問1【解説】
この問題は、文章の要約能力を測るものです。以下のステップで解答を作成します。
設問の分解と把握
- 設問は「著者が、①情動と価値判断がどのようなものであるか、そして②どのような関係にあるかをどのように説明しているか」を問うています。
- この2つの要素を文章全体から漏れなく拾い出し、400字以内でまとめる必要があります。
文章の構造分析とキーフレーズの抽出
文章を段落ごとに分解し、それぞれの要点を把握します。
第1〜3段落:【通常の関係】価値判断の優位性
情動の定義:
「事物の一面にのみ注目して形成される安直な価値認識」「迅速だが、精度はそれほど高くない」。
価値判断の定義:
「他の諸々の価値判断と照らし合わせ」「整合性が確立されてはじめて受け入れられる」「かなり精度が高い」。
通常の関係:
対立した際は、価値判断の方が正しいことが多い。情動は価値判断に合わせて変化する傾向がある。
具体例:
檻の中のイヌへの恐怖、夫の帰宅が遅いことへの怒り。
第4〜6段落:【例外的な関係】情動の逆転
例外的な情動:
価値判断と対立したまま執拗に残り続ける「御しがたい情動」が存在する。
具体例:
飛行機への恐怖、ハックの奴隷ジムへの同情。
例外的な関係:
この「御しがたい情動」は、経験の積み重ねで研ぎ澄まされ、価値判断よりも事物の価値的性質を深く精密に捉えている場合がある。
情動がもたらす影響:
このような情動は、価値判断の体系全体に再編成を迫り、「価値観の根本的な転換」や「新たな自己になること」を促す力を持つ。
要約の構成
抽出した要素を、論理的な順序で再構成します。
導入(定義):
まず、情動と価値判断がそれぞれどのように定義されているかを対比させて説明する。
展開1(通常の関係):
次に、両者が対立した場合の一般的な関係(価値判断が優位)について述べる。
展開2(例外的な関係):
しかし、と逆接の接続詞を使い、例外的に情動が優位に立つ場合とその理由を説明する。
結論(情動の役割):
最後に、その例外的な情動がもたらす影響(価値観の転換)について触れ、文章全体の結論をまとめる。
400字以内での文章化と推敲
構成案に基づき、指定された文字数に収まるように文章を作成します。冗長な表現を避け、本文中の言葉を効果的に使いながら簡潔に記述します。
問1【解答】(367字)
著者は、情動を事物の一面に注目した迅速だが安直な価値認識とする一方、価値判断は他の判断との整合性を図るため、精度が高いものだと説明する。
両者が対立する際、通常は多角的な視点から整合性を吟味する価値判断の方が事物の価値を正しく捉えており、情動はそれに合わせて変化することが多い。しかし、多くの経験によって感受性が研ぎ澄まされると、価値判断に抗して存続する「御しがたい情動」が生まれることがある。
この情動は、作中のハックが奴隷制を正しいと判断しつつジムに同情したように、体系的な価値判断よりも深く事物の本質を捉えている場合があり、既存の価値判断の体系に全面的な見直しを迫る。このように、御しがたい情動は時に価値観の根本的な転換、すなわち「新たな自己になること」を引き起こし、人の生を新たな高みへと導く力を持つと著者は結論付けている。
問2【解説】
この問題は、文章のテーマを理解した上で、自分自身の経験や知識と結びつけて意見を論理的に述べる能力を測るものです。以下のステップで解答を作成します。
設問の要件分析
- テーマ: 情動と価値判断が対立する状況
- 条件1: 本文にない具体的な例を挙げること。
- 条件2: その例に関する自分の考えや意見を述べること。
- 文字数: 300字以内。
- 構成: PREP法(Point, Reason, Example, Point)を用いる。
具体例のブレインストーミング
本文では「檻の中の犬」「飛行機への恐怖」「ハックルベリー・フィンの奴隷への同情」などが挙げられていました。これらと重複しない、自分自身の意見を述べやすい例を考えます。
医療現場:
(看護医療学部の試験という文脈を考慮)苦手意識のある患者への対応。個人的な「嫌だ」という情動と、看護師として平等に接するべきだという価値判断の対立。
社会問題:
災害時のボランティア。被災地の惨状を見て「かわいそう、助けたい」という情動と、専門知識のない自分が行っても足手まといになるかもしれないという冷静な価値判断の対立。
日常生活:
衝動買い。「今すぐ欲しい」という情動と、本当に必要か、予算は大丈夫かという価値判断の対立。
今回は、試験の趣旨に最も関連性が高いと考えられる「医療現場」の例を選択します。
PREP法に沿った構成案の作成
選択した例を元に、PREPの各要素を組み立てます。
P (Point: 結論):
情動と価値判断が対立する場合、特に職業倫理が関わる場面では、理性的価値判断を優先すべきだと主張する。
R (Reason: 理由):
なぜなら、情動は主観的で安定しないのに対し、職業上の価値判断は公平性や責務といった客観的な指針に基づいているから。
E (Example: 具体例):
看護師が、個人的に苦手な患者を担当する例を挙げる。「嫌悪感」という情動と、「平等に最善のケアを提供する」という価値判断の対立を示す。
P (Point: 結論の再提示):
したがって、専門職は自らの情動を律し、理性的な判断に基づいて行動することが不可欠だと締めくくる。
300字以内での文章化と推敲
構成案を元に文章を作成し、指定された文字数に収まるように表現を調整します。各文のつながりを滑らかにし、論理的で分かりやすい文章を目指します。
問2【解答】(290字)
個人的な情動と価値判断が対立する局面がある時、特に職業倫理が問われる場面では、理性的な価値判断に従うべきだと考える。
なぜなら情動は主観的で揺れ動きやすいが、医療者に求められる公平性や責務といった価値判断は、より普遍的で客観的な指針となるからである。
例えば、看護師として働くにあたって、苦手な患者の担当になった際、個人的な嫌悪感などの情動を抱いたとしても、看護師として平等に最善のケアを提供するべきだという価値判断に直面せざるをえないという状況が挙げられる。
ゆえに、業務に取り組むにあたって、自らの情動を客観視し、理性的な判断に基づいて行動することが専門職には不可欠である。



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