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上智大学 文学部 新聞学科 カトリック推薦入試 2021年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、「自粛」を、感染拡大を抑制した「美徳」という側面と、同調圧力によって自由を侵害した「事実上の強制」という、二つの側面から捉えることが着眼点です。この光と影を対比させることで、自粛という現象の多面性を浮き彫りにします。

(共通の前提)

 「自粛」とは、本来は個人の自発的な意思によって行動を慎むことを指すが、特にコロナ禍の日本では、政府や自治体からの法的強制力のない「要請」に基づき、多くの市民や事業者が活動を抑制する社会現象を指す言葉として用いられた。

(議論の論点)

 自粛は、市民の良識や共同体意識の高さの表れであり、法的強制に頼らずに感染拡大を抑制した日本の美徳である、という肯定的な見方がある。しかしその一方で、法的根拠が曖昧なまま、同調圧力(自粛警察など)によって個人の自由や経済活動が過度に制限されたという批判もある。個人の自発的な協力という「善意」と、それがもたらす「事実上の強制」という、権力と個人の関係性を巡る問題が論点となる。

■ 問題発見

 「強制力のない『自粛』が、なぜ社会を動かすほどの力を持ったのか?」という、コロナ禍を経験した多くの日本人が抱いたであろう問いを立てます。そして、そこから「明らかになった日本社会の課題は何か?」と、より本質的な問題へと議論を深めていく構成にしています。

(問題の発見)

 コロナ禍において、法的強制力のない「自粛」が、なぜ多くの人々に受け入れられ、社会全体を動かすほどの力を持ったのか。そして、そのプロセスで明らかになった、日本の社会構造や日本人の国民性に根差した課題とは何か。

■ 論証1: なぜなぜ分析

 多くの人が自粛に従った理由を、「同調圧力」→「村社会的な文化」→「不安による集団心理」というように、表層的な心理から、歴史的・文化的な深層、さらには非常時の集団心理へと掘り下げることで、説得力のある原因分析を展開できると考えました。

(論証A) なぜ多くの日本人は自粛要請に従ったのか?

 「他人に迷惑をかけたくない」「自分だけが非難されたくない」という、他者との関係性を重視する意識が強く働き、周囲の行動に合わせようとする同調圧力が生まれたから。

(論証B) なぜ日本では同調圧力が強く働くのか?

 歴史的に、村落共同体など、集団の和や秩序を個人の意思よりも優先する文化が育まれてきたから。異質な行動をとる者は「村八分」にされるというような、集団からの逸脱を罰するメカニズムが社会の深層に根付いている。

(論証C) なぜそのメカニズムがコロナ禍で顕在化したのか?

 感染症という目に見えない脅威に対し、人々が強い不安を感じたから。不安な状況下では、人々はより強く集団との一体感を求め、異質な他者を攻撃することで自らの正当性を確認しようとする心理が働く。この心理が「自粛警察」のような過剰な行動を生み出す土壌となった。

■ 論証2: 言い分方式

 「自粛は誇るべき成果」と主張する「政府」と、「事実上の強制で人権侵害だ」と訴える「事業者」という、現実の社会でまさに対立した二者の論理をぶつけました。そこに「法学者」の視点から「法治主義」という解決の方向性を提示することで、議論を建設的なものにしています。

利害関係者A(政府・行政)の主張

 「たしかに、法的な強制力には限界がある。しかし、国民の皆様の良識と協力、すなわち自粛のおかげで、欧米のような厳しいロックダウン(都市封鎖)を回避しつつ、感染拡大を抑えることができた。これは世界に誇るべき成果だ」

根拠:

 「緊急時において、国民一人ひとりが社会全体の利益を考え、自発的に行動してくれたからこそ、個人の自由への制約を最小限に抑えることができたからだ。」

利害関係者B(飲食店経営者・イベント事業者)の主張

 「しかし、『自発的な協力』とは名ばかりで、実際には『自粛警察』による嫌がらせや、要請に従わない店への風評被害を恐れて、休業せざるを得なかった。法的根拠のない要請で、我々の営業の自由と財産権が著しく侵害された」

根拠:

 「休業に対する十分な補償もないまま、事実上の強制が行われた。これは、行政が本来負うべき責任を、国民の『善意』や『同調圧力』に転嫁したに過ぎないからだ。」

仲裁者C(法学者)の主張

 「よって、将来同様の危機が発生した場合に備え、政府の権限と責任、そして市民の権利制限の範囲を法律で明確に定めておくべきだ」

根拠:

 「『自粛』という曖昧な言葉に頼るのではなく、民主的なプロセスを経て作られた明確なルールに基づいて行動することこそが、権力の濫用を防ぎ、すべての国民の自由と人権を守る、近代的な法治国家のあり方だからである。」

■ 結論

 論証で明らかにした「『空気』に依存する社会の危うさ」という課題に対し、「『法』の支配に基づく社会への移行」を明確な解決策として提示することが着眼点です。ドイツの法律という具体的な事例を挙げることで、主張の具体性と実現可能性を高め、単なる精神論ではない、制度設計の提言として結論をまとめています。

