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【慶應SFC 小論文】慶應義塾大学 総合政策学部 2002年 小論文 過去問解説

問1【解説】

 この問題は、企業活動がもたらす「快適さ」というプラスの側面と、「社会問題」というマイナスの側面を踏まえた上で、「将来の産業社会における企業の役割」について論じることを求めています。与えられた7つの資料から少なくとも3つを根拠として使用し、自分の考えを1000字以内でまとめる必要があります。

 以下に、5STEPsの各項目に沿って、思考のプロセスと答案の構成例を解説します。

■ 議論の整理

 まず、問題文と各資料から、議論の前提となる情報を整理します。

(課題文の要約):

 企業は、精巧な製品や便利なサービスで我々の生活を快適にする一方で、様々な問題も引き起こすという「二面性」を持っている。この二面性を前提として、未来の社会で企業が果たすべき役割は何かを論じなさい。

(共通の前提):

 7つの資料はすべて、企業が製品開発、マーケティング、グローバル展開、労働環境の整備などを通じて、良くも悪くも社会に大きな影響を与えていることを示しています。例えば、自動車(資料6)は人々の生活を豊かにしましたが、同時に環境問題や交通渋滞を引き起こしました。このように、企業の活動は常に「光」と「影」の両面を伴うという点が、議論の出発点となります。

■ 問題発見

次に、この小論文で自分が何を論じるのか、中心的な「問い」を立てます。

(問題の発見):

 これまでの企業は、主に経済的な利益や効率性を追求し、人々の生活を便利にしてきました(光の側面)。しかしその結果、環境破壊、文化の均質化、労働格差といった様々な社会問題(影の側面)を生み出してしまいました。

 この状況を踏まえ、「将来の企業は、利益追求という従来の役割を超えて、自らが引き起こした、あるいは社会が直面する『影』の部分(社会課題)を解決するために、どのような役割を果たすべきか?」という問いを設定します。

■ 論証→帰納法

 設定した「問い」に対して、資料を根拠にしながら自分の主張を組み立てていきます。ここでは、複数の事例から法則性を見出す「帰納法」を用いて論証を展開してみましょう。

(例の列挙):

 自動車産業(資料6)は「移動の自由」という価値を提供しましたが、その普及は交通渋滞や大気汚染という新たな問題を生み出しました。

 マクドナルド(資料4)に代表されるファストフード産業は、グローバルに事業を展開し、手軽な食を提供しましたが、一方で「マックワールド」と評される画一的な食文化を広める一因となりました。

 楊枝の生産(資料1)に見られるように、企業は徹底したコスト削減を追求しますが、それは海外の労働環境への配慮や、製品の品質維持といった課題と隣り合わせです。

(法則性を導く):

 これらの例から、「企業が経済合理性や利便性のみを追求する活動は、意図せずして社会的なコストや文化的な摩擦、環境負荷といった負の側面を生み出してしまう」という法則性を導き出すことができます。

(例外を検討する):

 ただし、トヨタの創業者(資料5)のように、単なる利益追求だけでなく「国産独立」という社会的責任感を事業の原動力とした例や、AT&T(資料2)や日清食品(資料3)のように、新たな文化やライフスタイルを創造してきた例もあります。これは、企業が社会課題の解決や新たな価値創造の担い手にもなりうる可能性を示唆しています。

■ 結論

 論証で導いた法則性をもとに、問いに対する「答え」を明確に提示します。

(導かれる結論):

 将来の産業社会において企業が果たすべき最も重要な役割は、「社会的課題の解決を事業の核に据え、経済的価値と社会的価値を同時に創出する存在になること」です。

(その根拠):

 これまでの企業活動がもたらした負の側面が深刻化する現代において、単に利益を追求するだけでは社会からの支持を得られず、持続的な成長は望めません。自社の事業活動が社会に与える影響に責任を持ち、課題解決に積極的に取り組むことこそが、企業の新たな存在意義となります。

