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上智大学 文学部 新聞学科 外国人入試 2020年 過去問解説

問1【解説】

■ 議論の整理

 ここでは、キャッシュレス社会を「利便性・効率性の向上」という光の側面と、「デジタルデバイド」「プライバシー侵害」「災害時のリスク」という影の側面から、多角的に捉えることが着眼点です。これにより、一面的な賛美や批判ではない、バランスの取れた問題意識を提示します。

(共通の前提)

 キャッシュレス社会とは、現金(紙幣・硬貨)を介さずに、クレジットカード、電子マネー、スマートフォン決済などの電子的手段によって決済が行われる社会を指す。利便性の向上や取引の透明化といった利点から、世界的にその移行が進んでいる。

(議論の論点)

 キャッシュレス化は、消費者にとっては支払いの迅速化、事業者にとっては現金管理コストの削減、政府にとっては脱税防止やデータに基づいた経済分析など、多くの利点がある。しかしその一方で、高齢者などデジタル機器の利用が困難な人々の排除(デジタルデバイド)、プライバシーの侵害、災害時のシステム停止リスク、手数料による小規模事業者の負担増など、深刻な懸念も存在する。利便性の追求と、それに伴うリスクや社会的格差の拡大との間のトレードオフが、主要な論点となる。

■ 問題発見

 「効率化の過程で、なぜ弱者が切り捨てられ、新たなリスクが生まれるのか」という問いを立て、さらに「どうすれば誰もが恩恵を受けられる社会を構築できるか」という、解決志向の問いへと展開させます。これにより、現状分析から未来への提言へと繋がる、建設的な議論の枠組みを設定します。

(問題の発見)

 効率性と利便性を最大化するキャッシュレス社会への移行は、必然的な流れである一方、その過程でデジタル弱者を社会から取り残し、個人のプライバシーを危険に晒すといった新たな格差やリスクを生み出している。この負の側面をいかに最小化し、誰もが恩恵を受けられる持続可能なキャッシュレス社会を構築できるか。

■ 論証1: 言い分方式

 キャッシュレス化を推進する「IT企業」と、それに懸念を示す「市民団体」という、利益と権利の対立構造を明確にするために選択しました。さらに「政府」を仲裁者として登場させることで、公共的な視点からの解決策を導き出しやすくしています。

利害関係者A(IT企業・金融機関)の主張

 「たしかに、導入には課題もある。しかし、キャッシュレス決済は、人々の支払いをより迅速かつ安全にし、事業者の生産性を向上させる。さらに、個人の購買データを活用することで、よりパーソナライズされた質の高いサービスを提供することが可能になる」

根拠:

 「現金管理に伴う社会全体のコストは膨大であり、それを削減することで、より創造的な分野に資源を再配分できる。また、データの活用は新たなイノベーションの源泉となるからだ。」

利害関係者B(高齢者・市民団体)の主張

「しかし、急速なキャッシュレス化は、スマートフォンを持たない、あるいは操作に不慣れな高齢者などを、日々の買い物という基本的な社会活動から排除してしまう。また、私たちの購買履歴がすべて企業に収集・分析されることは、プライバシーの観点から極めて危険だ」

根拠:

 「災害で停電が起きれば、すべての決済が停止するリスクもある。効率性ばかりを追求し、社会の多様性や安全性への配慮を欠いたままでは、新たなデジタル・ディバイド(情報格差)を深刻化させるだけだからだ。」

仲裁者C(政府・中央銀行)の主張

「よって、キャッシュレス化を推進しつつも、そのセーフティネットを社会全体で構築することが不可欠だ。具体的には、現金決済の選択肢を法律で保護し、デジタル弱者への丁寧なサポート体制を整備すると同時に、個人情報保護のルールを厳格化する必要がある」

根拠:

 「技術の恩恵を社会全体に行き渡らせ、誰も置き去りにしない『包摂的なデジタル社会』を築くことが、政府の重要な責務だからである。」

■ 論証2: なぜなぜ分析

 デジタル弱者が生まれる表面的な理由(現金が使えない)から、その背景(事業者のコスト削減、政府の施策)、そして根源的な原因(効率性至上主義という社会の価値観)へと掘り下げることで、問題の根深さを構造的に示すことができると考えました。

(論証A) なぜキャッシュレス化はデジタル弱者を生むのか?

 社会全体のシステムが、デジタル技術の利用を前提として設計され、現金という普遍的な支払い手段が利用しにくくなるから。

(論証B) なぜ現金が利用しにくくなるのか?

 事業者側が、現金管理のコストや手間を嫌い、キャッシュレス決済専用の店舗を増やすから。また、政府がキャッシュレス決済にポイント還元などのインセンティブを与えることで、現金利用者が相対的に不利益を被る状況が生まれるから。

(論証C) なぜそのような動きが加速するのか?

