問1【解説】
1. 問題の把握:
問題1で問われている9つの心理学用語を正確にリストアップする。
- (1) ステレオタイプ (stereotype)
- (2) 認知的斉合 (cognitive dissonance)
- (3) 効果量 (effect size)
- (4) 学習性無力感 (learned helplessness)
- (5) 抗精神病薬 (antipsychotic drugs)
- (6) 正の罰 (positive punishment)
- (7) シナプス (synapse)
- (8) 記憶の系列位置効果 (serial position effect in memory)
- (9) ストレンジ・シチュエーション法 (strange situation procedure)
2. 知識の検索と整理:
各用語について、心理学の専門知識に基づき、簡潔かつ正確な説明を作成する。特に、鍵となる概念(例:認知的不協和における「不快感」)を漏れなく含めるように留意する。
3. 解答の記述:
専門用語を噛み砕き、平易な言葉で説明する。英語の専門用語も併記されているため、そのニュアンスも考慮に入れる。
問1【解答】
(1) ステレオタイプ:
特定の人々の集団に対して、多くの人が抱く固定的で過度に単純化された観念やイメージのこと。例えば、「血液型がA型の人は几帳面だ」といったものが挙げられる。必ずしも否定的な内容とは限らないが、個人の多様性を無視し、偏見や差別の原因となることがある。
(2) 認知的斉合:
人が自身の信念や態度と、実際の行動との間に矛盾を感じた際に生じる不快な緊張状態のこと。L.フェスティンガーによって提唱された。人はこの不快感を解消するために、自身の信念や態度、あるいは行動のいずれかを変化させようと動機づけられる。
(3) 効果量:
統計的検定において、観察された現象の大きさや、変数間の関連の強さを示す指標。p値(有意確率)が「統計的に有意かどうか」を示すのに対し、効果量は「その差や関連が、実質的にどの程度の意味を持つのか」を示す。研究のメタアナリシス(複数の研究結果を統合する分析)などで重視される。
(4) 学習性無力感:
長期間にわたり、回避不可能な不快な状況に置かれた結果、その後の状況が回避可能であるにもかかわらず、何も対処しようとしなくなる状態。M.セリグマンが犬を用いた実験で提唱した。うつ病のモデルとしても知られている。
(5) 抗精神病薬:
主に統合失調症などの精神病性障害の治療に用いられる薬物。幻覚や妄想といった陽性症状を軽減する効果がある。ドーパミンなどの脳内神経伝達物質の働きを調整することによって作用すると考えられている。
(6) 正の罰:
ある行動の直後に、その行動主にとって不快な刺激(嫌悪刺激)を提示することで、将来のその行動の生起頻度を減少させる手続きのこと。オペラント条件づけにおける罰の一種。「正」とは刺激が「与えられる」ことを意味する。例えば、子どもが宿題をしなかった罰として、嫌いなピーマンを食べさせるような場合を指す。
(7) シナプス:
神経細胞(ニューロン)同士の接合部のこと。神経細胞は、このシナプスを介して、神経伝達物質を放出・受容し、情報の伝達を行っている。学習や記憶は、シナプスの伝達効率が変化すること(シナプス可塑性)によって生じると考えられている。
(8) 記憶の系列位置効果:
複数の項目を連続して記憶する際、系列の最初の方に提示された項目(初頭効果)と、最後の方に提示された項目(新近性効果)が、中間の項目よりもよく再生される現象。初頭効果はリハーサルによる長期記憶への転送、新近性効果は短期記憶(作動記憶)に情報が残っているためと説明される。
(9) ストレンジ・シチュエーション法:
M.エインズワースが乳幼児と養育者との間の愛着(アタッチメント)の個人差を測定するために開発した実験手続き。母親と乳幼児が知らない部屋に入り、見知らぬ他者の入室や母親の退室・再会といった一連の場面を通して、乳幼児が示す行動を観察し、愛着のタイプ(安定型、回避型など)を評価する。
問2【解説】
1. 問題の把握:
問題2で問われている3つの設問を正確にリストアップする。
(1)
心理学の実験における無作為割り付けの説明と、それが重視される理由。
無作為割り付け(ランダムアサインメント)の定義
心理学の実験において、参加者を実験群や統制群といった異なる条件のグループに振り分ける際に、乱数表やコンピュータなどを用いて、各参加者がいずれかのグループに割り当てられる確率が等しくなるように手続きを行うことである。
無作為割り付け(ランダムアサインメント)が重視される理由
実験者が検証したい独立変数(原因)以外の、結果に影響を与えうる様々な要因(剰余変数)を、各グループに均等に分布させるためである。
(2)
問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングのそれぞれの例、利点、留意点。
問題焦点型コーピング
例:
試験の成績が悪く悩んでいる学生が、次の試験に向けて学習計画を立て直し、苦手科目を集中的に勉強する。
利点:
ストレスの原因そのものに直接働きかけるため、問題が解決されれば、根本的にストレスを低減させることができる。
留意点:
ストレッサーが自分自身の力でコントロール不可能な場合(例:身近な人の死)、この方略は有効に機能せず、かえって無力感を増大させる可能性がある。
情動焦点型コーピング
例:
大事な試合で負けてしまい、悔しくてたまらない選手が、友人に話を聞いてもらったり、好きな音楽を聴いて気分転換を図ったりする。
利点:
ストレッサー自体をすぐに変えられない状況でも、それによって引き起こされる不快な感情を和らげ、心理的な安定を保つのに役立つ。
留意点:
気分転換に終始し、問題の解決から目を背けてしまうと、根本的なストレス状況は変わらないままである。一時的な気晴らしに過ぎず、長期的には不適応的な結果を招くこともある。
(3)
心理検査以外の心理アセスメント方法と、それによって分かること。ここでは、「面接法」と「行動観察法」を挙げる。
2. 知識の検索と整理:
各設問に対し、関連する心理学の理論や概念を整理する。
(1)
実験研究における「剰余変数の統制」という概念と、内的妥当性の確保という目的を明確にする。
具体的な記述例
ある学習法の効果を検証する実験で、参加者の元々の学力や動機付けに偏りがあっては、学習法の真の効果は測定できない。無作為割り付けを行うことで、そうした個人差などの剰余変数が、特定のグループに偏る可能性を確率的に最小限に抑えることができる。これにより、観察された結果(従属変数)の変化が、独立変数の操作によるものであると結論づけることの確からしさ(内的妥当性)が高まる。
(2)
ストレスコーピング理論に基づき、2つのコーピングの機能と適用場面の違いを対比させて説明する。
ストレスコーピング理論の定義
ストレスの原因(ストレッサー)や、それによって引き起こされる感情的な苦痛に対処しようとする認知・行動的努力のことである。
(3)
代表的な心理アセスメントである「面接法」と「行動観察法」を挙げ、それぞれの方法で得られる情報の質的な違いを明確にする。
① 面接法
方法:
心理職がクライエントと直接対話し、主訴、生育歴、生活状況、現在の感情や思考などについて話を聞く方法。構造化面接、半構造化面接、非構造化面接などの種類がある。
分かること:
この方法によって、クライエントが自分自身のことをどのように認識し、経験しているかという主観的な世界を深く理解することができる。また、言葉の内容だけでなく、話し方、表情、態度といった非言語的な情報も得られ、クライエントとの信頼関係(ラポール)を築く上でも不可欠である。
② 行動観察法
方法:
クライエントの行動を、自然な状況(例:学校での休み時間の様子)や、特定の課題が与えられた状況(例:親子での共同作業)で直接観察し、記録する方法。行動の頻度や持続時間などを客観的に測定する。
分かること:
この方法によって、クライエントが報告する主観的な内容(面接で語られること)と、実際の行動との一致や相違を知ることができる。例えば、「友達と仲良くできない」と話す子どもが、実際に他者とどのように関わっているかを具体的に把握できる。これにより、言語的な自己報告だけでは得られない、客観的で具体的な情報を得ることができ、支援計画を立てる上で重要な手がかりとなる。
3. 解答の記述:
専門的な内容を、論理的かつ分かりやすく記述する。
問2【解答】
(1) 心理学の実験における無作為割り付けとその理由
作為割り付けとは、心理学の実験で参加者を実験群や統制群に振り分ける際、乱数表やコンピュータを用いて各参加者がどの群にも等しい確率で割り当てられるようにする手続きである。この方法が重視されるのは、独立変数以外に結果へ影響を及ぼしうる個人差や背景要因といった剰余変数を、各グループに均等に分布させるためである。例えば学習法の効果を検証する際、参加者の学力や動機付けに偏りがあると、学習法そのものの効果を正確に測定できない。無作為割り付けによってこうした偏りが確率的に最小化され、観察された結果の変化が独立変数の操作に起因すると判断できる確からしさ、つまり内的妥当性が高まる。そのため無作為割り付けは、因果関係を適切に推論するための実験研究に不可欠な手続きとなっている。
(2) 問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピング
ストレスコーピングとは、ストレッサーやそれに伴う不快感情に対処するための認知・行動的努力を指し、問題焦点型と情動焦点型に大別される。問題焦点型コーピングは、学習計画の立て直しなど、原因そのものに働きかけてストレスの根本的解消を図る方法であり、問題を自力で変えられる場合に有効である。ただし、死別のようにコントロール不能な状況では無力感を強める可能性がある。一方、情動焦点型コーピングは、友人に相談したり音楽で気分転換をしたりして、変えられない状況に伴う感情を和らげる方法である。しかし気分転換のみで問題解決を避け続けると、ストレス源が残り不適応につながる恐れがある。
(3) 心理検査以外の心理アセスメント方法
心理アセスメントには、検査以外に面接法と行動観察法がある。面接法は、心理職がクライエントと対話し、主訴、生育歴、感情や思考などを聞き取る方法で、構造化・半構造化・非構造化の形式がある。言語内容だけでなく、表情や態度などの非言語情報も得られ、クライエントの主観的世界の理解やラポール形成に役立つ。一方、行動観察法は、学校場面や課題場面などでクライエントの行動を直接観察し、頻度や持続時間を客観的に記録する方法である。これにより自己報告と実際の行動の一致・相違を把握でき、具体的で客観的な情報を得て支援計画の精度を高めることができる。



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