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上智大学 文学部 新聞学科 カトリック推薦入試 2023年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、SDGs報道を、社会の意識を高める「啓蒙的役割」というポジティブな側面と、「SDGsウォッシュへの加担」や「問題の単純化」というネガティブな側面の両方から捉えることが着眼点です。この光と影を提示することで、テーマに対する多角的で批判的な視点を持っていることを示します。

(共通の前提)

 SDGs(持続可能な開発目標)は、貧困、不平等、気候変動など、世界が直面する課題を解決するために国連が定めた17の国際目標である。メディアは、このSDGsの理念を社会に広く伝え、人々の意識や行動の変容を促す上で、極めて重要な役割を担っている。

(議論の論点)

 メディアがSDGsを積極的に報道することは、地球規模の課題解決に向けた社会の機運を高める上で不可欠である。しかしその一方で、企業のPR活動を無批判に垂れ流し、見せかけの取り組みを助長する「SDGsウォッシュ」に加担しているという批判も存在する。また、カラフルな17の目標にばかり注目が集まり、それぞれの目標の背後にある複雑な政治的・経済的対立構造が十分に報じられていないという問題もある。メディアの「啓蒙的役割」と、「商業主義との癒着」や「問題の単純化」という負の側面との間の緊張関係が論点となる。

■ 問題発見

 「なぜ、良いことであるはずのSDGsの報道が、問題の本質を見えなくさせる危険を伴うのか?」という、一歩踏み込んだ問いを立てます。そして、「メディアはどう向き合うべきか」という、ジャーナリズムのあり方を問う、本質的な論題へと繋げています。

(問題の発見)

 人類共通の目標であるSDGsの達成に向けて、メディアは社会の羅針盤としての役割を期待されている。しかし、なぜその報道は、しばしば企業のイメージ戦略に利用されたり、問題の本質を見えなくさせたりする危険性を伴うのか。メディアは、SDGsというテーマと、いかにして批判的かつ建設的に向き合うべきか。

■ 論証1: 言い分方式

利害関係者A(企業の広報担当者)の主張

 「たしかに、我々の取り組みはまだ十分ではないかもしれない。しかし、メディアがSDGsに関する我々の活動を積極的に取り上げてくれることで、社内の意識が高まり、より大きな投資やイノベーションに繋がる。まずはポジティブな側面を報じてもらうことが、社会全体のムーブメントを加速させる」

根拠:

 「企業のSDGsへの取り組みは、今や投資家からも厳しく評価される。メディアによる報道は、我々のブランド価値を高め、持続的な成長を実現するための重要な要素だからだ。」

利害関係者B(NPO・市民活動家)の主張

「しかし、メディアが企業の発表を鵜呑みにし、環境に配慮しているかのようなイメージ広告(グリーンウォッシュ)を無批判に報じることで、実態の伴わない『SDGsウォッシュ』に加担している。消費者は騙され、本当に真摯な取り組みをしている企業が評価されない」

根拠:

 「メディアは、企業の広告収入に依存するあまり、スポンサーである企業に対して批判的な検証を行うことを怠っている。これはジャーナリズムの自殺行為に等しいからだ。」

仲裁者C(ジャーナリスト)の主張

「よって、我々メディアは、SDGsを単なる『良いこと』として情緒的に報じるのではなく、その達成を阻む構造的な問題を深く掘り下げる『調査報道』こそを強化すべきだ。企業の取り組みを報じる際にも、その実効性を具体的なデータに基づいて検証し、課題や矛盾点も併せて指摘する責任がある」

根拠:

 「メディアの役割は、社会の合意形成を促すことにある。そのためには、心地よい物語を提供するだけでなく、時には社会が目を背けたい不都合な真実を突きつけ、建設的な議論を喚起することが不可欠だからである。」

■ 論証2: なぜなぜ分析

 メディアがSDGsウォッシュに加担する理由を、「広告依存のビジネスモデル」→「ネット普及による収益構造の変化」→「ジャーナリズムを支える社会的意識の希薄化」というように、メディア内部の経営問題から、より大きな社会全体の構造問題へと掘り下げることで、問題の根深さを示しました。

(論証A) なぜメディアは「SDGsウォッシュ」に加担してしまうのか?

 多くのメディア、特にテレビや新聞が、広告収入に大きく依存するビジネスモデルから抜け出せていないから。大企業であるスポンサーの活動を批判的に報じることは、自らの経営基盤を揺るがしかねない。

(論証B) なぜ広告依存のビジネスモデルから抜け出せないのか?

 インターネットの普及により、有料の購読者や視聴者が減少し、広告収入への依存度がますます高まっているから。また、質の高い調査報道には多大なコストと時間がかかるため、短期的な収益を追求する商業主義の中では敬遠されがちである。

(論証C) なぜ質の高いジャーナリズムがビジネスとして成立しにくいのか?