(Cから導かれる結論)

 コロナ禍における「自粛」は、日本社会の持つ協調性の高さを示す一方で、同調圧力による人権侵害や、法治主義の形骸化といった深刻な課題を浮き彫りにした。この経験から我々が学ぶべきは、曖昧な「空気」に頼る社会から脱却し、明確なルールに基づいて個人の自由と公共の福祉を調整する、より成熟した民主主義社会を目指すことの重要性である。

(その根拠)

 なぜなら、「自粛」という名の同調圧力は、少数派や立場の弱い人々を容易に犠牲にする危険性を常に孕んでいるからだ。すべての人々の権利を公平に守るためには、時の空気や感情に左右されない、透明で公正な法の支配が不可欠となる。

(その具体例)

 具体的には、ドイツの感染症予防法のように、パンデミック時における政府の権限(営業停止命令など)と、それに対する十分な補償をセットで法律に明記することが考えられる。これにより、事業者は予測可能性を持って行動でき、行政は恣意的な権力行使を抑制される。これは、日本社会が「空気」の支配から「法」の支配へと移行する、重要な一歩となるだろう。

問1【解答】(978字)

 2020年、新型コロナウイルスのパンデミックという未曾有の危機に直面した日本社会を、一つの言葉が席巻した。それは「自粛」である。法的強制力を持たないこの言葉が、なぜ多くの人々を動かし、社会全体を覆うほどの力を持ったのか。本稿では、「自粛」という社会現象を多角的に分析し、そこに映し出された日本社会の光と影、そして未来への課題を論じる。
 まず、自粛が広く受け入れられた背景には、他者への迷惑を回避し、集団の和を重んじる日本人の国民性があることは間違いない。多くの人々が「社会のために」と、政府の要請に応じて外出を控え、事業者は営業を縮小した。この市民の良識と協調性の高さが、欧米のような厳しいロックダウンを回避しつつ、感染拡大を一定程度抑制した原動力となったことは、肯定的に評価されるべき側面である。
 しかし、この「自粛」の裏側で、深刻な問題が進行していたことを見過ごしてはならない。法的根拠が曖昧な「要請」は、やがて「自粛警察」と呼ばれる、市民同士の相互監視と攻撃を生み出した。県外ナンバーの車への嫌がらせや、営業を続ける飲食店への脅迫など、正義感を振りかざした同調圧力が、個人の自由や財産権を脅かしたのである。これは、政府が本来、法律に基づいて行うべき権利制限と、それに伴う責任(補償)を、「国民の良識」という曖昧な言葉に転嫁した結果とも言える。善意の皮を被った同調圧力は、かくも容易に牙を剥き、立場の弱い者を社会の片隅へと追いやるのだ。
 以上の考察から、私たちがコロナ禍の「自粛」から学ぶべき教訓は、曖昧な「空気」に依存した社会の危うさである。そして、目指すべきは、明確なルールに基づいて個人の自由と公共の福祉を調整する、成熟した法治国家への移行であると結論できる。例えば、ドイツの感染症予防法のように、緊急時における政府の権限と、それによって権利を制限される市民への補償を、あらかじめ法律で明確に定めておくべきだ。ルールが明確であれば、人々は恣意的な同調圧力に怯えることなく、予測可能性を持って行動できる。それは、行政の権力濫用を防ぐと同時に、国民一人ひとりの人権を守るための不可欠な防波堤となる。協調性という美徳は、時として思考停止と同義になる。「自粛」という経験を、日本社会が「空気の支配」から「法の支配」へと脱皮する契機としなければならない。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された7つの語句から、説明する4つを選択する。国際情勢や国内の社会運動、文化政策など、ジャーナリズムで頻出する重要語句を選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2【解答】

香港国家安全維持法 (60字)

香港における反政府的な活動を取り締まる為、中国政府が制定した法律。香港の高度な自治を侵害するとして国際的な批判を浴びた。

脱炭素化 (59字)

地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を、実質的にゼロにすること。世界各国が実現目標を掲げている。

Black Lives Matter (59字)

アフリカ系アメリカ人に対する暴力や構造的な人種差別への抗議運動。「黒人の命も大切だ」を意味し、SNSを通じて広がった。

調査報道 (53字)

権力の不正や社会の構造的な問題を、独自の取材で深く掘り下げて報じる民主主義に不可欠なジャーナリズムの手法。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3【解答】

  1. カイメツ→壊滅
  2. ノウコウセッショク→濃厚接触
  3. ナイジュ→内需
  4. トタン→途端
  5. ジンモンキロク→尋問記録
  6. スケテ→透けて
  7. セイサ→精査
  8. コウゲン→抗原
  9. チカクヘンドウ→地殻変動
  10. キッキン→喫緊
  11. 足蹴→あしげ
  12. 疫病→えきびょう
  13. 逼迫→ひっぱく
  14. 論功行賞→ろんこうこうしょう
  15. 俯瞰→ふかん
  16. 補填→ほてん
  17. 頗る→すこぶる
  18. 飛沫感染→ひまつかんせん
  19. 前代未聞→ぜんだいみもん
  20. 棄てて→すてて

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