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上智大学 総合人間科学部 心理学科 カトリック推薦入試 2018年 過去問解説

【解説】

 この課題は、「(病気、貧困、災害など)何があっても安全と幸福が保証されている社会を実現すべきである」という主張(以下、「絶対的保証社会」と呼びます)に対して、①考えうる反論を3つ挙げること、そして②その反論それぞれに対する自分の意見を述べること、という2点が求められています。

■ 議論の整理

課題文の内容の要約:

 ここで扱うべきテーマは、「絶対的保証社会」の是非です。この社会は、病気や貧困といった個人の努力だけではどうにもならないリスクから人々を守る、非常に理想的な社会像として提示されています。

(議論の論点):

 課題文の主張は「絶対的保証社会は実現すべきである」という理想論です。これに対し、小論文では「その理想は本当に可能なのか?」「実現した場合に新たな問題は生じないか?」といった現実的な視点から反論を組み立て、議論を深めていく必要があります。

■ 問題発見

(問題の発見):

 この小論文であなたが答えるべき問いは、「『絶対的保証社会』という理想を掲げることの意義を認めつつも、その実現に伴う潜在的な問題点を多角的に指摘し、より現実的で望ましい社会のあり方を考察すること」と言えます。単に反対意見を並べるだけでなく、それらを踏まえて「では、どう考えるべきか」という自分なりの立場を明確にすることがゴールです。

■ 論証

 この課題では、明確に「反論を3つ」と指定されているため、論証パートでは3つの反論をそれぞれ独立した柱として展開するのが書きやすいでしょう。ここでは「言い分方式」の応用が非常に有効です。

□ 反論1:個人の意欲や努力を削いでしまうのではないか?

利害関係者Bの主張(反論): 「何があっても安全と幸福が保証されるのであれば、人々は困難な課題に挑戦したり、努力したりする意欲を失ってしまうのではないか。社会全体の活力が低下する危険性がある。」

仲裁者Cの主張(自分の意見):

(賛成の立場):

 「たしかに、過剰な保証は人間の『ハングリー精神』を奪う可能性がある。最低限の生活が保証されることで満足し、それ以上の成長を望まない人が増えるかもしれない。」

(反対の立場):

 「しかし、実際には『失敗しても大丈夫』という安心感があるからこそ、人々はリスクを恐れずに新しい挑戦ができるのではないか。セーフティネットは挑戦の土台となるはずだ。」

(中立の立場):

 「保証の『程度』が問題であろう。挑戦を促すような最低限の保証は必要だが、努力の有無にかかわらず誰もが同じ幸福を得られるような過剰な保証は、意欲低下につながるため避けるべきだ。」

□ 反論2:「幸福」の価値観を国家が押し付けることにならないか?

利害関係者Bの主張(反論):

 「そもそも『幸福』の形は人それぞれである。国家が『これが幸福だ』と定義し、それを一律に保証しようとすることは、個人の多様な価値観や自由を侵害する全体主義的な社会につながる危険がある。」

仲裁者Cの主張(自分の意見):

(賛成の立場):

  「その通りだ。例えば、物質的な豊かさを幸福と感じる人もいれば、精神的な充足を求める人もいる。国家が保証できるのはあくまで『安全』のような客観的な指標までであり、『幸福』という主観的な領域にまで踏み込むべきではない。」

(反対の立場):

 「いや、個人の幸福追求も、健康や教育、安定した生活といった社会的な基盤があってこそ可能だ。国家がその基盤を保証することは、個人の自由な幸福追求をむしろ支援することになる。」

□ 反論3:無限の保証を実現するための資源はどこにあるのか?