 人々が、無料で手に入る断片的なネットニュースに慣れてしまい、複雑な社会問題を深く理解するために、時間やお金を払うという習慣を失いつつあるから。社会全体が、ジャーナリズムを「民主主義社会のインフラ」として支えるという意識を失っていることが、根本的な原因である。

■ 結論

 論証で明らかにした「SDGs報道の課題」に対し、「ジャーナリズム本来の批判精神に立ち返るべき」という明確な主張を打ち出します。そして、その具体的な実践として、「企業の取り組みの裏側を調査・報道する」という調査報道の重要性を強調し、単なるスローガンではない、具体的な行動指針として結論をまとめています。

(Cから導かれる結論)

 メディアが「SDGsウォッシュ」の片棒を担ぐという批判を乗り越え、SDGs達成に真に貢献するためには、個々の企業の取り組みを表層的に紹介するだけでなく、目標達成を阻む社会の構造的な課題(例えば、目標16「平和と公正」と防衛産業の利益相反など)にこそ、批判的に切り込むジャーナリズム本来の使命に立ち返る必要がある。

(その根拠)

 なぜなら、SDGsは単なる「良いことリスト」ではなく、その背後には国家間、あるいは企業と市民との間の深刻な利害対立が存在するからだ。メディアがその対立構造から目を背け、耳障りの良い成功事例ばかりを報じるならば、それは社会の思考停止を招き、問題解決をむしろ遠ざけることになる。

(その具体例)

 例えば、あるアパレル企業が「環境に優しい素材」を使った商品をPRしている場合、その裏で、途上国の労働者が低賃金で搾取されていないか(目標8)、製品の大量廃棄問題(目標12)はどうなっているのか、といった点を併せて調査・報道する。このように、17の目標が相互に関連し、時には矛盾することを多角的に示すことこそ、メディアが果たすべきSDGs報道のあり方である。

問1【解答】(968字)

 貧困、気候変動、不平等。人類が直面するこれらの地球規模の課題に対応するため、国連が掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」は、今や企業広告からテレビ番組まで広く浸透している。この潮流の中で、メディアはSDGsの理念を社会に広める重要な役割を担う。しかし、その報道は果たして問題の本質に迫っているだろうか。
 まず、現代のSDGs報道が抱える最大の問題は、多くのメディアが企業の「SDGsウォッシュ」に無自覚、あるいは意図的に加担している点である。SDGsは企業のCSRを宣伝する格好の題材であり、企業の広報部門は自社の取り組みを好意的に報じてくれるメディアを歓迎する。対して広告収入に依存するメディアは、大口スポンサーを批判的に検証することに躊躇する。この利害一致の構図のもと、実態を伴わない取り組みが美談として報じられ、受け手はそれを疑うことなく受容してしまう。
 さらに、SDGsが抱える複雑さや目標間の矛盾が十分に報じられていない点も深刻である。例えば、目標8「働きがいも経済成長も」と目標13「気候変動に具体的な対策を」はしばしば緊張関係にある。経済成長を優先すればエネルギー消費が増加し、気候変動対策は後退する可能性がある。SDGsは相反する価値の調整を求められる極めて政治的な課題であるにもかかわらず、多くの報道は17の目標を単なる「良いことの羅列」として扱い、その背後にある国家間や産業間の利害対立を可視化しない。その結果、SDGsは耳障りの良いスローガンと化し、社会変革の力を失う危険がある。
 以上の考察から、メディアがSDGsに真に貢献するには、企業のPRの代弁者となる姿勢から脱却し、ジャーナリズム本来の批判精神に立ち返らなければならない。重要なのは、SDGsという「きれいごと」の普及ではなく、その理想の実現を阻む「不都合な真実」を明らかにすることである。たとえば、環境配慮を掲げる企業なら、そのサプライチェーン全体で人権侵害や環境破壊が行われていないか調査・報道する必要がある。またSDGsの各目標が互いにどのように影響し合い、どのような矛盾を孕むのかを多角的に示すべきである。そのような批判的かつ建設的な報道こそが、社会の思考停止を防ぎ、SDGsを実効性ある取り組みへと導くためのメディアの重要な責務なのである。

問2 【解説】

ステップ1.

 提示された7つの語句から、説明する4つを選択する。国際情勢、社会問題、人権など、ジャーナリズムの視点から重要なキーワードを選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2【解答】

インド太平洋経済枠組み(IPEF) (57字)

バイデン政権が提唱する新たな経済連携の枠組み。貿易、サプライチェーン、クリーン経済、公正な経済の4分野で協力する。

旧優生保護法 (53字)

1948年から96年まで存在した、障害者らへの強制的な不妊手術を認めた法律。国への賠償訴訟が相次いでいる。

ステルスマーケティング (58字)

消費者に広告・宣伝なのを隠して商品やサービスを宣伝する行為。「ステマ」と略され、消費者を欺くものとして問題視される。

マンスプレイニング (60字)

男性が女性は知識が不足していると思い込み、見下した態度で物事を解説する事。ジェンダーに基づく無意識の偏見の表れとされる。

問3 【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ3.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3【解答】

  1. ホウカイ→崩壊
  2. ヒョウガキ→氷河期
  3. ハイロ→廃炉
  4. フンシタ→扮した
  5. キビ→機微
  6. ケイカイ→警戒
  7. キョウキュウモウ→供給網
  8. ジュンタク→潤沢
  9. カクテイ→画定
  10. シレトコ→知床
  11. 論旨→ろんし
  12. 漁獲高→ぎょかくだか
  13. 稀→まれ
  14. 静謐→せいひつ
  15. 謀反→むほん
  16. 合本→がっぽん
  17. 踏襲→とうしゅう
  18. 無為無策→むいむさく
  19. 拙速→せっそく
  20. 徘徊→はいかい

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