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上智大学 総合人間科学部 教育学科 編入生試験 2019年 過去問解説

問1【解説】

 問題1について、5STEPsに沿って解説します。この問題は、①「反省的実践家」「専門家共同体」が求められるようになった背景と理論の説明、②それに対するあなたの考え、という2つの要素を論じることが求められています。

■ 議論の整理

 このセクションでは、問題文で問われている「背景」と「理論」を説明します。小論文全体の前提となる知識をここで明確に示します。

(共通の前提)なぜ今、教師の専門性が問い直されているのか?

 現代社会は、価値観の多様化、グローバル化、技術の進展などにより、予測困難で複雑な課題に満ちています。
 これに伴い、教育現場の課題も、いじめ、不登校、貧困、発達障害など、かつてないほど多様化・複雑化しています。

(議論の論点)求められる教師像の変化

旧来の教師像(技術的熟達者モデル):

 国が定めた指導要領の内容を、マニュアル通りに効率よく教える専門性。ここでは、教師は「知識の伝達者」と見なされます。

新しい教師像(反省的実践家モデル):

 予測不能な事態や、マニュアル通りにはいかない複雑な問題に直面した際に、自らの実践を客観的に振り返り(=反省)、状況に応じて創造的に解決策を見出していく専門性。これは、米国の哲学者ドナルド・ショーンが提唱した概念です。教師は、単なる伝達者ではなく、「学びの探究者・実践的研究者」となります。

「専門家共同体」の必要性:

 「反省的実践」は、教師一人の力では限界があります。同僚の教師たちとチーム(=専門家共同体)を組み、授業について対話したり、困難な事例を共有したりすることで、一人では乗り越えられない壁を突破し、組織全体として専門性を高めていくことが求められます。

■ 問題発見

 議論の整理を踏まえ、この小論文であなたが論じる中心的な「問い」を設定します。ここがあなたのオリジナリティの見せ所です。

(問題の発見)

  • 「『反省的実践家』や『専門家共同体』という理想は、今日の日本においてなぜ重要なのか?」
  • 「理想は重要だが、多忙を極める日本の教育現場で、教師が『反省的実践』を行ったり、『専門家共同体』を形成したりするには、具体的にどのような課題があり、どうすれば実現可能なのか?」
     後者のように、「理想」と「現実」のギャップに着目すると、より具体的で説得力のある論を展開しやすくなります。

■ 論証→なぜなぜ分析

 ここで、設定した「問題」の原因を分析し、あなたの主張の根拠を固めます。テンプレートの分析手法の中から、使いやすいものを選びましょう。ここでは「なぜなぜ分析」を使ってみます。

(論証A)なぜ「反省的実践」が難しいのか?

 教師が授業準備や生徒指導以外の業務(事務作業、部活動、保護者対応など)に追われ、自らの実践を振り返る時間的・精神的な余裕がないから。

(論証B)なぜ教師はそこまで多忙なのか?

 学校が学力向上だけでなく、生徒の心身のケアや家庭が抱える問題への対応など、社会からの過剰な期待を一身に背負っているから。また、昔ながらの画一的な学校運営体制が、柔軟な働き方を阻害しているから。

(論証C)なぜ学校は過剰な期待を背負ってしまうのか?

 地域社会のつながりが希薄化し、かつて地域が担っていた子育て機能が学校に集中しているから。そして、教育行政がトップダウン型であり、個々の学校や教師が自律的に業務を改善したり、外部と連携したりする文化が根付いていないから。

■ 解決策 or 結論

 論証で明らかになった根本原因(論証C)に対する具体的な解決策を提示します。

(Cから導かれる解決策):

 教師が「反省的実践」に集中できる環境を、学校内部の努力だけでなく、教育システム全体で構築する必要がある。具体的には、トップダウン型の行政を見直し、学校に裁量権を与え、教師が自律的に協働できる文化を醸成することが不可欠である。

(その具体例):

