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上智大学 総合人間科学部 教育学科 帰国生入試 2019年 過去問解説

問1【解説】

 この問題は、提示された文章全体を400字以内で要約するものです。要約問題を解くためには、文章の核心的な主張と論理の展開を正確に把握し、それらを簡潔に再構成する能力が求められます。

ステップ1:文章全体の構造と主題の把握

 まず、文章全体を読み通し、何について書かれているのか、筆者は何を最も伝えたいのかを掴みます。この文章は、大きく以下の3つの要素で構成されています。

【問題提起】

 現代の学校教育、特に日本の教育は、子どもに知識を「教える」ことに偏りすぎており、その結果、子どもが「教えられる」ことに慣れ、自ら学ぼうとしない「良き教えられ手」になってしまう危険性を指摘しています。

【筆者の主張】

 本来の「学び」とは、既にもっている知識と新しい情報との間で違和感を覚え、それを解消しようとする知的な探求活動であると定義しています。その上で、人間は本来、知的好奇心を持ち自ら学ぼうとする存在であり、教師の役割は知識を一方的に与えることではなく、学習者の探求を支援することにあると述べています。

【結論・提案】

 子どもが学ばなくなる原因を、本人の意欲の欠如といった個人的な問題に帰するのではなく、むしろ学びを阻害している学習環境にこそ原因がある、と結論づけています。したがって、真の学びを取り戻すためには、学びを阻害する環境要因を分析し、改善していく視点が不可欠であると提案しています。
これらの要素から、文章全体の主題は「教えること中心の教育の弊害を指摘し、学習者主体の探求としての『学び』を回復させるための環境の重要性を論じること」であると理解できます。

ステップ2:要点の抽出とキーワードの選択

 次に、上記の構造から要約に盛り込むべきキーワードを抽出します。

  • 問題点: 良き教えられ手、教えられることに慣れる
  • 学びの本質: 探求、違和感、知的好奇心
  • 教師の役割: 支援者
  • 解決の方向性: 学習環境の分析と改善、阻害要因の除去
     これらのキーワードを軸にして、論理的なつながりを意識しながら文章を組み立てます。

ステップ3:構成と文章化(400字以内)

 最後に、抽出した要点を論理的に再構成し、400字以内の文章にまとめます。構成は、文章の流れに沿って「①問題提起 → ②学びの本来の姿 → ③解決策の提示」という流れが自然です。

  • まず、学校教育が子どもを自ら学ばない「良き教えられ手」にしてしまうという問題点を提示します。
  • 次に、本来の学びとは知的好奇心に基づく「探求」であり、教師は知識伝達者ではなく支援者であるべきだという筆者の主張を述べます。
  • 最後に、子どもが学ばない原因を個人ではなく学習環境に求め、その阻害要因を分析・改善することの重要性を述べて結論とします。
     この構成に沿って、冗長な表現を避け、各要素を簡潔に記述することで、指定字数内に要点を凝縮した解答を作成します。

問1【解答】(319字)

学校教育は、子どもを「教えられる」ことに慣れさせ、自ら学ぼうとしない「良き教えられ手」にしてしまうという課題を抱える。本来、学びとは既存の知識と新たな情報との間に生じる違和感や知的好奇心を出発点とする自発的な探求活動である。この苦しみを伴う過程において、教師は知識伝達者ではなく、学習者の知的な格闘を支える支援者でなければならない。人間は元来、世界への探求心を持ち、生涯学び続ける存在である。子どもが学習意欲を示さない場合、その原因を個人の資質に求めるのではなく、学びを阻害している学習環境にこそ見出すべきだ。したがって、学びを取り戻すためには、意欲を高める技術を追求するよりも、学びを阻害する環境要因を分析・改善することが不可欠である。

問2【解説】

 この問題は、下線部【教えられることに慣れることで、「良き教えられ手」となりすぎて、学べなくなる子どもたちがいる。】が「どういうことか」を簡潔に説明するものです。字面だけをなぞるのではなく、本文全体の文脈を踏まえて、筆者の意図を的確に解説する必要があります。

ステップ1:下線部の意味の分解と解釈

 まず、下線部を3つの要素に分解して、それぞれの意味を考えます。この分解から、「受動的な学習に慣れきった結果、一見すると優秀に見えるが、本質的な学習能力を失ってしまう」という逆説的な状況を説明する問題だとわかります。

「教えられることに慣れる」とは?