(その具体例):

環境問題に対して:

 自動車メーカー(資料6)は、単に車を売るだけでなく、環境負荷のないモビリティサービスを提供する企業へと転換し、渋滞や環境問題の解決を目指すべきです。

労働問題に対して:

 企業(資料7)は、女性の社会進出といった社会の変化に対応するだけでなく、非正規雇用者などにも配慮した、より公平で柔軟な働き方を社会全体に広げる役割を担うべきです。

文化の多様性に対して:

 グローバル企業(資料4)は、一方的に自国文化を押し付けるのではなく、カップヌードル(資料3)が多様な食文化からヒントを得たように、進出先の文化を尊重し、新たな価値を共に創り上げていく姿勢が求められます。

■ 結論の吟味

 最後に、自分の出した結論を客観的に見直し、議論をより深めます。

(他の結論との比較):

 「社会課題の解決は政府やNPOの仕事であり、企業の役割はあくまで利益を上げることだ」という反論も考えられます。しかし、マクドナルド(資料4)や自動車産業(資料6)が世界に与える影響の大きさを考えれば、企業がその社会的責任から逃れることは現実的ではありません。むしろ、トヨタの創業者(資料5)が事業に「人生のおもしろみ」を見出したように、社会的責任を果たすことの中にこそ、新たな事業機会と成長の可能性があると言えます。

(最終的な結論の確認):

 したがって、将来の企業は、利益を生み出す「経済エンジン」としての役割に加え、社会をより良くする「社会変革のエンジン」としての役割を担うことが不可欠です。この両輪を力強く回していくことこそが、未来の産業社会における企業の理想的な姿であると結論付けます。

【答案】(958字)

 企業活動は我々の生活を豊かにする一方、様々な社会問題を引き起こす二面性を持つ。この前提に立ち、将来の産業社会において企業が担うべき役割とは何か。本稿では、企業は従来の利益追求モデルを超え、社会的課題の解決を事業の核に据えることで、経済的価値と社会的価値を同時に創出する存在へと進化すべきだと主張する。
 たしかに、これまでの企業は経済合理性の追求を通じて、我々の生活を格段に便利にしてきた。しかし、その結果として深刻な負の側面も生まれている。例えば、資料6では、自動車産業は人々に「移動の自由」という計り知れない恩恵をもたらしたが、その爆発的な普及は、交通渋滞や大気汚染といった新たな社会問題の温床となったと書いていた。また、資料4はファストフード産業のグローバル展開は、世界中の人々に手軽な食を提供する一方で、「マックワールド」と評される画一的な文化を広め、地域の食文化の多様性を脅かす一因となったと述べた。このように、経済的価値のみを至上命題とする事業活動は、意図せずして環境や文化といった社会的なコストを生み出してしまうのである。
 その上で、将来の企業に求められる役割とは、こうした事業活動がもたらす「影」の部分にこそ光を当て、その解決を新たな価値創造の機会と捉えることである。これは決して理想論ではない。資料5では、かつてトヨタ自動車の創業者は、単なる利益追求ではなく、政府の保護に頼らずに「国産独立」を成し遂げるという強い社会的責任感を事業の原動力としていたことが示されていた。この例が示すように、社会的使命の追求は、企業の持続的な成長を支えるイノベーションの源泉となりうる。企業が持つ技術、資本、そしてグローバルなネットワークを社会課題の解決のために活用することこそ、現代における新たな企業家精神と言えるだろう。
 したがって、将来の企業は、単なる「経済エンジン」ではなく、社会をより良くする「社会変革のエンジン」としての役割を担うことが不可欠となる。環境問題や労働格差といった複雑な課題に対し、企業がそのリソースを駆使して解決策を提示し、それを事業として成立させる。この経済的価値と社会的価値の両立こそが、未来の産業社会における企業の理想的な姿であり、その存在意義を確固たるものにする唯一の道筋であろう。

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