 「効率性」や「生産性向上」という経済的な合理性が、社会的な「包摂性」や「安全性」といった価値よりも優先される傾向が、現代社会において極めて強いから。短期的な経済的利益の追求が、長期的な社会の分断リスクを覆い隠してしまっている。

■ 結論

 論証で明らかにした「効率性」と「包摂性・安全性」のトレードオフという課題に対し、「現金決済の法的保護」と「公的サポート体制の構築」という二つの具体的な解決策を両輪として提示することが着眼点です。ドイツの事例などを念頭に置いた具体的な提案をすることで、単なる理想論ではない、実現可能性を意識した提言として結論をまとめています。

(Cから導かれる結論)

 キャッシュレス社会への移行は避けられない流れであるが、その推進においては「効率性」一辺倒ではなく、「包摂性」と「安全性」という価値を同等に重視する視点が不可欠である。具体的には、現金決済の選択肢を維持する法的整備と、デジタルデバイドを解消するための公的サポート体制の構築を両輪で進めるべきだ。

(その根拠)

 なぜなら、決済とは、すべての国民の社会参加の基盤となる基本的なインフラだからだ。一部の人間しか利用できないシステムは、社会に深刻な分断をもたらす。また、大規模災害やシステム障害のリスクを考えれば、決済手段の多様性を確保しておくことは、社会全体の強靭性(レジリエンス)を高める上でも極めて重要である。

(その具体例)

 例えば、ドイツのように、小売店が現金での支払いを拒否することを原則として禁じる法律を導入することが考えられる。また、自治体が主体となり、高齢者向けにスマートフォンの使い方教室を定期的に開催したり、キャッシュレス決済に関する相談窓口を設けたりすることも有効な策である。これにより、技術革新の恩恵を享受しつつ、誰も取り残さない社会を目指すことができる。

問1【解答】(997字)

 スマートフォン一つで買い物が完結し、現金に触れずに一日を過ごす。そんな「キャッシュレス社会」は、もはや未来ではなく現実となりつつある。支払いの迅速化や現金管理コストの削減など、その利便性は計り知れない。しかし、その光の裏側で深刻な影が広がっていることを、私たちは見逃してはならない。本稿では、キャッシュレス社会の内包する課題を多角的に分析し、誰もが恩恵を受けられる持続可能な未来への道筋を探る。
 まず、キャッシュレス化がもたらす最大の懸念は、「デジタルデバイド」の深刻化である。現代では効率性や生産性向上が至上の価値とされ、この流れがキャッシュレス化を強力に後押ししている。しかし、この仕組みはデジタル技術の利用を当然の前提として構築されている。スマートフォンを使いこなせない高齢者や、経済的困窮によって端末を持てない人々にとって、現金が使えない店舗の増加は、日々の買い物という基本的な社会参加からの排除を意味する。利便性の追求が、社会で最も弱い立場にある人々を切り捨て、新たな格差を生み出しているのである。
 次に、プライバシーと安全性の問題も看過できない。キャッシュレス決済は、私たちの購買履歴をすべてデータとして記録する。企業や金融機関は、こうしたデータを活用して新たなサービスを生み出すが、それは裏を返せば、個人の思想信条や生活様式が本人の知らぬ間に可視化される危険を孕む。また、その利便性は電力や通信網といった脆弱なインフラの上に成り立っている。大規模災害やシステム障害が発生した場合、決済手段が麻痺するリスクは高く、現金が持つ物理的な強靭性が再評価されるべきである。
 以上の考察から、私たちが目指すべきは、効率性のみを追求したキャッシュレス社会ではなく、「包摂性」と「安全性」を両立させた社会であると結論する。そのために必要なのは二点である。第一に、現金決済という選択肢を法的に保護することだ。決済は国民の生存に関わる基盤であり、誰もが利用できる普遍的な手段が確保されねばならない。第二に、デジタルデバイドを解消するための公的サポート体制の充実である。自治体が中心となり、高齢者向けのスマートフォン講習を拡充するなど、情報弱者が取り残されない仕組みづくりが求められる。技術革新の価値は、それを社会の隅々まで届けられるかどうかで決まる。そこにこそ、私たちの社会の成熟度が問われている。

問2【解説】

ステップ1.

 提示された8つの語句から、説明する4つを選択する。国内外の政治・経済・社会情勢を反映した重要語句を選ぶことが望ましい。

ステップ2.

 選択した各語句について、その核心的な意味を60字以内で簡潔に説明する文章を作成する。

ステップ3.

 文字数が制限内に収まっているかを確認し、表現を調整する。

問2【解答】

関西電力金品受領問題 (59字)

関西電力の役員らが、福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題。原子力事業を巡る癒着構造が明らかになった。

5G (60字)

超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続を特徴とし、IoTや自動運転など新たな産業の基盤として期待される移動通信システム。

アマゾン火災 (60字)

2019年に、ブラジルの熱帯雨林アマゾンで大規模な森林火災が多発した問題。地球の気候や生態系への深刻な影響が懸念された。

グローバル気候マーチ (60字)

気候変動対策を各国政府に求める、世界中の若者たちが中心となった抗議活動。グレタ・トゥーンベリさんの呼びかけから始まった。

問3【解説】

ステップ1.

 問題文の下線が引かれた20の語句を順番に確認する。

ステップ2.

 語句がカタカナの場合、文脈に合った適切な漢字表記を記述する。

ステップ3.

 語句が漢字の場合、その正しい読みをひらがなで記述する。

ステップ4.

 解答欄に、それぞれ対応する解答を記入する。

問3【解答】

  1. ブリョクショウトツ→武力衝突
  2. レンキンジュツ→錬金術
  3. ダイタイアン→代替案
  4. ハンソウ→搬送
  5. コクショ→酷暑
  6. タイコウバ→対抗馬
  7. チョウコウ→兆候
  8. ランゾウ→濫造
  9. アンゴウシサン→暗号資産
  10. ホウチ→法治
  11. 不手際→ふてぎわ
  12. 飛翔体→ひしょうたい
  13. 冠水→かんすい
  14. 損壊→そんかい
  15. 即位礼正殿の儀→そくいれいせいでん
  16. 覇権→はけん
  17. 模擬→もぎ
  18. 扇情主義→せんじょうしゅぎ
  19. 遺伝子→いでんし
  20. 本腰→ほんごし

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