利害関係者Bの主張(反論):

 「病気、貧困、災害など、世の中のあらゆるリスクから全ての人を守るためには、無限に近いコスト(財源や人的資源)が必要になる。そのような理想は、有限な資源の中では根本的に実現不可能ではないか。」

仲裁者Cの主張(自分の意見):

(賛成の立場):

 「全くその通りで、理想論に過ぎない。増税には限界があり、全ての不幸をなくすことは不可能だ。優先順位をつけ、限られた資源をどこに配分するべきかという現実的な議論が必要である。」

(反対の立場):

 「実現不可能だと諦めるのではなく、この理想を社会が目指すべき『北極星』のような目標として掲げ続けることに意味がある。AIやテクノロジーの発展により、将来的にはコストの問題を克服できるかもしれない。」

■ 結論

(Cから導かれる結論):

 上記の3つの論証(反論と自分の意見)をまとめます。「『絶対的保証社会』は、①個人の意欲、②価値観の多様性、③有限な資源という3つの観点から重大な課題を抱えている。」

(その根拠):

 各論証で展開した自分の意見を要約します。「過剰な保証は活力の低下を招き、一律の幸福観は自由を侵害し、そして理想の実現には無限のコストがかかるため、この主張を無条件に受け入れることはできない。」

(最終的な結論):

 「したがって、『何があっても保証される社会』を文字通りに目指すのではなく、あくまでそれを究極の理想としつつ、現実的には『誰もが挑戦できるための最低限のセーフティネットが整備された社会』を目指すべきだ」といった形で締めくくります。

■ 結論の吟味

(最終的な結論の確認):

 この結論は、元の主張を単純に否定するのではなく、「理想は認めつつ、現実的な問題点を指摘し、より実現可能な代替案を提示する」という多角的でバランスの取れた着地点になっています。小論文の締めくくりとして、独りよがりではない説得力のある意見と言えるでしょう。

【解答】 (968字)

 「何があっても安全と幸福が保証されている社会」は、人類が目指す理想郷の一つだろう。個人の努力で抗えぬリスクから解放される社会は、確かに魅力的だ。しかし、この理想を無条件に追求することには、いくつかの問題点が潜む。本稿では、三つの反論を挙げ、それぞれについて考察したい。
 まず、過剰な保証は個人の意欲を削ぎ、社会の活力を低下させる危険がある。たしかに、「何もしなくても安全と幸福が手に入る」のであれば、困難に挑戦しようという気概は失われかねない。しかし、私は、保証の「程度」こそが重要だと考える。失敗を恐れずに挑戦できる最低限のセーフティネットは、むしろ人々の可能性を広げる土台となる。努力に関わらず結果が一律となる過剰な保証ではなく、挑戦を支えるための基盤としての保証こそが必要である。
 次に、「幸福」という主観的な価値を国家が一律に定義し、保証することへの懸念がある。そもそも幸福の形は人それぞれであり、ある人にとっての幸福が、別の人にとってはそうでない場合もある。国家が単一の幸福像を押し付ければ、それは個人の価値観の多様性を否定し、自由を侵害する全体主義的な社会につながる恐れがある。ゆえに国家が保証すべきは、人々が幸福を追求する基盤となる教育や医療といった客観的な「安全」に限るべきだろう。
 さらに、あらゆるリスクから全ての人を守るための資源は有限であるという現実的な制約がある。病気、災害、貧困など、対応すべき課題は無数に存在するが、それら全てに万全の保証を与えるための財源や人材には限りがある。それゆえ、「絶対的な保証」は理想論に過ぎないという指摘は的を射ている。この理想を実現不可能だと切り捨てるのではなく、社会が目指すべき目標として掲げつつ、限られた資源をどこに優先的に配分すべきかという冷静な議論が不可欠だ。
 以上のことから、「絶対的保証社会」の実現は、個人の意欲、価値観の多様性、そして資源の制約という三つの観点から課題を抱えていることがわかる。この主張は、文字通り実現を目指す政策目標ではなく、我々が進むべき方向を示す理想として捉えるべきだ。そして、その理想を胸に、現実的には誰もが自らの幸福を追求するための挑戦ができる、強固なセーフティネットを備えた社会を構築することこそが、我々の目指すべき道だと結論づける。

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