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上智大学 法学部 地球環境法学科 公募制推薦入試 2019年 過去問解説

【解説】

■ 議論の整理

課題文の内容の要約:

 世界的に観光客の急増が「オーバーツーリズム」を引き起こし、地域の生活環境や自然環境に負の影響を与え、観光客の満足度も低下させている。これに対し、国連のSDGsやUNWTOの指針を受け、日本でも観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設置し、観光客と地域住民の共存・共生に関する対応策を検討するなど、「持続可能性」を追求することが喫緊の課題となっている。

着眼点:

 課題文全体の趣旨を正確に把握し、オーバーツーリズムが引き起こす問題点(地域住民の生活環境・自然環境への負の影響、観光客満足度の低下)と、「持続可能な観光」の必要性が高まっている背景(SDGs、UNWTOの指針、観光庁の取り組み)を明確に提示できているか。

問題を解く上で前提となる事実のまとめ:

  • 観光客の急増がオーバーツーリズムを引き起こしている。
  • オーバーツーリズムは、地域の生活環境、自然環境に負の影響を与え、観光客の満足度も低下させる。
  • SDGsやUNWTOの指針により、「持続可能な観光」の重要性が高まっている。
  • 日本でも観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設置し、対応策を検討中。
着眼点:

 課題文中の具体的な事実(オーバーツーリズムの定義、SDGs・UNWTO・観光庁の取り組み)を正確に抽出し、問題の背景となる客観的事実として整理できているか。

共通の前提:

 観光は経済発展に寄与する一方で、その持続可能性を確保するためには、環境や地域社会への配慮が不可欠である。

着眼点:

 課題文の根底にある、観光の経済的側面と社会的・環境的側面とのバランスの重要性を捉え、議論の出発点として適切に設定できているか。

議論の論点:

 観光客増加によるオーバーツーリズムが引き起こす具体的な問題と、それらを解決し、観光の「持続可能性」を確保するための具体的な方策。

着眼点:

 課題文が提起する核心的な対立点や矛盾(観光客増加による経済効果と負の影響)を明確に言語化し、小論文で深掘りすべきテーマとして提示できているか。

■ 問題発見

問題の発見:

 観光客の急増が引き起こすオーバーツーリズムは、地域の生活環境や自然環境に負の影響を与え、観光客自身の満足度も低下させるという多面的な問題である。この問題に対し、「持続可能な観光」とは具体的に何を指し、日本または世界の観光地における具体的な問題事例を挙げながら、その実現に向けた具体的な方策は何か。

着眼点:

 課題文から導かれる具体的な問い(「持続可能な観光」とは何か、具体的な問題事例と解決策)を明確かつ簡潔に設定できているか。小論文全体の方向性を示す問いとなっているか。

■ 論証1: なぜなぜ分析

 課題文が「外国人旅行客増加に伴う具体的な問題事例を挙げながら」と問うているため、問題の根本原因を深掘りし、その構造を明らかにするのに最も適した論証方法であると判断した。多層的な原因を構造的に示すことで、問題の複雑性を浮き彫りにし、説得力を高めることができる。

着眼点:

 オーバーツーリズムが問題となる根本原因を多層的に掘り下げ、論理的な因果関係を「なぜなぜ」の形式で明確に示せているか。表面的な原因(観光客増加)だけでなく、その背景にある受け入れ体制の不備や観光収入の還元構造まで分析できているか。

(論証A) オーバーツーリズムが問題となる原因:

 観光客の増加に対して、地域の受け入れ体制(インフラ、住民意識、環境容量)が追いついていないため。

(論証B) 受け入れ体制が追いつかない原因:

 観光客誘致が経済効果を優先し、地域住民の生活や環境への配慮が後回しにされがちであること、観光客の行動規範が十分に共有されていないこと、観光収入が地域に還元されにくい構造があること。

(論証C) 観光収入が地域に還元されにくい構造がある原因:

 観光産業が大手旅行会社や宿泊施設に集中し、地域の中小事業者や住民がその恩恵を受けにくいこと、観光客が地域固有の文化や自然に触れる機会が少なく、消費が限定的であること。

■ 論証2: 演繹法

 課題文が「『持続可能な観光』とは何か」と問うているため、その定義を明確にした上で、具体的な事例に適用して問題点を指摘し、解決策の必要性を論理的に示すのに適していると判断した。これにより、提案する解決策の普遍的な妥当性を補強できる。

着眼点:

 一般的な原則(「持続可能な観光」の定義)から出発し、京都市のオーバーツーリズム問題という具体例に適用することで、問題の深刻さと解決の必要性を論理的に導き出せているか。具体例を効果的に引用できているか。

ルールを定立する:

 「持続可能な観光」とは、観光が地域の環境、社会、文化、経済に与える影響を十分に考慮し、現在および将来の観光客と地域住民のニーズを満たす観光のあり方である。これは、環境保全、地域社会の尊重、経済的公平性の三つの側面から評価されるべきである。

具体例を紹介する:

 京都市では、外国人観光客の急増により、バスの混雑、ゴミ問題、住宅地の騒音、マナー違反などが深刻化し、地域住民の生活に支障をきたしている。また、観光客自身も混雑による移動の不便さや、静かに観光を楽しめないといった不満を抱えている。これは、観光が地域の環境、社会、文化に負の影響を与え、観光客の満足度も低下させている典型的な事例である。

具体例をルールに当てはめる:

 京都市のオーバーツーリズム問題は、「持続可能な観光」のルールに照らせば、環境保全、地域社会の尊重、経済的公平性のいずれの側面においても課題を抱えていると言える。観光客の増加が地域住民の生活の質を低下させ、観光客自身の満足度も損なう現状は、持続可能な観光とはかけ離れた状態であり、早急な対策が求められる。

