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上智大学 法学部 地球環境法学科 公募制推薦入試 2022年 過去問解説

【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、単に記事を要約するだけでなく、対立する二つの意見(観光客と行政)の根底にある「共通の価値観(自然との関わり)」と「対立軸(適切な距離感)」を明確に言語化することが重要です。これにより、問題の構造を深く理解していることを示せます。

(共通の前提)

 本稿で提示された新聞記事は、野生動物への餌付け行為が引き起こす問題と、それに対する法的規制の動きを報じている。餌付けをする観光客と、それを規制しようとする行政、双方の立場が存在するが、両者とも「自然との関わり」を意識している点では共通している。観光客は餌付けを通じて自然との一体感を求め、行政は生態系という自然のあり方を守ろうとしている。

(議論の論点)

 両者の論点は、「人間と野生動物の適切な距離感」をめぐって対立している。観光客は、餌付けを動物とのコミュニケーションや思い出作りの一環と捉える。一方、環境省や専門家は、餌付けが動物の生態や行動を変化させ、人身への危害や感染症のリスクを高める「危険な行為」と見なしている。マナーとしての呼びかけの限界から、罰金という強制力をもって問題解決を図るべきか否かが、本質的な対立点である。

■ 問題発見

 「個人(観光客)の自由」と「公共(社会全体)の利益」の対立という、法学的な基本問題に落とし込むことで、小論文全体の骨格を強固にしています。単なる感想ではなく、分析的な視点を持っていることをアピールするポイントです。

(問題の発見)

 本件で答えるべき問題は、「人間の娯楽や教育的意図から行われる野生動物への餌付けが、生態系と人間の安全に与える負の影響を、いかなる方法で抑制すべきか」という点にある。特に、個人の自由な行動と、公共の利益(安全確保や環境保全)との間に生じる対立を、法規制という手段で解決することの是非が問われている。

■ 論証→言い分方式

 「仲裁者C」の視点を導入することで、単なる二項対立に終わらせず、より高次の視点から解決策の妥当性を論証している点がポイントです。公共の利益を優先するという明確な価値判断基準を示しています。
 この問題には「観光客」「行政・専門家」という明確な利害関係者が存在し、それぞれの主張が対立しています。言い分方式は、これらの多角的な視点を整理し、客観的かつ説得力のある解決策を導き出すのに最も適したフレームワークであるため選択しました。

利害関係者A(観光客)の主張

 たしかに、野生動物への餌付けは、都会では得られない自然とのふれあいの機会であり、子供たちの教育にも繋がるという主張には一理ある。なぜなら、動物を身近に感じることで、自然環境への関心が高まる可能性があるからだ。

利害関係者B(行政・専門家)の主張

 しかし、餌付けは動物の食性を変え、人間への依存心を高める。その結果、自力で餌を探す能力が失われるだけでなく、人間を恐れなくなり、食物を求めて人里に出没し、農作物への被害や人身事故を引き起こす。なぜなら、餌付けによって「人間は食料をくれる存在」と学習してしまうからだ。

仲裁者C(政策立案者)の主張

 よって、一部の観光客の娯楽や教育的期待よりも、地域住民の安全確保と生態系全体の保全という公共の利益を優先すべきである。なぜなら、一度人慣れしてしまった動物が引き起こす問題の被害は広範囲に及び、その影響は非可逆的になることが多いからだ。マナーの呼びかけに効果がなかった以上、罰則付きの禁止はやむを得ない措置である。

■ 解決策

 解決策を明確に提示した上で、その根拠を「生態系」「安全」「感染症」など複数の具体的な切り口で整理して示すことが重要です。また、奈良のシカや北海道のヒグマといった具体的な事例を挙げることで、議論の説得力を飛躍的に高めています。

(Cから導かれる解決策)

 野生動物への餌付けを罰則付きで禁止することは、生態系と人間の安全を守るために必要かつ妥当な措置であると解決策付ける。

(その根拠)

