な開発目標(SDGs)』が採択され、人類共通の目標を掲げて協調する枠組みが構築されたからだ。」

仲裁者C(筆者の分析)の主張:

 「よって、国際社会の反応は、単なる『後退』でも『前進』でもない。国家主権への回帰とグローバルな協調という、二つの相反する動きが同時に進行する複雑な様相を呈していると捉えるべきである。」
 「なぜなら、グローバル化が人々の利益と同時に不安をもたらし、その後者が自国第一主義を煽るというジレンマ構造が存在するからだ。」

■ 結論

 論証で展開した分析に基づき、小論文全体の結論を導き出します。

(Cから導かれる結論)

 アナン氏の訴え以降、国際社会は「後退」と「前進」の間で揺れ動いてきた。そして、現代の「新たな脅威」は、皮肉にもアナン氏が訴えた国際協調が、もはや理想論ではなく、人類の生存に不可欠な現実的要請であることを証明した。

■ 結論の吟味

 導き出した結論が妥当かを確認し、論を確定させます。

(最終的な結論の確認)

 以上の考察から、アナン氏の講演は20年以上経った今も色褪せることなく、むしろその重要性を増していると結論づける。国際社会が直面する課題はより複雑化したが、彼が示した「国家の枠を超えた視点」と「全人類の尊厳」という理念こそが、分断と対立を乗り越えるための羅針盤となるのである。

問2【解答】(594字)

 2001年にアナン氏が訴えた国際協調の理念に対し、その後の国際社会は期待と逆行が交錯する複雑な反応を示してきた。本稿では、現代における「新たな脅威」と「新たな不安」を軸に、その光と影を考察する。
 まず、アナン氏の訴えに反して、世界は再び「国家の枠」へと回帰し、自国第一主義が強まった。ロシアによるウクライナ侵攻は国連安保理の深刻な機能不全を露呈し、パンデミック初期には各国が医療物資を囲い込むなど協調より自国利益を優先した。また、SNSで拡散する偽情報は社会の不信感を煽り、深刻な分断を生む「新たな不安」として蔓延している。これらはアナン氏が構想した協調の理念に逆行するものである。
 しかし一方で、彼の理念を継承する前向きな進展も存在する。気候変動対策の「パリ協定」や、貧困・格差是正を掲げた「持続可能な開発目標」は、人類共通の課題に国境を越えて取り組む姿勢を示すものである。また、人種差別や環境問題に対し、市民が国境を越えて連帯する動きが強まっている点も見逃せない。
 このように、現代の国際社会は国家主権への回帰とグローバルな連帯の間で揺れ動いている。しかし、パンデミックや気候危機といった脅威は、国際協調が理想ではなく生存に不可欠な要請であることを示した。したがって、分断を乗り越えるためには、全人類の尊厳を原点とし協力を追求するアナン氏の理念が、今後一層重要な意味を持つと言える。

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