■ 結論

(Cから導かれる結論):

 観光収入が地域に適切に還元される仕組みを構築し、地域住民が観光の恩恵を実感できるような観光振興策を推進すること。

着眼点:

 論証で明らかになった根本原因(観光収入の地域還元不足)に対応する形で、具体的な解決の方向性(地域還元促進、住民の恩恵実感)を提示できているか。

(その根拠):

 地域住民が観光の恩恵を実感することで、観光客への理解と協力が得られやすくなり、観光客と地域住民の共存・共生が促進される。また、地域経済の活性化は、観光客の受け入れ体制の強化にも繋がり、オーバーツーリズム問題の緩和に貢献する。

着眼点:

 提案する解決策が、住民の理解と協力、共存・共生、地域経済活性化、受け入れ体制強化といった多角的なメリットをもたらすことを論理的に説明できているか。

(その具体例):

地域密着型観光商品の開発:

 地域固有の文化体験、自然体験、食体験など、地域住民が主体となって提供する観光商品を開発し、観光客の消費を地域に誘導する。

地域通貨の導入:

 観光客が地域内で利用できる地域通貨を導入し、観光収入が地域内で循環する仕組みを構築する。

観光客からの協力金徴収:

 宿泊税や入域料などの形で観光客から協力金を徴収し、その収益を地域の環境保全やインフラ整備、住民サービス向上に充てる。

住民参加型観光計画:

 観光計画の策定段階から地域住民が参加し、住民の意見を反映させることで、観光客と住民の共存・共生を図る。

着眼点:

 提案する解決策を裏付ける具体的な施策(地域密着型観光商品、地域通貨、協力金徴収、住民参加型計画など)を複数挙げ、実現可能性と具体性を示せているか。

■ 結論の吟味

(他の結論との比較):

 単に観光客数を制限するだけでは、経済効果が失われ、地域経済に悪影響を与える可能性がある。また、インフラ整備のみでは、根本的な住民との摩擦や環境負荷の増大を解決できない。本提案は、経済的側面と社会的・環境的側面を両立させ、地域住民の主体的な関与を促すことで、より持続可能かつ包括的な解決策である。

着眼点:

 提案する解決策の優位性を、他の単純な解決策(観光客数制限、インフラ整備のみ)と比較することで明確に示し、多角的な視点から妥当性を検証できているか。

(利害関係者検討):

得をする者:

 地域住民(生活環境の改善、経済的恩恵)、観光客(満足度の向上、質の高い体験)、地域の中小事業者(経済的恩恵)、観光地(持続可能な発展)。

損をする者:

 特になし(ただし、観光客は協力金などの負担が増える可能性はある)。

仲裁者:

 自治体は、観光客と地域住民の双方のニーズを調整し、持続可能な観光を実現するための政策立案と実行を担う。

着眼点:

 提案する解決策が、どのような主体にどのような影響を与えるかを分析し、その公平性や実現可能性を検討できているか。自治体の役割にも言及できているか。

(最終的な結論の確認):

 「持続可能な観光」とは、観光客と地域住民の双方にとって満足度の高い観光のあり方を追求することである。そのためには、観光収入が地域に適切に還元される仕組みを構築し、地域住民が観光の恩恵を実感できるような観光振興策を推進することが不可欠である。これにより、オーバーツーリズム問題を緩和し、観光地が長期的に発展できる基盤を築くことができる。

着眼点:

 小論文全体の議論を踏まえ、最終的な解決策の意義と、それが目指す観光客と地域住民の双方にとって満足度の高い観光のあり方を力強くまとめられているか。

【解答】(800字)

 日本を含む世界の観光地では、観光客の急増により住民の生活環境や自然環境が損なわれ、観光客の満足度も低下する観光公害(オーバーツーリズム)が深刻化している。SDGsやUNWTOの指針を踏まえ、日本でも観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設置するなど、観光の持続可能性が重要課題となっている。
 持続可能な観光とは、観光が環境・社会・文化・経済に与える影響を考慮し、現在と将来の観光客と住民双方のニーズを満たす観光のあり方である。しかし現状では、受け入れ体制が観光客の増加に追いつかず、経済効果を優先した誘致、観光客のマナー不足、観光収入が地域に還元されにくい構造が問題を深刻化させている。京都ではバスの混雑や騒音、マナー違反が住民生活を圧迫し、観光客自身も混雑で快適性を損なっている。
 この問題を解決するには、観光収入を地域に適切に還元し、住民が観光の恩恵を実感できる仕組みづくりが不可欠である。住民が観光を肯定的に捉えれば、観光客への協力が得られやすくなり、共存・共生が促進される。また地域経済の活性化は受け入れ体制の整備にもつながり、オーバーツーリズムの緩和に寄与する。
 具体策として、地域文化や自然、食などを生かした地域密着型観光商品の開発により、観光消費を地域に誘導すべきである。さらに、地域通貨を導入し、観光収益を地域内で循環させることも有効である。宿泊税や入域料を徴収し、その収益を環境保全やインフラ整備に活用する仕組みも必要である。また、観光計画の策定に住民が参加し、住民意見を反映する体制を整えることで、観光と生活の調和が図られる。
 これらの施策は、単に観光客数を制限するのではなく、経済・社会・環境の三側面を統合的に改善する持続可能な解決策である。観光収入を地域へ適切に還元し、住民が恩恵を実感できる仕組みを整備することで、オーバーツーリズムを緩和し、観光地の長期的発展を実現できる。

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