 根拠は、餌付けがもたらす①生態系の攪乱、②人身事故のリスク増大、③個体数の不自然な増加、④感染症の媒介といった複合的な問題にある。これらの問題は、個人のマナー意識に期待するだけでは解決できず、より実効性のある法的措置が求められる段階にある。

(その具体例)

 例えば、奈良のシカが観光客の食べ物を与えられた結果、健康を害したり、攻撃的になったりする事例がある。また、北海道ではヒグマが人里に出没し、深刻な被害をもたらしているが、その一因には不適切な餌やりがあったとされる。これらの事例は、安易な餌付けが予測不能な事態を招くことを示している。

■ 解決策の吟味

 自らの解決策に対して、想定される代替案(教育、物理的隔離)を挙げて、それらの非実用性や限界を指摘することで、自分の解決策の優位性を補強しています。さらに、「誰が得をして誰が損をするか」という利害関係者の視点から多角的に評価を加えることで、議論の公平性と深さを示しています。最終的に、個人の小さな不利益よりも社会全体の大きな利益を優先するという、一貫した論理で締めくくっています。

(他の解決策との比較)

 他の解決策として「教育キャンペーンの強化」が考えられるが、記事にもあるように「マナーとしての呼びかけでは限度がある」ことは明らかだ。また、「物理的に柵などで隔離する」という案は、国立公園の開放的な自然景観を損なうため現実的ではない。罰則化は、個人の行動に直接的に働きかける最後の、そして最も効果的な手段と言える。

(利害関係者検討)

 この規制によって、餌付けを楽しみたい一部の観光客は行動の自由を制限され、不利益を被る。しかし、その結果として、地域住民、一般の観光客、そして野生動物自身が、より安全で健全な環境を享受できるという、より大きな利益が生まれる。

(最終的な解決策の確認)

 したがって、野生動物への餌付けを罰則付きで禁止する法改正は、一部の個人の利益を制限するものの、社会全体の持続可能な利益に貢献する正当な措置である。

【解答】(768字)

 野生動物への餌付け行為は、自然との共生を考える上で重要な論点を含んでいる。私は、この記事が報じる罰則付きの禁止措置に賛成の立場である。なぜなら、餌付けがもたらす負の影響は、個人の娯楽や教育的意図といった利益をはるかに上回ると考えるからだ。
 まず、餌付けは生態系そのものを破壊する危険性を内包している。すなわち、人間からの食料に依存するようになった動物は、本来の食性を失い、自力で生存する能力を低下させる。その結果、特定の種が異常繁殖したり、逆に淘汰されたりすることで、地域の生態系バランスが崩れる恐れがある。
 次に、餌付けは人間社会への安全保障上のリスクを増大させる。例えば、人間に慣れた動物は、食料を求めて人里にまで出没するようになる。この行動は、農作物への被害だけでなく、人間への直接的な攻撃という不測の事態を招きかねない。記事が指摘するように、マナーの呼びかけだけではこの危険を十分に抑制できないことは明らかであり、より実効性のある対策が求められるのは当然の帰結である。
 一方で、餌付けを禁止することに対しては、「自然とのふれあいの機会を奪う」といった反論も想定される。たしかに、動物との直接的な接触は、特に子供たちにとって貴重な体験となるかもしれない。しかし、その体験が動物の自然な生態を歪め、将来的な危険を生むのであれば、それは真の「自然教育」とは言えないだろう。むしろ、適切な距離を保ち、ありのままの生態を観察することこそが、自然への畏敬の念を育む上で重要なのではないか。
 以上の理由から、野生動物への餌付けを罰則付きで禁止することは、生態系の保全と人間の安全確保という二つの大きな目的を達成するために、必要不可欠な措置であると解決策付ける。この規制は、人間と自然が持続可能な形で共存していくための、責任ある一歩なのである。

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