 教師から与えられる知識や課題、そして「正解」を、疑うことなく受動的に受け入れる学習スタイルが常態化している状態。

「良き教えられ手」となるとは?

 教師の指示を忠実に聞き、求められた答えを効率よく出すことに長けた生徒になること。表面的には「言うことをよく聞く、手のかからない良い子」に見える状態。

「学べなくなる」とは?

 上記の結果、本来の学習能力を失ってしまうこと。本文の文脈から、この「学び」とは、単に知識を暗記することではなく、より本質的で能動的な活動を指していると読み取れます。

ステップ2:本文との関連付けと論理の補強

 次に、なぜ「良き教えられ手」が「学べなくなる」のか、その理由を本文中から探し出します。

「学び」の出発点との対比:

 筆者は、本来の学びを「自分がこれまで当たり前だと思っていたこと」に新たな情報が加わった際に生じる「違和感」から出発する「探求活動」だと述べています。「もっと知りたい」という知的好奇心がその原動力です。

「学べなくなった」状態の具体像:

 下線部の直後には、「学べなくなった」子どもの姿として、「自らのありようを疑ったり、自らを取り囲む世界を捉え直そうとしたりしなくなる」「自ら問いをもって学ぶ学習者が育つには何が必要なのか」と書かれています。
これらの記述から、「教えられること」に慣れてしまうと、学びの原動力であるはずの「違和感」や「知的好奇心」を抱く機会そのものを失ってしまうことがわかります。その結果、自ら問いを立て、主体的に世界と向き合い、粘り強く考えるという本質的な意味での「学び」ができなくなる、という論理が見えてきます。

ステップ3:説明の構成と文章化

 最後に、上記の分析を基に、簡潔な説明文を作成します。以下の要素を論理的に繋げます。これらの要素を過不足なく盛り込み、「〜とは、〜ということ。」という形式でまとめます。

【前提】

 「教えられることに慣れる」とは、教師からの知識を受動的に受け入れる姿勢が定着すること。

【結果①】

 その結果、指示通りに正解を出すことに長けた「良き教えられ手」にはなる。

【結果②・理由】

 しかしその一方で、本来の学びの原動力である、世界に対する「違和感」や「知的好奇心」を失ってしまう。

【結論】

 そのために、自ら問いを立てて主体的に探求するという、本質的な意味での「学ぶ力」が育たなくなってしまう。

問2【解答】(196字)

教師から与えられる知識や課題を、疑うことなく受動的に受け入れる学習姿勢が常態化すること。それにより、指示されたことを効率よくこなす、一見すると優秀な「教えられ上手」な生徒にはなるが、本来の学びの出発点であるはずの、自分の知識と現実との間に生じる「違和感」や知的好奇心を抱けなくなってしまう。その結果、自ら問いを立て、主体的に世界を探求していくという本質的な学習能力を失ってしまう、ということ。

問3【解説】

 この設問は、課題文の読解力に加え、それを基に自分自身の考えを具体的に論じる構成力が問われる小論文問題です。テンプレートを活用して、思考のプロセスを組み立ててみましょう。

■ 議論の整理

 まず、自分の意見を述べるための土台として、課題文の議論を整理します。

(共通の前提)

 学校は子どもにとって重要な学びの場であるが、そのあり方には改善すべき点がある。

(議論の論点)

 この文章では、「学び」に対する二つの対立する考え方が示唆されています。

【一般論/現状の教育観】

 学びとは、教師が持つ知識や正解を、生徒に効率よく「教える」ことである。そのため、生徒は指示通りに知識を受け取る「良き教えられ手」になることが求められる。

【筆者の論】

 学びとは、生徒自身が世界との関わりの中で「違和感」を抱き、それを原動力として主体的に「探求」するプロセスである。子どもが学ばなくなるのは、意欲の問題ではなく、むしろこの「探求」を阻害する「学習環境」にこそ原因がある。
 このように、「教えること中心」か「探求すること中心」かという対立軸を明確にすることが、議論の出発点となります。

■ 問題発見

 議論の整理を踏まえ、この小論文で自分が何を論じるのか(=解くべき問い)を明確に設定します。

(問題の発見)

 筆者の指摘する通り、現代の学校教育が子どもの主体的な「学び」を阻害しているのだとすれば、その「阻害要因となっている学習環境」とは具体的に何であり、それを取り除いて真の「学びを取り戻す」ためには、どのような手立てが有効か。

■ 論証→なぜなぜ分析

 設定した問題について、その原因を深く分析します。ここでは「なぜなぜ分析」が有効です。

(論証A) なぜ子どもは主体的な「学び(探求)」をしなくなるのか?