 スクールカウンセラーや地域人材を積極的に活用し、チーム学校(チームとしての学校)として、教師の業務負担を軽減する。
 教員評価の仕組みを見直し、同僚と協働して授業改善に取り組むプロセス(専門家共同体の形成)を評価する。
 単発の研修ではなく、日常的に教師同士が授業を見せ合い、対話する「授業研究」の時間を制度として確保する。

■ 解決策の吟味

 提示した解決策を客観的に評価し、議論を深めます。

(他の解決策との比較):

 「教師個人の意識改革を求める」だけでは、精神論に過ぎず、多忙な現状では実効性が低い。システム全体の改革こそが本質的な解決策である。

(利害関係者検討):

 この改革には、管理職のリーダーシップ、教育委員会の理解、そして保護者や地域住民の協力が不可欠である。例えば、部活動の外部指導員への移行には、保護者の理解を得るための丁寧な説明が必要になるだろう。

(最終的な結論の確認):

 結論として、これからの教師に求められる「反省的実践家」への転換は、単に教師個人の努力に依存するものではない。それは、教師が互いに学び合い、専門性を高められる「専門家共同体」を学校内に築き、それを支える教育行政や地域社会の協力体制を構築することによって初めて実現する。この転換こそが、複雑化する現代社会の教育課題を乗り越えるための鍵となるだろう。

問1【解答】(558字)

 現代社会は価値観の多様化やグローバル化により複雑性を増し、教育現場が直面する課題もいじめや貧困など、かつてなく多様化している。このような背景から、教師には従来のマニュアル通りに知識を伝達する「技術的熟達者」としてではなく、予測困難な事態に直面した際に自らの実践を省みて創造的に解決策を見出す「反省的実践家」としての専門性が求められるようになった。
 しかしながら、この理想を実現するには大きな課題が存在する。なぜなら、今日の教師は授業や生徒指導以外の事務作業や部活動、保護者対応といった多岐にわたる業務に追われ、自らの実践をじっくりと振り返る時間的・精神的余裕を失っているのが現状だからである。そして、その根本的な原因は、学校に過剰な役割を期待する社会構造と、個々の学校の自律性を制限するトップダウン型の教育行政にある。
 したがって、真に求められるのは教師個人の努力や意識改革に依存することではない。むしろ、教師が同僚と対話し協働する「専門家共同体」を形成し、反省的実践に集中できる環境をシステムとして構築することが不可欠である。具体的には、外部人材の活用による業務負担の軽減や、協働的な授業研究の時間を制度的に保障するといった、教育システム全体の改革こそが、現代の複雑な教育課題を乗り越えるための鍵となるのである。

問2【解説】

1. 問いの分解とキーワードの確認

 まず、問題文を分解し、何を求められているかを正確に把握します。ここでのポイントは、抽象的な理念(例:「国際感覚の醸成が必要」)を述べるだけでなく、それがなぜ「課題」なのか、教育現場でどのような困難や矛盾として現れているのかを具体的に示す必要がある、ということです。

  • テーマ: グローバル化の進展
  • 対象: 日本の教育
  • 問われていること: どのような「課題」があるか
  • 条件: 「具体的に」述べること

2. 論点のブレインストーミング

 次に、「グローバル化」というキーワードから連想される教育課題を複数挙げ、整理します。

言語・コミュニケーション:

 英語教育では読む・書くだけでなく、「使える」英語能力の育成が急務である。

課題:

 教員の指導力、入試制度とのズレ、異文化コミュニケーション能力の育成。

人の移動・多様性:

 外国にルーツを持つ児童生徒の増加。

課題:

 日本語教育の支援体制(JSL)、文化・宗教・習慣の違いへの対応、いじめや偏見の防止、インクルーシブな環境づくり。

経済・社会システム:

 グローバル社会で求められる能力(21世紀型スキル)の変化。

課題:

 従来の知識詰め込み型教育から、思考力・判断力・表現力、主体性、協働性を育む教育への転換の難しさ。大学入試改革との関連。

情報・価値観:

 インターネットを通じた多様な価値観との接触。

課題:

 情報リテラシー教育(偽情報への対処)、自国の文化や歴史への理解とアイデンティティの確立。

3. 論点の絞り込みと構成の決定・文例

 挙げた論点の中から、最も重要で、かつ具体的に論じやすいものを2〜3点に絞ります。今回は、多くの受験生が論じやすい「①多様な文化背景を持つ子どもへの対応」と「②グローバル社会で求められる能力の育成」を柱に据えることにします。
その上で、指定されたPREP法に沿って構成を組み立てます。

P (Point: 結論):

グローバル化が日本の教育にもたらす中心的な課題を2点で要約して提示する。

R (Reason: 理由):

 なぜそれらが「課題」と言えるのか、その背景を説明する。

  • ①多様性への対応:従来の均質的な学校システムでは対応しきれないから。
  • ②能力育成:既存の教育システムや評価制度と、求められる能力との間に「ズレ」があるから。

E (Example: 具体例):理由を裏付ける具体的な事例を挙げる。

  • ①日本語指導が必要な生徒が孤立する、教員の専門知識が不足している、など。
  • ②英語教育がコミュニケーション重視にならない、探究学習が入試に結びつきにくい、など。

P (Point: 結論の再確認):全体の論点を再度まとめ、課題解決の方向性を簡潔に示して締めくくる。

 このプロセスを経ることで、論理的で説得力のある答案を作成することができます。

【結論】

 グローバル化の進展は、日本の教育に対し、主に「多様な文化背景を持つ児童生徒への対応」と「世界で通用する新たな能力の育成」という二つの側面から具体的な課題を投げかけている。

【理由】

 第一に、国内の人の移動が活発化し、外国にルーツを持つ児童生徒が増加したことで、これまで比較的均質的であった日本の学校環境が大きく変容したからである。すべての子供たちの学習権を保障するためには、言語や文化の違いを乗り越える支援体制が不可欠であるが、多くの学校現場ではそのための専門性やリソースが追いついていない。第二に、グローバル経済で求められる能力が、知識の量ではなく、主体的な課題解決能力や協働性、批判的思考力へと変化しているからである。しかし、日本の教育は依然として知識偏重の大学入試制度の影響が強く、こうした新しい能力を育む教育への転換がスムーズに進んでいないという構造的な問題を抱えている。

【具体例】

 例えば、前者については、日本語指導が必要な生徒が授業内容を理解できずに学習から取り残されたり、文化的な習慣の違いから学校生活に馴染めなかったりする事例が後を絶たない。教員自身も、個々の生徒の背景に配慮した指導を行うための専門知識を十分に持っていない場合が多い。また、後者については、英語教育において実践的なコミュニケーション能力の重要性が叫ばれながらも、授業は依然として入試対策の文法や読解に偏りがちである。さらに、思考力を養うための探究学習を導入しても、最終的には知識の暗記量を問う入試で評価されるという矛盾も生じている。

【結論の再確認】

 したがって、グローバル化という大きな変化に対応するためには、日本語指導体制の整備や教員の専門性向上といった喫緊の課題に取り組むと同時に、画一的な知識偏重の教育から、多様性を受容し主体的な思考力を育む教育システムへと、入試制度も含めた長期的視点での転換を果たしていくことが急務である。

問2【解答】(346字)

 グローバル化の進展は、日本の教育に「多様な文化背景を持つ児童生徒への対応」と「世界で通用する能力の育成」という二つの大きな課題を投げかけている。
 第一に、外国にルーツを持つ子供が増加する一方、学校現場では日本語指導などの支援体制が追いついていない。これにより、子供たちが学習から孤立する事態が生じている。第二に、グローバル社会で求められる思考力や協働性を育む教育への転換が、知識偏重の大学入試制度に阻害されている点だ。例えば、探究学習を導入しても、知識の暗記を問う入試との間で矛盾が生じ、実践的な能力が育ちにくい。
 これらの課題を解決するには、個々の教員の努力に依存するだけでなく、多様性を受容し主体的な学びを促す教育へと、入試制度も含めたシステム全体の転換を果たしていくことが急務である。

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