 失敗を恐れて、効率よく「正解」にたどり着くことばかりを考えてしまうから。

(論証B) なぜ子どもは失敗を恐れ、「正解」ばかりを求めるようになるのか?

 学校の授業やテストが、結果としての「正解」のみを評価し、そこに至るまでの試行錯誤のプロセスを評価しないから。

(論証C) なぜ学校は「正解」のみを重視する評価を行うのか?

 限られた時間の中で、全ての生徒に画一的な知識を効率よく習得させることが教育の目的になってしまっているから。(根本原因)
 この分析により、「効率性・画一性を重視する教育システム」こそが、子どもの学びを阻害する根本的な環境要因であるという仮説を立てることができます。

■ 解決策 or 結論 or 結果

 論証で突き止めた根本原因(論証C)を取り除くための具体的な解決策を提示します。

(Cから導かれる解決策)

 効率性・画一性を重視する教育観から脱却し、生徒一人ひとりの主体的な「探求」のプロセスを尊重する学習環境を構築すべきである。そのための具体的な手立てとして、以下の二つを提案する。

  • 学習の出発点となる「問い」のあり方を変える。
  • 学習の過程を支える「評価」のあり方を変える。

(その根拠)

「問い」の変革:

 教師が正解のある問いを与えるのではなく、生徒自らが問いを立て、探求せざるを得ない課題解決型学習(PBL)などを導入する。これにより、生徒は受け身の姿勢から脱し、筆者の言う「違和感」から始まる主体的な探求者となることができる。

「評価」の変革:

 知識の暗記量といった結果だけでなく、探求のプロセス(思考の過程、挑戦、協働性)を評価する。これにより、生徒は失敗を恐れずに済む心理的安全性が確保され、安心して学びに取り組めるようになる。

■ 解決策 or 結論 or 結果の吟味

 提案した解決策が本当に有効か、多角的に検証して議論の精度を高めます。

(他の解決策との比較)

 筆者が間接的に批判している「学習意欲を高める小手先の技術」(例:ICT機器の導入や授業のゲーム化)も考えられる。しかし、それらは学習の構造を変えるものではないため、効果は一時的になりがちだ。今回提案した「問い」と「評価」の変革は、学習活動の構造そのものに働きかけるため、より本質的な解決策と言える。

(利害関係者検討)

 この解決策は誰にどのような影響を与えるか。

生徒:

 短期的には戸惑うかもしれないが、長期的には主体的に学ぶ力を得られる。

教師:

 授業設計の負担は増えるが、子どもの成長をより深く実感できるやりがいも生まれる。研修等の支援が不可欠。

社会:

 すぐに点数に現れない能力を評価する、長期的な視点が求められる。

(最終的な結論の確認)

 実行には困難も伴うが、子どもたちが未来を生き抜くために必要な主体的な探求力を育むためには、学習環境の構造的な変革が不可欠である。社会全体の理解を得ながら、教師への支援を充実させつつ、「問い」と「評価」を中心とした教育改革を進めていくべきである。

問3【解答】(549字)

 筆者は、現代の学校教育が子どもを受動的な「良き教えられ手」にし、主体的な探求としての学びを阻害していると指摘する。その原因は子どもの意欲ではなく、学びを阻害する学習環境にあるという筆者の見解に私も同意する。
 この問題に対し、私は学びを取り戻す手立てとして、学習環境の構造的変革、具体的には「問い」と「評価」のあり方を転換することが不可欠だと考える。
 まず、「問い」のあり方について、教師が単一の正解を求める問いを与えるのではなく、生徒自らが問いを立て探求する課題解決型学習を導入すべきだ。これにより、生徒は受け身の姿勢から脱し、筆者の言う「違和感」を原動力とする主体的な探求者となることができるからである。
 次に、「評価」のあり方も重要である。正答という結果のみを重視する評価は、生徒から挑戦する意欲を奪い、失敗を恐れる姿勢を植え付ける。そこで、探求のプロセスや試行錯誤そのものを評価の対象とすることで、生徒は心理的安全性を確保され、安心して学びに挑戦できるようになる。
 このように、「問い」と「評価」という二つの側面から学習環境を改革することは、子どもたちを「教えられる」客体から「学ぶ」主体へと変容させる。この構造的変革こそが、真の学びを取り戻すための最も有効な手立てであると私は結論づける。

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